「君たちはどう生きるか」の“情報封鎖”と報道側の苦心 そしてネットの“評価”は良い?悪い?
スタジオジブリのアニメ映画「君たちはどう生きるか」(宮崎駿監督)が14日、公開されました。公開前の宣伝はほぼナシ。事前のストーリーも秘密で、パンフレットの当日販売はナシ。徹底した“情報封鎖”の作戦に一部では疑問の声があったものの、いざ公開すると、多くのメディアが「異例の番宣なし」というニュースとして同作を取り上げました。引退宣言を撤回した巨匠の最新作であり注目度は高い一方、報道する側は公式の情報が少ないため苦心した様子がうかがえました。
◇公開後も内容に触れるのは自重傾向
メディアの動きは活発で、公開前日から同作について多くの記事が配信されました。14日のヤフーニュースだけでも、テレビや新聞社、ネット媒体などから100本近くの記事が配信されていました。これだけ多くの記事が出たということは、初日の宣伝は成功と言えそうです。
報道の方法も概ね二つの形に割れました。テレビなど大手のメディアは、作品内容に触れず「異例の番宣なし」ということをまず伝え、さらに鑑賞をした客の感想を取り上げることで、ネタバレをせずに作品のイメージを視聴者に届けようとしていました。
対してネットメインのメディアは、「ネタバレあり」と断った上で作品の中身に触れようとしましたが、それでも軽めにとどめた印象。細かい描写の記事は、避ける傾向にありました。資料が不足しているので書くのも一苦労でしょう。
◇「ネタバレ」ラインの設定が難しい
興味深いのは「ネタバレ」を避けるといいつつ、公式が発表していない序盤のストーリーを紹介する記事もありました。何せ公式の情報が現時点でないので、「ネタバレ」のラインの設定が難しく、「何がネタバレなのか」という判断できない不思議なことになっています。
記事を書く側からすると、ストーリーを紹介しないと作品の中身が伝わりづらいので、「映画は公開されたし、さわりぐらいなら……」という気持ちも見えますし、他のメディアが報じれば「じゃあ、うちのメディアでもいいか!」となるのは推察されます。
同作の主題歌は、人気アーティストが自らツイッターでオファーの背景と自らの思いを明かしましたが、肝心の作品の中身への言及は避けていて、作品情報の少なさが際立っています。
要するにメディアとしては、どう触れるべきなのか、他の媒体や状況を見ながら「今は様子見」という感じではないでしょうか。
さらにメディアとして悩みがあるのは、作品の画素材の少なさです(特に映像メディアは大変ですね)。ポスターの絵だけでは、変化がありません。スタジオジブリの公式ツイッターが絵素材を提供していますが、作中のカットではありません。このあたりのあんばい、情報の絞り方も巧みです。
◇ネットの「感情」はポジティブが圧倒的
そしてアニメ「君たちはどう生きるか」の記事ですが、公式の情報も少なく、メディアが出せることは少ないのですが、一方でマイナス要素を思わせる記事もありました。
【関連】宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」ついに公開 評価真っ二つ(東スポWEB)
【関連】「圧巻」「よく解らん」 宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」に感想続々(産経新聞)
【関連】「席ガラガラで草」ジブリ新作『君たちはどう生きるか』宣伝なし“スラダン手法”も「爆死必至」(週刊女性PRIME)
期待の大作といっても、絶賛一色ではおかしい話で、疑問視点、批判的な記事もあるのは、むしろ健全といえます。同時に「実際はどうなの?」ということが気になります。イメージではなく、データでは、どうなっているのでしょうか?
Yahoo! JAPANのサービス「リアルタイム検索」で、「君たちはどう生きるか」のワードを打ち込み、15日午前8時から「24時間」の期間をさかのぼって検索したところ、感情の割合はポジティブは87%(ネガティブは13%)でした。ちなみに他の人気コンテンツでもポジティブは60%台、70%台になります。
ネットの話であり、一つのデータにすぎず、あくまで参考ではありますが、「賛否」というより、圧倒的に「賛」という感じに見えます。
もちろん、映画の成功失敗の判断の指標となるのは、メディアの露出の多寡でなく興行収入です。しかし、情報を絞ることで、メディアをうまく躍らせたのは確かで、その違和感は消費者にも伝わるでしょう。そして初日の話題作りに成功したという意味では、制作側の「狙い通り」といえそうです。
少なくとも、他の映画の宣伝担当からすると「うらやましい限り」というのは、間違いなさそうです。