オートバイのあれこれ『コーナリング専門マシン。』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『コーナリング専門マシン。』をテーマにお送りします。
「直線は退屈だ。」
これは、スズキがかつて販売していた『Goose350』の商品キャッチコピーです。
80年代を沸かせたレーサーレプリカブームが冷め、カワサキ『ゼファー』に端を発するネイキッドブームが盛り上がりつつあった1991年(平成3年)、スズキは、コンパクトなトラスフレームにオフロードモデル由来の空油冷単気筒エンジンを搭載したグース350をリリース。
その狙いは、軽量なボディでキレのあるコーナリングを楽しむというものでした。
いわば、スズキ流の“ライトウェイトスポーツを極めたカタチ”ですね。
その開発思想がよく表れているのが車体ディメンションで、グースのホイールベースはなんと1,350mm。
これは、レプリカの『NSR250R』や『TZR250R』と同等で、ネイキッドスタイルのオートバイとしては異例の短さでした。
(ちなみに、同時期のスズキの4発ネイキッド『バンディット400V』は1,430mm、ライバル的な存在として比較されることも多々あるヤマハ『SRX400』は1,425mmでした)
車重も乾燥状態で145kgと、400ccクラスの4ストロークモデルとしては最軽量レベルで、グースはマックス33psという控えめなエンジンパワーを、その軽さとコンパクトさで見事にカバーしていたのでした。
エンジンスペックが物を言う直線では刺激が少ないものの、タイトコーナーや左右に切り返すS字コーナーでは抜群の俊敏さを発揮し、グースはそのキャッチコピーどおり“直線は退屈”だけれど、その代わりにコーナーでは“バイクを操る喜び”をビシバシ提供してくれるオートバイだったのです。
デビュー時は4気筒のネイキッドモデルが流行っていたこともあり、グースの人気は決して高くありませんでしたが、それでも一部のコアなスポーツバイクファンに支持され、2000年頃まで生産が続けられました。
今発売すれば、当時以上に厚い支持を得られそうな1台に思います。