惜敗日本に「キャプ翼なら…」の声も 伊メディア、一定の評価も最後は「ハラキリ」?
三度目の正直ならず――FIFAランクで3位のベルギーを一時は追い詰めながら、日本は逆転負けでロシア・ワールドカップ(W杯)に別れを告げた。
称賛に値する奮闘だったことは確かだろう。例えば、イタリア紙『コッリエレ・デッラ・セーラ』は「ポーランド戦のおぞましい最後を、少なくとも部分的には正すような勇敢なパフォーマンスを見せてW杯から去った」と伝えている。
また、ベルギーの1点目について、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「かわいそうな川島(永嗣)」と表現。『レプッブリカ』もラッキーゴール扱いし、「日本には快挙を達成するのに必要なほんのわずかな幸運がなかった」と伝えるなど、運に恵まれなかった部分もあるという見方もあった。
『スカイ・スポーツ』は、吉田麻也がロメル・ルカクを「うまくコントロールし、個の勝負に勝った」と称賛。『ガゼッタ』は原口のシュートを「剣のように鋭い」と称し、乾のシュートは「まるでルカ・モドリッチのよう」と賛辞を寄せている。
ただ、個よりも日本が評価されるのは、やはり組織力だ。『スカイ』は「日本は強豪たちもうらやむような秩序ある戦い方で全員を驚かせた」と報道。ベルギーが「日本の活発さ、そしてそれ以上に守備組織に苦しんだ」と、2点リードした際は「本当にキャプテン翼みたいだった」と評した。
世界で絶大な人気を誇る高橋陽一氏の作品は、ほかのイタリアメディアにも登場している。
『コッリエレ・デッラ・セーラ』は、「オリー(大空翼)とベンジ(若林源三)が現れて、誰もが日本は本当にベルギーを倒し、さらに驚きのW杯にすることができると考えた」。「すべてが可能で、夢が現実となるテレビシリーズへのノスタルジー」を感じたと報じている。
『コッリエレ・デッロ・スポルト』も、原口元気と乾貴士のゴールをトム・ベッカー(岬太郎)とジュリアン・ロス(三杉淳)になぞらえ、「キャプテン翼だったら、最後に日本はベルギーを下し、準々決勝でブラジルに挑んでいた。そして、どうなっていたかは分からない」と伝えた。
ただ、『コッリエレ・デッロ・スポルト』は「だが、これはアニメではない」とも断じた。当然だ。そして現実の世界において、地力でベルギーが日本に勝ることは否定できない。だからこそ、日本が奮闘したという見方と同時に、ベルギーを批判する声も上がっている。
『コッリエレ・デッロ・スポルト』は、ベルギーが前半得点できなかったのは、「日本のまとまりと組織」に特に功績があるとしつつ、ベルギーの中盤の出来が悪かったからでもあると指摘した。
特にベルギーに手厳しかったのが、『ガゼッタ』だ。2年前のEUROで準々決勝敗退に終わった「教訓から学んでいなかったのは明らか」と批判。「決して自分の美に酔い過ぎてはいけない」「傲慢で、締まりがなく、おそらくはすでにブラジルとの準々決勝を考え始め、誇らしい日本を相手に激しい落胆を味わいかけた」とこき下ろしている。
だが、多くのメディアが「クレイジーな逆転劇」と伝えたように、そんなベルギーを相手に日本が最後に屈したのは事実だ。そしてその直接の原因となった最後の失点場面を、一部のメディアは批判した。
『コッリエレ・デッラ・セーラ』は、カウンターの前のCKで、日本が「延長突入前最後のプレーと考え、ベルギーのエリアに選手たちがあふれ出た」と、リスキーな選択だったと指摘。『レプッブリカ』も「CKを生かそうと日本は前線へと上がり、信じられないように罰せられた」と伝えている。
『プレミアム・スポルト』に至っては、「歴史的となるはずだった8強進出を逃したのは、偶然だけではない。W杯の決勝トーナメント1回戦で、2-2の場面でカウンターを食らうのは許されない」と酷評。「日本にとって本当のハラキリ」と、自滅だったとの見解を示した。
延長戦突入も見えていた中でのCKでの選択には、『コッリエレ・デッロ・スポルト』のイヴァン・ザッザローニ編集長も「W杯のラウンド16で、2-2の終了20秒前にCKを生かそうと全員が飛び込み、カウンターから失点するなんて、日本とキャプテン翼でしかやらないことだ」とツイートしている。
結果を重んじるイタリアらしい見解だ。最後のCKでのチョイスに、おそらく正解はないだろう。ただ、改善すべき点はあったはずだ。それが、「足りなかった何か」の一つかもしれない。そしてそれらを根気強く埋めていくことで、いつか、まだ見ぬ景色にたどり着くことができる。そう信じたい。