「アジャイル会議」とは何だ? システム開発手法をお手本にムダな会議を一掃する!
不毛な会議はどうすればなくなるか
「働き方改革だ」「ワークライフバランスだ」「長時間労働を是正しなければならない」「テレワークを導入しろ」「育休をとれ」……。会社はいろいろと現場に対して心がけや方針を示します。しかし肝心な経営陣、管理者たちが「会議漬け」なら、現場のモチベーションは上がらないでしょう。
人件費の高い人たちが、会議ばかりで生産性の悪い仕事をしていたら、現場はシラケます。
発表! 「無駄会議」ランキングベスト3!で書いたとおり、やっても意味がないどころか、マイナスになるような会議は、
1位:報告だけの会議
2位:目的のよくわからない会議
3位:ネクストアクションを決めないまま終わる会議
これら3つです。
10年以上、会議の研修・セミナーをやりつづけ、大企業から中小企業まで1万人以上のマネジャーの方々と接してきて、わかったことです。私が「脱会議」という書籍を出版した2012年から、この順位も中身も変わっていません。
会議において、いろいろな問題はありますが、結局のところ集約すると、最大の問題は、
動かない
――これに尽きます。
会議をどれだけやっても組織が動かないのです。決まったことに対して行動を変えない人が多いし、もしくは行動したくないから、決まるはずのものも決めようとしない……という事態に陥るのです。
「アジャイル開発」の思考を真似る
ソフトウェア開発の世界では「アジャイル」という言葉があります。アジャイル(agile)は、もともと「素早い」「機敏な」という意味で、入念に要件定義をし、設計開発するのではなく、素早く、短期間でソフトウェア開発をするための総称です。
顧客をも開発チームに入れて、一要件をすり合わせながらトライ&エラーを繰り返し、開発していくスタイルが「アジャイル」と言えるでしょう。先述した「無駄会議」を減らすには、この「アジャイル」という発想を取り込んでいくのは有効です。
つまり会議で決まったことを、解散する前に、実行できることはその場で素早く実行してしまうのです。実行するだけでなく、できることなら会議が終わる前に「PDCAサイクル」を一回ぐるりとまわしてしまうのです。
通常なら、
「新規の顧客が開拓できていない。もっと営業に頑張ってもらわないと」
「かしこまりました。営業部にハッパをかけておきます」
「頼んだよ。新しい商品を開発したばかりなんだから、今期の目標は絶対達成してくれないと」
「新規開拓先をリストアップさせ、しっかりと営業させます」
「頼んだぞ」
このようなやり取りが、会議の中でされたとしましょう。しかし会議が終わったら、どこ吹く風。
営業部にハッパをかけることもなければ、新規開拓するための方策、リストアップさえしないまま、2週間後の会議を迎えることもしばしばあります。
「業績が上がらない。そういえば新規開拓はどうなってるんだ」
「はい。もっと意識をもって、やってもらうよう言います」
「この前もそう言ってただろう」
「既存のお客様への対応も忙しいものですから……」
「リストアップは、どうなった」
「新規顧客のリストアップですか。なるべくはやめに取り掛かりたいです」
「そんなのすぐできるじゃないか」
「そうは言われても、いろいろと立て込んでおりまして……」
毎回、会議で言っていることは同じ。上司と部下とでコミュニケーションはするものの、どんなに会議を繰り返しても何も前に進まない、誰も動きを変えない、という状態がつづくのです。
「アジャイル会議」で、素早く前へ進める
3000人規模の企業の社長が「私が進めてくれと言っているプロジェクトが、2年たっても、いっこうに進まない」とおっしゃっていたので、私たち外部のコンサルタントが力を貸した事例があります。
社内のしかるべきメンバーたちとチームを結成し、「アジャイル」的な発想で物事を進めたのです。すると、たった2ヵ月でそのプロジェクトを全社レベルに広めることができました。大きな組織に「アジャイル会議」は有効です。
先述の例でいえば、このようになります。
「新規の顧客が開拓できていない。もっと営業に頑張ってもらわないと」
「かしこまりました。営業部にハッパをかけておきます。今すぐ、全員に電話で話します」
「6名、全員にここで電話をするんだな」
「はい。ひとり5分もあれば終わります。30分ください」
「わかった。新規顧客のリストは誰が作る?」
「アシスタントに頼んだのですが、進んでいません。今すぐ呼びましょうか」
「呼んでくれ。君が電話しているあいだに、私が新規開拓する先の条件と、データベースのありかを伝える」
「会議室でリストぐらい作ってもらいましょう」
「そうだな。リストを作りながら、そのリストにあるお客様に電話掛けして、そのまま検証していこう」
「なら、はやいですね。部下の2人をここに呼びますよ。あと15分で出先から戻ってきますから」
「じゃあ、今から作業分担だ。私もここですぐに電話をかけて、新製品についての意見を聞いてみる」
このような「アジャイル会議」に慣れれば、事前準備の精度も上がってくることでしょう。
ノートパソコンやスマホ、付箋、ホワイトボード、名刺ファイルや、業績資料、模造紙、マーカー、蛍光ペン――など、議論しながら素早く実行するための道具、デジタルツールをもって会議室に入るようになります。
このようなスタイルの会議にすれば、実行する気のない人は「アジャイル会議」に参加したいとは思わなくなるでしょう。
「君も聞いたほうがいいから、3時からの会議に出てくれ」
といった、必要もないのに「ついでだから君も出たら?」的な感じで会議にやってくる「ついで参加者」もいなくなります。本当に必要な参加者だけが会議に呼ばれ、「会議が仕事だと思っている勘違いマネジャー」の仕事はドンドンなくなっていくことでしょう。組織が美しく、浄化されていきます。
その場で素早く実行に移す「アジャイル会議」で、結果を出せる組織に変えていきましょう。