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北陸に大雪をもたらした冬型の気圧配置が弱まると南岸低気圧の通過で関東でも大雪の可能性

饒村曜気象予報士
寒気の南下を示す日本海の筋状の雲(1月10日15時)

北陸の大雪

 西高東低の気圧配置が続き、非常に強い寒気が南下して北陸地方を中心に広い範囲で大雪となり、人口の多い住宅地でも積雪が2mを超えた所があります(図1)。

図1 各地の積雪深(1月10日23時現在)
図1 各地の積雪深(1月10日23時現在)

 特に、北陸地方では短時間に強い雪が降り、初めて「顕著な大雪に関する気象情報」が発表されました。

顕著な大雪に関する富山県気象情報

令和3年1月7日22時14分発表

砺波で7日22時までの3時間で23センチの顕著な降雪を観測しました。(以下略)

 「顕著は大雪に関する気象情報」は、1月7日夜遅くの富山県(砺波)に続き、8日には富山県(朝日)、福井県(大野市・福井市)、石川県(白山市白峰大道谷の県の観測所)、新潟県(上越市高田)、9日には福井県(福井市)、10日には新潟県(糸魚川市南押上の県の観測所)でも発表となっています(図2)。

図2 北陸の大雪(1月7日から1月10日、図中の黒丸は「顕著は大雪に関する気象情報」を発表した時刻)
図2 北陸の大雪(1月7日から1月10日、図中の黒丸は「顕著は大雪に関する気象情報」を発表した時刻)

 この、「顕著な大雪に関する気象情報」は、試験運用が始まったのは平成30年(2018年)12月25日からで、新潟県、富山県、石川県、福井県の4県が対象でした。

 正式運用は平成31年(2019年)11月13日からで、試験運用の4県に山形県、福島県の会津地方が加わった6県が対象です。

 過去6時間に顕著な降雪が観測され、その後も大雪警報の発表基準を一定量上回ると思われる時に発表されます。

 数年に一度の記録的な大雪への注意を速やかに呼びかけることで、市民生活への影響の低減を狙っている情報で、記録的短時間大雨情報の雪版ともいえるでしょう。

 「顕著な大雪に関する気象情報」発表のきっかけとなったのは、平成30年(2018年)2月5日から6日に発生した福井県嶺北地方を中心とする北陸地方の大雪です。

 このときは、平地でも各地で積雪1m超え、福井市では昭和56年(1981年)の五六豪雪以来37年ぶりに積雪130cmを超え、北陸自動車道は通行止めが続き、坂井市からあわら市にかけての国道8号線では約1500台の車が立ち往生し、福井県は災害派遣を要請しました。

 しかし、「顕著な大雪に関する気象情報」が発表されるようになった、令和3年(2021年)でも、大規模な交通渋滞が発生しました。

 福井県内の北陸自動車道は金津インターチェンジ(あわら市)と福井インターチェンジ(福井市)間の上下線で一時1000台の車が立ち往生しています。

 また、富山県の北陸自動車道でも200台以上が、新潟県の国道8号線でも約250台が立ち往生しています。

 このため、1月10日には、福井県、富山県、新潟県が相次いで自衛隊に災害派遣を要請しています。

 4日前の1月6日に、秋田県が横手市の大雪に対して自衛隊災害派遣を要請したのに続いての要請です。

 効果的な大雪防災対策のためには、交通渋滞が発生しないよう、さらなる検討が必要と思います。

弱まってきた冬型の気圧配置

 同じ西高東低の気圧配置といっても、短時間に大雪が降った1月8日頃に比べると、等圧線の間隔が広くなり、風も弱まってきました(図3)。

図3 地上天気図(1月10日15時)と予想天気図(1月12日9時の予想)
図3 地上天気図(1月10日15時)と予想天気図(1月12日9時の予想)

 北日本から東日本の日本海側のまとまった雪は、1月11日の成人日の午前中いっぱいは続く見込みです。

 それまでは大雪による交通障害や農業施設への被害に厳重に警戒してください。

 西高東低の気圧配置が弱まると、日本付近を低気圧が通過するようになり、このうち、本州の南海上を通過する、いわゆる南岸低気圧は、関東地方など普段は雪が降らない太平洋側の地方で大雪をもたらすことがあります。

 今回も事情は同じで、日本海側の大雪が一服しても、今度は太平洋側で大雪の可能性が出てきました。

南岸低気圧による大雪

 冬型の気圧配置は次第に弱まり、三連休明けの12日は、低気圧が本州南岸を通過する見込です。

 一般的に、この南岸低気圧で雪が降るかどうかは、気象予報士なかせの難しい予報です。

 というのは、低気圧が少し南を通ると雨も雪も降らないことになりますし、低気圧が少し北を通ると低気圧に向かって暖気が入り雨になるからです。

 また、関東地方では北側と西側にある山地の影響で、スカイツリーの634mよりも地表に近い大気層に寒気が溜まっていることがあり、この場合は、雨で降るところが雪で降ります。

 加えて、今回は南岸低気圧に先行して南岸を小さな低気圧が通過します。

 この低気圧の動向によっては、先行した降水現象があり、しかも未明の現象ですので気温が低く、雪の可能性が高くなっているからです。

 雪で降り始めれば、気温が低くなり、その後の降水現象では雪が続く可能性が高くなり、積雪の量が増えます。

 全国の雨雪判別予想をみても、西日本の南海上にある南岸低気圧による四国から九州の雨か雪の範囲とは別に、関東南部では広く雪が予想されています(図4)。

図4 全国の雨雪判別予想(1月12日3時の予想)
図4 全国の雨雪判別予想(1月12日3時の予想)

 三連休明けの多くに人が移動する日に、関東から西日本の太平洋側にかけては、広い範囲で雪が降る可能性がありますが、この日の予報は、非常に難しい予報です。

 最新の気象情報の入手に努めて、警戒してください。

南岸低気圧通過後は

 南岸低気圧のよって南から少し暖気が北上してきます。

 この低気圧は、少しの暖気を持ち込みますので、低気圧通過後は、続いている厳しい寒さは一服し、関東から西日本の最高気温は、10度を上回ってくる予報です(図5)。

図5 各地の10日間予報(数字は最高気温)
図5 各地の10日間予報(数字は最高気温)

 しかし、来週には再び強い寒気が南下し、最高気温が10度を下回る予報です。

 今冬は、暖冬だった昨年と様変わりで、繰り返し強い寒気が南下してきますので、気象情報に注意し、警戒してください。

タイトル画像、図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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