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なでしこリーグ開幕まで1ヶ月。攻撃力を増した浦和は4年ぶりのリーグ優勝を目指す

松原渓スポーツジャーナリスト
今季の浦和は攻撃的なサッカーを見せてくれそうだ(対仙台戦、2017年6月17日)(写真:松尾/アフロスポーツ)

 今月の2月14日(水)から18日(日)までの5日間、千葉県内で「なでしこ交流戦」が行われた。

 参加したのは、なでしこリーグ1部の日テレ・ベレーザ(以下:ベレーザ)、浦和レッドダイヤモンズレディース(浦和)、マイナビベガルタ仙台レディース(仙台)、AC長野パルセイロ・レディース(長野)、ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(千葉)、ノジマステラ神奈川相模原(ノジマ)と、2部のちふれASエルフェン埼玉(埼玉)、オルカ鴨川FC(オルカ)、そして、韓国WKリーグ所属の国民体育振興公団(KSPO)の9チーム。

 3月21日(水・祝)のなでしこリーグ開幕を前に、交流戦に参加したなでしこリーグ1部所属6チームの現状をリポートする。

千葉交流戦結果(千葉公式HP)

【昨シーズンの上位進出の要因は】

 交流戦に参加した全チームの中で最も成績が良かったのが、浦和だ。

 浦和は、長野、仙台、千葉、ノジマ、KSPOと対戦し、全勝。内容面でも19得点1失点と、攻撃力を爆発させた。

 昨年に続いてチームの指揮を執るのは、就任2年目の石原孝尚監督だ。昨シーズンはタイトルこそ獲れなかったものの、リーグ戦3位、リーグカップ準優勝、皇后杯はベスト4と、すべての大会で上位に入った。昨シーズンの終わりに、石原監督は上位に進出できた要因を次のように話している。

「毎週、(試合に出られなくて)悔しい思いをしている選手たちがいて、競争の中でトレーニングしています。中でも、紅白戦の質が高くなったことが、公式戦で力を発揮できた要因だと思います」(2017年、リーグ第17節)

 浦和は、控え選手も含めたメンバーの多くがなでしこジャパン、もしくは年代別の日本代表に名を連ねてきた選手たちだ。

 豊富な戦力から「選べる」状況は、監督としては理想的だ。だが、試合に出られない選手たちにも成長の機会を提供しなければ、チーム全体の士気は落ちてしまう。試合でベンチ入りできない選手も多い中で、全員に同等のモチベーションを与え続けるのは容易ではない。

 そんなチームに一つの「回答」をもたらしたのが、昨シーズン途中、ドイツから7年半ぶりに復帰したベテラン、FW安藤梢だった。

 安藤は6月に浦和に加入すると、練習の中で選手同士が積極的に意見をぶつけ合う雰囲気を作り、紅白戦でも勝負にこだわる激しさや厳しさを求めた。

 実績と言葉を持つ安藤のそんな姿勢がチーム内に良い競争をもたらし、結果的に、浦和は試合に出られない選手たちも一丸となって、シーズンを戦い抜いた。プレーの面でも、球際の勝負に一切の妥協を許さない安藤の姿勢が伝播したように、個々が1対1に強いこだわりを見せるようになった。

【今シーズンの特徴は攻撃力】

 今シーズン、浦和が目指すのは「優勝」だ。そのためのストロングポイントとして、石原監督は攻撃面を掲げる。

「今年は”打ち合い”をしたいと思っています。うちには攻撃的な選手が多いし、(交流戦では)ゴールに向かう姿勢も出ていました。選手同士が関わってゴールを目指すことも大切ですが、個人技や仕掛けの部分で積極性を出して、1点でも多く取りたいです」(石原監督/交流戦4日目)

 浦和の基本フォーメーションは4−4−2。前線には安藤、FW菅澤優衣香、FW吉良知夏、FW白木星(あかり)、FW清家貴子と、得点力のあるパワフルなストライカーが並び、攻撃時にはボランチのMF猶本光や、両サイドバックのDF木崎あおい、DF栗島朱里も積極的にオーバーラップして得点に絡んでいた。

