なぜ“スペイン勢”はCLで苦戦しているのか?バルサとレアルの2強時代にプレミアの資金力。
チャンピオンズリーグのベスト8が、決まろうとしている。
バイエルン・ミュンヘン、チェルシー、ミラン、ベンフィカがすでに欧州の8強入りを果たしている。現地時間14日・15日にラウンド16の残りの試合が行われ、正式にベスト8が決定する運びだ。
■欧州のベスト16というハードル
ベスト16が出揃った段階で、ひとつ明らかだったことがある。スペイン勢で残っているのは、レアル・マドリーのみだった。
リーガエスパニョーラに目を向ければ、バルセロナが2位マドリーを大きく引き離し、首位を快走している。しかし、そのバルセロナは今季のチャンピオンズリーグでグループ敗退に終わり、ヨーロッパリーグにおいてはベスト16進出をかけたプレーオフでマンチェスター・ユナイテッドに敗れている。
バルセロナがユナイテッドに敗れたのは、何か示唆的なところがあった。
近年、プレミアリーグの資金力は、圧倒的である。2023年の冬の移籍市場では、チェルシーが補強に3億2950万ユーロ(約461億円)を投じている。無論、これは欧州5大リーグでトップの数字だ。
チェルシーは昨季終了時にオーナーの交代を行った。ロマン・アブラモビッチ氏が、ロシアとウクライナの政治情勢の影響で退任。代わりにトッド・ベーリー氏が就任した。
ベーリー氏は、アブラモビッチ氏に負けじと、チームの戦力アップのために資金を投じた。この夏のマーケットの補強費(2億8200万ユーロ/約394億円)を含めれば、合計6億1150万ユーロ(約856億円)を就任一年目のシーズンに投じたことになる。
■外資の参入障壁
ここで注目したいのは、外資の存在だ。
チェルシーを筆頭に、マンチェスター・シティ(UAE /オーナーの出身地)、ユナイテッド(アメリカ)、リヴァプール(アメリカ)、アーセナル(アメリカ)とプレミアリーグで上位を争うクラブには外資がバックについている。
一方、スペインでは、外資が多くない現状がある。マドリー、バルセロナ、オサスナ、アトレティック・クルブはソシオ(会員)制で、実質的には買収不可能なクラブだ。
ビジャレアル(フェルナンド・ロイグ会長)、セビージャ(ホセ・カストロ会長)、ベティス(アンヘル・アロ会長)、レアル・ソシエダ(ジョキン・アペリバイ会長)と近年ラ・リーガの上位を争うクラブにおいては、スペイン人のオーナーや会長がトップのポストに就いている。彼らは基本的に健全経営を行ってきており、外資の一部参入はあり得ても、完全売却というのは考えられない。
唯一、外国人オーナーを迎えているのがバレンシアだが、こちらは成功のモデルケースとはならなかった。2015年にシンガポール人のピーター・リム氏がクラブを買収した際には、新たなオーナーを英雄扱いする向きがあったが、それから8年が経過して、いまでは「リム、アウト!」のプラカードが本拠地メスタージャに掲げられる光景が日常と化している。
アルメリア(サウジアラビア)、バジャドリー(ブラジル)、ジローナ(イギリス)、エスパニョール(中国)、エルチェ(アルゼンチン)とラ・リーガにも外国資本が参入してきてはいる。だが語弊を恐れずに言えば、下位チームが多く、彼らは1部残留を至上命題としているところだ。
「すべての数字を見てみないと、評価するのは難しい。だがリムがバレンシアのオーナーに就任した時、2万5000人くらいのバレンシアのサポーターが大喜びしていたのを覚えているよ。そんなことは、忘れ去られてしまったみたいだ」とはラ・リーガのハビエル・テバス会長の言葉だ。
「スペインのフットボール界では、外国人排他主義的なところが少しあるのかもしれない。(過去にラシン・サンタンデールやアラベスを買収したデミトリ・)ピータマンに対しても、そういう声があった。フットボールの世界では、大切にされるべき帰属意識というものがある。そして、それはスペイン人であるということに限らない」
テバス会長が語るように、外国人を受け入れる雰囲気があるか否かは大きい。
また外国人オーナーが就任したからという理由で、巨額の投資が保証されるわけではない。チェルシーとベーリー氏のように、誰もが大型補強へと傾くわけではないのだ。
未来が不透明では、そこにベットするのは難しい。とはいえ、ある程度、外資を受け入れる姿勢を示していかなければ、資金面ではプレミアに水を空けられたまま。そこに、ジレンマが横たわっている。