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【写真】行き先は「処刑台」か…闇の中を進む北朝鮮女性ら15人

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
2016年4月に中国で集団脱北した北朝鮮レストランの従業員ら(デイリーNK)

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は26日、韓国へ逃れるため中国から東南アジアへ渡ろうとしていた脱北者15人が中国公安に逮捕されたと報じた。

RFAが韓国のNGO「キョレオル統一連帯」のチャン・セユル代表の話として伝えたところでは、逮捕されたのは黒竜江省と吉林省から2組にわかれて移動してきた脱北女性13人と子ども2人の計15人。昆明で合流し、ブローカーの手引きにより川辺で高速ボートに乗ろうとしたところ、待ち伏せていた中国公安に逮捕されていたという。

一行はボートで東南アジアに渡る計画だったという。雲南省はミャンマーとラオス、ベトナムと国境を接しているが、チャン氏は目的地について明らかにしていない。ただ多くの場合、脱北者はラオスからタイへ逃れ、現地の韓国大使館の保護を受けるルートを選ぶ。

チャン氏がRFAに提供したわずか3秒ほどの映像(下の写真)を見ると、女性と思しき数人が闇夜の中、川辺で進む姿が収められている。一行としては、最も危険な中国内での移動を乗り切り、もう少しで新天地に足を掛けられるところだったはずだ。

(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面

ところが、事態は一度に暗転した。ただでさえ、韓国行きを目指して失敗した脱北者には酷い虐待が加えられる。

金正恩総書記が韓国を「統一を目指す相手ではない」「第1の敵国」だと宣言した今となっては、彼女らの行先は「処刑台」かもしれない。

一行の脱北を支援したキリスト教宣教会の関係者はRFAに対し、「中国公安当局が正確な時間と場所を知って待ち伏せしていたことから、一行の中に中国公安と連携していたスパイがいた可能性がある」としている。

一行はすでに、北朝鮮との国境地帯である中国吉林省などに移送されたもようだという。

逮捕者の中に妹がいるという韓国在住の脱北女性は、国際社会や韓国政府に対して、彼らの強制送還をなんとしても阻止するよう要請している。

中国雲南省で公安当局に逮捕される直前の脱北者ら(キョレオル統一連帯)
中国雲南省で公安当局に逮捕される直前の脱北者ら(キョレオル統一連帯)

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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