 交流戦で決めた19得点は、9人もの選手が決めている(最多得点は安藤と猶本で、ともに3点)。

 その攻撃力を多彩に活かすべく、17日のKSPO戦では、新たなオプションとして3バックにもトライした。

 結果、攻撃面では慣れないフォーメーションへの戸惑いからか、動きのぎこちなさやミスが目立ったが、結果は8-0と大勝。守備面ではGK池田咲紀子と、センターバックのDF高畑志帆とDF長船加奈の3人が相変わらずの安定感を見せ、チーム全体としても昨年、土台として築き上げた球際の強さがベースになっていた。

 加えて、各選手のコンディションの良さもチームの勢いを後押しする。交流戦に向け、浦和は3週間をかけて着実にフィジカルを上げてきた。なでしこリーグで豊かな指導実績を持つ正木裕史ヘッドコーチの下、選手がフィジカルトレーニングに前向きに取り組んでいると、石原監督は話した。

【得点力アップの鍵】

 華やかな攻撃陣の中で、今シーズン、得点力アップの鍵になりそうなのが菅澤だ。

 体格の良い選手が多い浦和でもひときわ恵まれた体格を持ち、強い体幹を活かしたポストプレーでチャンスを作る。クロスボールに対して、高い打点からゴールに叩きつけるようなヘディングシュートが真骨頂だ。

 昨年は、リーグ戦1試合の平均出場時間が約71分と限られた中で9ゴール(18試合)を決め、得点ランキングで2位になった。しかし、2014年と2015年に2シーズンで合計35得点を挙げたことを考えれば、まだ本領発揮とは言えない。

 浦和で2年目のシーズンを迎える今年、菅澤は「二桁得点」を目標に掲げる。

「(交流戦で)いろいろな選手が点を取れたのは良いことですし、両サイドバックも攻撃的な選手が多くて、チーム全体が前に、前にという感じがあります。ボランチから前へのパスの配給も増えてきたので、そのチャンスを活かしたいですね。個人的には、まだ獲ったことがないチームタイトルを獲ることが一番の目標です。去年は一桁失点で終わってしまったので、今年は二桁得点を狙いたいし、得点王も狙います」(菅澤/交流戦4日目)

 その菅澤へのクロスの配給役として、精度の高いキックでセットプレーのキッカーも担当していたボランチのMF筏井りさが昨シーズンで引退した。その穴をチーム全体でどう埋めるかは未知数だが、同ポジションには、仙台から、MF佐々木繭を獲得した。

早くも主力組で出場した佐々木繭(C)Kei Matsubara
早くも主力組で出場した佐々木繭(C)Kei Matsubara

 

 佐々木は、テクニックと状況判断に優れ、複数のポジションをこなせる。また、一緒にプレーする選手のタイプに合わせられる高い柔軟性も特長だ。交流戦では主力組に加わり、ダブルボランチを組んだ猶本と良好なコンビネーションを見せた。

「仙台では5年間プレーしました。温かい人たちが多く、本当にいいチームだったのですが、選手としても人としても一回りステップアップしたいと思い、環境を変える決断をしました。浦和は技術的に高い選手が多く、細かいワンタッチのプレーができたりと、純粋に楽しいです。ボランチを組む光(猶本)は攻撃面で良いものを持っているので、自由にやってもらって、自分が後ろで支えたいと思います。ボランチを組んだのは先週(千葉での交流戦が始まる1週間前)の練習試合が初めてですが、スッと入れて、初めてという感じがしませんでした」(佐々木)

 そして、浦和の攻撃を牽引するのが猶本だ。浦和のタイトル獲得は、彼女の成長にも掛かっている。

 2014年以来のタイトル獲得に向け、着々とチームの完成度を高めている浦和は、3月21日(水・祝)にホームの浦和駒場スタジアムでノジマステラ神奈川相模原と開幕戦を戦う。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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