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若いマンションハンターは、年収の10倍近く借りて狭い1LDKを購入し、5年程度で売る

櫻井幸雄住宅評論家
マイホームの買い方は、時代とともに大きく変わる。写真はイメージとして筆者撮影

 バブル期を超えて高騰する首都圏のマンション価格。しかし、住宅ローンの金利が史上最低水準のため、高額化したマンションを購入したときの毎月ローン返済額はバブル期の半額程度となることは、1月27日の記事首都圏新築マンションが6260万円……それでも売れる理由と購入者実態が明らかにで書かせていただいた。

 昭和後期から平成初期にかけてのバブル期と今では、マンションの購入環境が大きく変わっており、同じ尺度では計れなかったのである。

 同様に、現在の不動産市況には、以前と同じ尺度では計れない状況が生まれているのではないか……平成世代といえる20代、30代で、都心マンションを購入した人たちから話を聞くと、昭和世代とは大きく異なる住宅購入の考え方がいくつも出てきた。

 マイホームの買い方、間取りの好み、ローンの組み方にジェネレーションギャップがあったわけだ。

 そのなかには、昭和世代から「非常識」と言われかねないものも。特に興味深い3つのジェネレーションギャップを紹介したい。

最初のマンションは、5年程度で売る

 20代、30代のマンション購入者、それも東京23区内の高額マンション購入者に話を聞き、一番驚いたのが、次の言葉。

 「マンションは3回買うつもり」というのだ。

 「家は3回建てる」という言葉なら、以前からある。「(一戸建ては)3回建てないと、満足のゆくものができない」と言う意味だ。

 その現代版で「マンションは3回買わなければ、いいものに巡り会わない」ということかと思ったが、そうではなかった。

 ライフステージに合わせて、3回マンションを買うつもり、というのだ。

 まず、夫婦2人暮らしのときに最初のマンションを買う。それは、夫婦共働きをするのに便利な都心部の物件を選ぶ。

 次に、生まれた子供の小学校入学に合わせて、教育環境、子育て環境のよい場所のマンションに買い替える。これが2つめのマンションだ。

 最後は、子供が巣立った後、シニアになっても暮らしやすい場所の分譲マンションやシニアマンションを買う。

 以上が、3回マンションを買う設計図である。

 3回のうち最も居住期間が短くなるのが、最初のマンション。だいたい5年程度、長くても8年程度しか住まない。

 短期間の住まいで、値上がり期待が大きい。だから、間違いなく値上がりしそうな都心部のマンションを狙うわけだ。

 便利な場所のマンションなので、夫婦共働きの生活事情にも合っている。それをペアローンで購入する。

 ペアローンでマンションを買う場合、一番のリスクとなるのが「離婚」。しかし、5年程度で売却するつもりなので、さほど離婚を怖がる必要はない。

 また、都心マンションといっても、コンパクトな間取りであれば、価格は抑えられる。

 この「コンパクトな間取り」を積極的に選ぶのも、以前と異なる考え方だ。

3LDKよりも1LDKのほうが魅力的

 昭和時代まで、分譲マンションは圧倒的に3LDKが多く、1LDKはほとんどなかった。2人暮らしでも、1人暮らしでも3LDKを買ったのは、「3LDKでないと、将来売りにくい」と思われていたからだ。

 その3LDKは、昭和時代には75平米以上あった。

 今、専有面積75平米以上の新築マンション3LDKを東京の都心部で買おうとすれば、かるく1億円を超えてしまう。

 それに対し、40平米程度の1LDKならば、都心でも5000万円台でみつかる。1LDKといっても、夫婦2人暮らしや小さい子供との3人暮らしであれば十分に生活できる。必要にして十分な住まいであり予算内である、と1LDKの評価が高まっている。

 この動きに対して、「1LDKなんか買って、子供が大きくなったら、どうするんだ」と昭和世代は考えがち。ところが、都心でマンションを買う20代、30代は「子供が大きくなったら、買い替える」前提なので、1LDKで問題なし、と割り切る。

 それより心配すべきなのは、「5年後か6年後に、1LDKが高く売れるかどうか」。じつは、その点も心配はない。

 近年、都心部では1LDKがよく売れるため、23区内で販売される新築マンションでは、コンパクト住戸の比率が増加。不動産会社・長谷工アーベストの調査によると、2020年において、23区内で新規分譲されたマンション住戸のうち、41%が50平米以下のコンパクト住戸になっていた。

 都心部では1LDKを求める人が増えているため、中古でも売りやすい。それも、昭和時代と大きく異なる点だ。

 もっとも、1LDKの場合、40平米を切る面積でもつくることができ、そのような物件を購入すると、住宅ローン減税を利用できなくなる……のだが、5年程度で売却しようとする20代、30代は住宅ローン減税にも執着していない。使えなければ、使えなくてもよい、と思っている。

 この「住宅ローン減税に執着しない」という姿勢も、昭和世代にはなかなか理解しにくいところだろう。

「年収の5倍まで」なんて昔の話でしょ

 現在の20代、30代の話を聞いて、もうひとつ昭和時代との違いを実感するのは、返済比率に対する考え方だ。

 よく、購入できるマイホームの金額は「年収の5倍まで」と言われるが、この目安に縛られていない。「それは、昔の話でしょ」という。

 じつはこれ、合理的な考え方でもある。

 というのも、「購入するマイホームの金額は年収の5倍まで」といのは、住宅ローンの金利が5%以上だった昭和時代、当時の毎月返済金から計算されたものであるからだ。

 住宅ローンの金利が5%以上だった時代、3000万円を借りたときの毎月返済金は15万円ほどになった(ボーナス併用なしで35年返済の概算)。この毎月返済金から計算して、「ローン破綻を避けるためには、年収の5倍までの物件を買いなさい」となったのである。

 これに対し、超低金利の今は、3000万円を借りても毎月の返済金は8万円前後。毎月の返済金が半減しているのだから、「年収の5倍まで」も計算し直す必要がある。

 そもそも5年程度で売却する予定なので、変動金利を利用しても金利上昇を怖がる必要がない。低金利のなかでも、特に低い金利を選ぶのだから、計算のし直しは必須である。

 金利が5%だった時代の「年収の5倍まで」を超低金利の現在に当てはめると、「年収の10倍まで」となる。

 昭和世代からしたら、「年収の10倍まで」など、とんでもない話だろう。しかし、毎月返済金から計算すれば、そんなに無茶な話ではなく、住宅ローンを貸し出す金融機関も今は「年収の5倍まで」にこだわってはいない。

 年収の10倍近くのお金を借りて、狭い1LDKを購入し、5年程度で売却するつもりでいる……そんな20代、30代が今、都心部で確実に増えているのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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