国の「積極的関与」実現できる政治家の誕生を期待! 北海道新幹線「並行在来線問題」抱える地域の衆議院選
2024年10月15日、衆議院選挙が公示され12日間の選挙戦が始まった。石破茂首相の就任からわずか8日で衆議院を解散し、国民に信を問う。北海道新幹線の並行在来線問題を抱える後志地方に札幌市の西区・手稲区と石狩市を加えた北海道4区では、自民と立憲の現職2人と共産と無所属の新人2人が立候補している。
国の積極的関与を実現できる政治家誕生を期待
こうした状況に対して「余市駅を存続する会」の笹浪淳史会長から、選挙戦への思いについて「今の北海道の慣例のままだと広域交通の利便性を悪化させ、サービスの低下によって、さらなる利用者の減少を招いている。今回の並行在来線の問題も含め、これからは国が積極的に広域的地域交通の維持や調整に関わる必要があると思います。そういった問題に取り組むことのできる政治家の誕生に期待したいと思う」とコメントを寄せていただいた。
北海道庁が主導する密室の協議会において廃止の方針が決められた函館本線の長万部―小樽間のうち余市―小樽間は、「余市駅を存続する会」によると「胆振東部地震のあった2018年11月という閑散期の調査でも2144人の輸送密度があった」という。この数値は、次世代路面電車(LRT)化により乗客を大きく改善させた富山県のJR西日本・富山港線の1975人よりも大きく、現状で1時間に1本程度しか運行のない余市―小樽間の増便と駅の増設を行えば、富山港線のように利便性の向上と利用者増加の両方を達成できるという有識者からの指摘も多い。
なお、道庁が主導した協議会は、バスドライバー不足の中、沿線のバス会社が路線の廃止や減便を進めているのもかかわらず、協議の場にバス会社を呼ぶことなく廃止を決めてしまった。この結果、バス会社から鉄道代替バスの引き受けについて難色を示され、2024年8月に1年3ヵ月ぶりに開かれた協議会では初めてバス会社が協議の場に呼ばれ、道の提案するバスダイヤ案の引き受けは困難であるとの考えを表明している。
長万部―小樽間の廃止は災害時の物流にも影響
また、函館本線の長万部―小樽間については、貨物列車の幹線ルートとして多数の列車が運行されている室蘭本線が災害で不通となった際に、代替ルートとしての活用を訴える声も根強い。2000年の有珠山噴火時には、同路線が貨物列車や特急列車の代替ルートとして活用されたほか、現在のJR貨物の主力ディーゼル機関車であるDF200形の入線についても、JR北海道は当時の2000年4月13日に高速軌道試験車マヤ34形を長万部―小樽間で運行し調査を行った結果「曲線部分に犬釘を打ち増して補強すれば通行可能である」と判明しており、この内容はJR北海道が2001年に出版した『有珠山噴火 鉄道輸送の挑戦』という書籍に記録が残されている。
2024年8月31日に豪雨災害でJR石勝線が4日間にわたって寸断された際には、特急列車のバス代行輸送はなく、貨物列車のトラック代替輸送もほとんどできなかったことが明らかになった。この3月31日限りで廃止された根室本線の富良野―新得間が石勝線の迂回ルートとなりえたことから、「この区間を廃止せずに特急列車や貨物列車が走行できるように整備しておくべきではなかったのか」という声もある。室蘭本線を経由する貨物列車は、石勝線よりもはるかに本数が多く、20年から30年周期で噴火を繰り返す「有珠山がいつ噴火してもおかしくない時期に入った」という有識者からの指摘もあることから、室蘭本線ルートが寸断されて鉄道による迂回ルートを確保できないとなると、北海道物流に与える影響は計り知れないだろう。
(了)