Yahoo!ニュース

ポケモン「シャワーズ」が「水の日」応援大使に。ポスターを見かけたらまちの「貯水する力」を考えてみよう

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
赤羽国交相から「水の日」応援大使に任命されたシャワーズ(写真:株式会社ポケモン)

身体の細胞が水の分子と似た綺麗な水辺を好むポケモン

 7月19日、ポケットモンスターのシャワーズが「水の日(8月1日)」応援大使に任命され、赤羽国土交通大臣(水循環政策担当)から任命書を授与された。

 「水の日」は、平成26年に制定された「水循環基本法」において、「国民に健全な水循環の重要性についての理解と関心を深める日」とされている。

 シャワーズについて簡単に紹介すると、今年4月23日に放送されたアニメ『ポケットモンスター』(テレビ東京)では、以下のように説明されていた。

「泡吐きポケモン。水タイプ。ノーマルタイプのイーブイから水中での生活に適した体に進化した。体の細胞のつくりが水の分子に似ているため、水中で溶け込むように姿を隠すことができる」

 この回は、海を舞台に繰り広げられるポケモンたちの障害物レース「ポケモンマリンアスレチックレース」がテーマで、シャワーズは見事に優勝した。

シャワーズ(写真:株式会社ポケモン)
シャワーズ(写真:株式会社ポケモン)

 株式会社ポケモン代表取締役の宇都宮崇人氏は「シャワーズは、身体の細胞のつくりが水の分子と似ている、綺麗な水辺を好むポケモンです。「水の日」応援大使としての活躍を期待しております」とコメントしている。

森林、湿地、田んぼにはシャワーズと同じ能力がある

 下の「水の日」のポスターに書かれているように、シャワーズの能力は「貯水」。

今年度の「水の日」のポスター(国土交通省)
今年度の「水の日」のポスター(国土交通省)

 気候変動で短期間に集中的に雨が降るようになり、豪雨災害、土砂災害が頻繁に発生している。災害から生活を守るためにも、水をためる場所は重要になっている。

 国はダムや堤防だけに頼らない治水に方針転換しており、様々な場所の貯水する力が問われる。

 雨水をためるということで忘れてはならないのは、森林のはたらきだ。「緑のダム」と呼ばれる森林は、雨を受け止め、土壌に染み込ませ、ろ過し、地下水として蓄える。

 湿地や田んぼにも水をためるはたらきがある。

著者撮影
著者撮影

 森林、湿地、田んぼには、様々なはたらきがあることを、この機会に見直したい。森林がむやみに伐採されたり、湿地が埋め立てられたり、田んぼが休耕田になってしまうということは、水を蓄える場所が減ってしまうということで、洪水になりやすくなる。

 また、都会はコンクリートで固められ、雨水を蓄えることができなくなっている。激しい雨が一気に下水道に流れると、下水管の容量を超えてあふれ出し、都市型洪水へとつながる。

 そんな都会では、雨を貴重な水資源ととらえ、賢く使う「雨水活用」を行うといい。

著者撮影
著者撮影

 1つの住宅やビルでためられる雨水はわずかでも、それが地域全体にひろがっていけば、大きなダムと同様の効果を発揮する。具体的には、雨水貯留施設を整備したり、個人住宅で雨水タンク、浸透マスなどを設置する。

 雨水活用は身近な水源を得ることであり、洪水を軽減させることでもある。公共施設の地下などに、大規模の雨水タンクを設置できれば、本格的な雨水活用都市ができる。

 個人にできることもある。それは風呂を有効活用すること。大雨のときに風呂水を流さないようにすれば下水道の負荷を減らし都市型洪水を抑制できるし、残り水をためておくことで災害時の生活用水として活用できる。

著者撮影
著者撮影

 シャワーズのポスターを見かけたら、まちの貯水する力はどれくらいあるだろうかと考えてみてほしい。普段何気なく見ていた森林、湿地、田んぼ、雨水タンクのそばに、シャワーズがいるような気がするかも、しれない。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

橋本淳司の最近の記事