Yahoo!ニュース

「結婚できた恋愛弱者の女性」分析からわかる、自分磨きより大事なこと

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

恋愛弱者比較・女性版

前回の記事(恋愛弱者でも恋愛や結婚「できる者」と「できない者」とを分けるその差はどこで生まれるか?)の続き、女性版である。

女性版も男性同様、初婚の大部分を占める20-30代で7割の恋愛弱者に絞り、その未婚と既婚との差を明らかにした。男性と同じようなものになるのかと思いきや、女性は女性ならではの違いとなった。

結果が以下である。

男性の場合、同じ恋愛弱者でも既婚は未婚より「知性」「運動能力」「コミュ力」が高めだったのだが、女性の場合はそれらが全部反対である。むしろ未婚女性の方がわずかながら高い。

(前回の記事の男性版と見比べてみてほしい)

ユーモア力はあまり役に立たない

何より、未婚女性の「ユーモア力」がずば抜けて高いことがわかる。これは、別に既婚女性に「ユーモア力」がないわけではなく、恋愛弱者の未既婚で比較した場合に、既婚より未婚女性の方が圧倒的に「ユーモア力」が高いということだ。また「空気を読む力」も既婚女性より高い。

「ユーモア力」とは具体的にどういうことかというと、人を笑わしたりすることが好きで、その能力が高いことを示す。話術のおもしろさもそうだが、変顔ができたり、物真似ができたりするエンタメ力も含まれる。

学校時代に、友達や先生の真似がうまい同級生などいたりしたのではないだろうか。場の空気をなごませるために、率先して自らが道化を演じたりする子もいたと思う。

そういう女性のうち恋愛弱者の場合は、結婚に至らない場合が多いということになる。というより、恋愛弱者の女性の結婚に「相手を笑かせる力」はあまり必要ではないのだろう(ただし、大阪は除く)。

経済力の充実度が大きい

既婚者が上回る部分だけを見ると、「協調性」「計画性」「人の話を聞く力」など、男性と共通する部分もあるが、「仕事の充実度」が大きかった男性に比べて女性ではそれほど重要ではない。むしろ、男性より「経済力充実度」が高い方が既婚率に影響している。

正直、これは意外で、むしろ結婚しない女性ほど経済的に自立しているタイプが多いのかと思っていたが、それは生涯未婚率対象年齢(45-54歳)の話で、今回の20-30代女性とは違う。

よくよく考えれば当然で、経済的に困窮していたらそもそも恋愛どころではないはずなのだ。男女ともに既婚の方が「経済力充実度」が高いということは決して無視できない点だろう。

写真:イメージマート

また、この20-30代で「経済力充実度」が高いほど既婚率が高いというのは、結婚にいたる縁が基本的に経済力同類婚だからという点もある。

現在、独身時代に出会う男女の縁は、本人たちが意識していなくても経済的に大体同じくらいの年収の人間同士が知り合うことになっている。年収100万円の人間が年収1000万円以上の人間となかなか知り合うことはないのである。

経済的に充実しているというのは、おおよそ大企業などに勤務し、そこそこの給料をもらっている場合が多い。大企業に勤めていればその縁での社内縁もあるだろうし、同レベルの企業社員との合コンの話もあるだろう。会社の同期の大学時代の友人つながりというのも期待できる。

しかし、そうしたつながりは大抵経済力同類同士なのである。

つまり、恋愛弱者の女性たちを結婚へと押し進めている原動力は、そうした環境の力が大きく、いかに同類のつながりを持てるかなのである。だから、自分と同類の経済力、同レベルの学歴、同じくらいの年齢で知り合い、結婚するパターンが多い。近年、同い年の年齢同類婚比率が高まっているのもそういうことだろう。

自分磨きより環境を整える

「人を信用する」項目も既婚が高いが、これは何も未婚女性が疑り深いということではなく、逆に、既婚女性が世間知らずということでもない。同類だけの縁でつながっているからこそ「人を疑う」必要がないだけなのだろう。

恋愛に自信のない恋愛弱者の女性で結婚したいという希望を持っているのなら、自分磨きとかそういうのも結構だが、そうした「自分の能力を高めることでなんとかする」というメンタリティはそれこそ恋愛強者の発想であって、弱者が真似をするといらぬ怪我をする。

写真:イメージマート

弱者にとって重要なのは、自分の力を高めることではなく、いかに自分をもちあげてもらえるような環境の中に身を置くかどうかなのである。しかも、それは身の丈にあった自分と同類のつながりが得られるコミュニティがいい。そのためには、大学や企業選びは、むしろ男性より重視すべきポイントなのかもしれない。

弱者に必要な視点の多重化

また、男性同様、女性も「オタク趣味がある」と未婚率高いが、これも別に結婚だけがしあわせのカタチではないので、それでいいだろう。

ちなみに、「オタク趣味あり」かつ「孤独耐性あり」男女というのは、それぞれ自分の領域を守りたい反面、他人の領域に口出ししたりしないタイプで、一人でも快適に生きられるが、なんなら、そういう一人で生きられる者同士が結婚してもそれはそれでうまくいく場合も多い。私の定義でいえば「ガチソロ」同士は結婚してもうまくいくのだ。

同類と出会うという視点も、「結婚相手を探す」というのではなく、結婚するかどうかは関係なく、気の合う「自分と同じような人間を探す」という視点でとらえるのも大事だ。結果、それで、独身のままで付き合い続けるのでもいいし、結婚したくなればすればいいだけのことだ。

恋愛強者と弱者という見方でみると、どうしても勝ち負けのような結果しか思い浮かばないが、一体何と戦っているのか?誰と勝負しているのか?恋愛は勝ち負けではない。

得体のしれない戦う敵ばかりを見ていて、本来向き合うべき相手をスルーしてはいなかっただろうか。

スマホのスクリーンにいる手の届かない相手ばかり見ていて、隣にいる人を見ていなかったのではないだろうか。

結婚した自分の花嫁姿ばかりを夢想して、その自分の傍にいる人の顔は誰かわからないのではないだろうか?

恋愛も結婚も相手を見ることから始まるのである。

関連記事

日本の男はモジモジして満足に告白もできないというが、フランスやイギリスの男もたいして違わない

「加点方式」か「減点方式」か?男女で違う「人を好きになったり、嫌いになったりする方式」の差

結婚は女のビジネス。男にまかせていたらいつまでも結婚できない理由

-

※記事内グラフの商用無断転載は固くお断りします。

※記事の引用は歓迎しますが、著者名と出典記載(当記事URLなど)をお願いします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

荒川和久の最近の記事