北海道新幹線工事が進む新小樽駅の建設現場 一方で、4月から最寄りバス停発着のバスは減便に
札幌に向けて延伸工事の進む北海道新幹線。当初の開業予定は2030年度末とされていたが、昨年2023年秋に、後志管内の倶知安―ニセコ町間の羊蹄トンネル比羅夫工区で工事が予定よりも4年遅れとなっていることが明らかとなった。こうしたことから、北海道新幹線の札幌延伸開業は2035年頃になるという話が巷ではささやかれていたが、今週中に建設主体の鉄道運輸機構と国土交通省は、当初予定していた2030年度末の札幌延伸開業断念を正式表明する方向で調整にはいったことが地元紙により報道された。開業時期については、新たな目標は示されず「未定」となる模様だ。
そんな北海道新幹線の札幌延伸工事であるが、新小樽駅の予定地を訪れたところ、こちらでは着々と工事が進んでいる様子であった。新小樽駅に向かう道路には、トンネル工事で出た土砂を積んだダンプトラックがひっきりなしに走行。新小樽駅の倶知安・東京方面では後志トンネルの掘削工事が進んでおり、公道側からは白い覆いに囲われたトンネルの坑口を見ることができた。
新小樽駅は小樽市の街外れに建設される。小樽駅からは路線バスで20分ほどの距離に位置しており、観光利用には向かないという声が後をたたない。そうしたことから新小樽駅の乗降客数の見込みは1日約1200人と控えめに設定されており、これはコロナ前の2018年度の小樽駅の乗降客数約18000人と比較してもかなり少ない。新小樽駅には、約300台が収容可能な駐車場を設置しパーク&ライドにも対応するとしているが、観光客やビジネス客にとっての交通手段はバスがメインとならざるを得ないのは明白だ。
しかし、この4月からは小樽市内の路線バスではさらなる減便が実施されている。新小樽駅予定地の最寄りとなるバス停は奥沢線の天神町となるが、この奥沢線も減便の対象となっており、先日、現地を訪れたところ小樽市内の各バス停にはバスの減便を知らせる案内が掲示されていた。
新小樽駅の開業に当たっては新幹線からの2次交通を支えるバス路線の確保が欠かせない。一方で、その足元のバス路線はドライバー不足のための減便が進む。さらに問題なのは、廃止・バス転換を前提とした並行在来線問題だ。
北海道庁は、北海道新幹線の並行在来線について、小樽―長万部間の廃止・バス転換と長万部―函館間の旅客列車廃止の方針を崩していない。こうしたことから、北海道新幹線開業に併せて、252.5kmにも及ぶ長大なバス路線が新たに設定されることになる。しかし、小樽ー長万部間のバス転換協議は、地域のバス会社に難色を示された中断に追い込まれ、1年近く何の進展もない事態が続いている。政策の意思決定にかかわっている関係者はこうした現状をどのように意識しているのだろうか。
新幹線の開業以前に地域交通の確保が「未定」のまま何の進展がないこともまた北海道新幹線の問題だ。
(了)