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「石破政権に北海道の鉄道維持の対策期待」「JR北は利用者目線に欠けている」 道財界トップ地元紙で語る

鉄道乗蔵鉄道ライター
衆議院本会議で所信表明する石破首相(写真:首相官邸)

石破政権に北海道の鉄道維持の対策期待

 2024年10月18日の北海道新聞朝刊に、北海道商工会議所連合会の岩田圭剛会頭の北海道経済の先行きについてのインタビュー記事が掲載された。インタビュー内容の大半は千歳市で建設が進む次世代半導体工場ラピダスに関係するものであったが、北海道新聞の記者から石破茂氏の首相就任による北海道向けの政策に対する期待を尋ねられたところ、岩田氏は「北海道はインフラ整備が遅れているため、もっと国の関与が必要」と述べ、「JR北海道の問題」にも言及した。

 岩田氏は、北海道の鉄道維持へ必要な対策として、「1987年の国鉄の分割民営化スキームは完全に崩れている。経営安定化基金の運用益で(赤字を)埋める想定は機能していない。見直してもらいたい」述べた。さらに、JR北海道の取り組みについては、「われわれも運動しなければならないが、JR北海道も『1人でも多く利用してもらうためにどうすればいいのか』という視点が置き去りになっている気がする。特急に乗っても、車内販売もなければ、自販機もない。利用者目線をもう少し持ってほしい」と述べた。

「攻めすぎた廃線」で交通危機の北海道

 2024年8月31日の豪雨でJR石勝線が4日間にわたって寸断された際には、札幌と帯広・釧路方面を結ぶ特急列車のバス代行輸送は行われず、同区間を走行する貨物列車のトラック代行輸送もほとんど行われなかったことが明らかとなった。昨今、問題が深刻化しているドライバー不足の問題も背景にあり、石勝線の迂回ルートとなり得た根室本線の富良野―新得間すらこの3月31日限りで廃止してしまった。北海道では、こうした「攻めすぎた廃線」により1カ所の鉄路の寸断が、都市間交通や物流の寸断につながりかねない事態に陥っている。

 さらに、北海道新幹線の問題でも、行政や経済界は北海道新幹線の建設そのものにしか興味がなく、新幹線開業後にその経済効果をどのように地域に波及させるのかという視点が欠落している。並行在来線の議論についても、廃止・バス転換ありきでの議論が先行し、新幹線開業に向けて2次交通として在来線をどのように活用し、経済効果を地域に波及させるのかという議論が全く行われていないことは大きな問題であると筆者は認識している。

 北海道商工会議所連合会で、北海道の鉄道維持に向けて「運動が必要である」という認識を持っているのであれば、まずはJR北海道問題の本質的な解決のために、国の低金利政策のもとでJR北海道が得られなくなった分の経営安定基金の運用益を、石破政権が国の運輸政策として手当するように運動をすることが重要ではないだろうか。その上で、災害時の危機管理も含めて迂回ルートとして必要な鉄道路線については、廃線の復活や再整備が求められる。北海道新幹線の札幌延伸についても、2次交通としての在来線を活用することで地域に経済効果を波及できるような準備を今から行っていく必要がある。

※【北海道】乗り物大好きチャンネルさんでもこの話題を取り上げています。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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