ついに「改正労働者派遣法」スタート! 企業は「正社員か?派遣社員か?」にコダワリがなくなる?
9月30日、悶着を繰り返した、あの「改正労働者派遣法」がスタートしました。この法案の施行により、これまでは3年が経過すれば、派遣社員を直接雇用の社員に切り替える必要があったのに、今後は、人を入れ替えさえすれば、その仕事を派遣社員に任せ続けることができるようになります。
「高度プロフェッショナル制度」や「ホワイトカラーエグゼンプション」など、”働き方改革”と称して、時間よりも成果を重視する働き方を奨励し、義務付けする流れが、政府の音頭によってできあがりつつあります。
働く側も「給料よりも働きがい」に重みを置く人が増え、企業と労働者との思惑はまるで合致しているかのようにも見えます。しかし、私はここに、大きな落とし穴があるのではないか、とも考えています。「成果」だの「やりがい」だのと、小奇麗な言葉で飾ろうとしても、現実はそのような思惑通りにはならないもの。現場で日々コンサルティングをしていると、そんな理想は、あくまでも理想の域を超えないアイデアであると思えてきます。
たとえば今回の「改正労働者派遣法」について。
何が変わって、何が変わらないのか?「働き手に不利な法案」と揶揄されてきたが、いったいどんなメリットが企業にもたらされ、労働者にどんなデメリットが圧し掛かるのか? 企業サイドに立って、考えてみましょう。
たとえば正規雇用された従業員が100名いて、そのうち3名が定年退職したとします。普通ならば3名、新しい人を正社員として迎えたいと企業側は思うことでしょう。しかし、これまでなら、
「その仕事は、慣れれば誰でもできるが、一定の期間で終わるような仕事ではない。だから、派遣社員には任せられない。正社員でないと」
という発想をしていた人が、
「3年後に正社員化する義務もないのだから、この際、派遣社員3名で補てんするか」
と深く考えずに意思決定するかもしれません。
さらに3年働いていた庶務担当の社員が辞めた、この場合も「派遣社員でいいか」と思えるようになってきます。さらに7年務めていた事務職が結婚を機会に辞めた、この場合も「派遣社員で代わりを探そう」となってくるかもしれません。
正社員100人だった企業が、みるみる97人になり、95人になり、90人になり、87人になり……と、数年で「正社員率」が急減する企業も出てくることでしょう。
労働者はその労働を通じ、何らかの付加価値を生み出さなければなりません。しかしその付加価値を、わかりやすい「成果」で表現できるかというと、できないケースが多々あるのです。しかし現場で働いたことのない人、人を採用し、教育し、一人前になるまでに責任を持って関わろうとした現場体験のない人は、その事実がわかりづらいのでしょう。
すべての職種に対して、やたらと、成果、成果、と求めるものではありません。
個人に対して成果を追求しすぎると、成果のわかりづらいルーチン的作業に従事している労働者に対しては、ヒドイ話「成果のわかりづらい仕事をしてるなら、派遣でいいじゃないか」となるかもしれませんし、正社員に対しては。「正社員なんだから成果を出してね」といった、醜悪な圧力をかけてくる輩も出てきます。
これを機会に、「準ブラック企業」が増えないか、そればかりが心配です。