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関西AMラジオ随一の人気アシスタント・山本量子が病を明かした理由。そして、今後への思い

中西正男芸能記者
AMラジオで多くのレギュラー番組を持つ山本量子さん

 MBSラジオ「こんちわコンちゃんお昼ですょ!」「茶屋町ヤマヒロ会議」など関西のAMラジオで多くのレギュラーを持つ山本量子さん(46)。先月、アシスタントを務めるMBSラジオ「メッセンジャー黒田のチラシダス」がギャラクシー賞ラジオ部門で入賞を果たすなど、さらに力強く歩みを進めています。今年2月、出演番組内でがんと闘っていることを明かしましたが、そこに至るまでの葛藤。そして、常に自らをけん引してきたラジオ愛を吐露しました。

ラジオ愛ゆえに

 今年2月、休んでいたラジオ番組に戻らせてもらった際に、初めて病気のことをリスナーさんにお伝えしたんです。

 でも、本当の本当の思いとしては、病気のことは話したくなかったんです。

 どちらかというと、バラエティー的な番組にたくさん出してもらっていて、結婚してないことなんかも出演者さんから愛情たっぷりにイジってもらう。そして、私が言い返していく。そんなやり取りが私にとっての日常でもあります。

 そこで自分が病名を出せば周りもイジリにくくなるのでは。それでも私のためだと思って頑張ってイジってくださる方がいたとしても「病気の人間になんてことを言ってるんだ」とその方が悪者になってしまう。

 それが一番申し訳ないことでもあり、ラジオが大好きでこの仕事を始めた自分にとって一番イヤなことでもあったんです。

 ただ、事実として、番組をたびたび休みすぎている。当然リスナーさんからしたら「なんで、こんなに休んでるの?」と思われるでしょうし「もしかしたら、周りのイジリでメンタルがしんどくなったの?」みたいな空気も出てきている。

 そんな形で周りの方に余計な疑念がいく。これも何としても避けたい。それなら本当のことを伝えた方が良い。そう思って病気について話すことを決めました。

 そもそもの話、病気が分かったのは2014年でした。それまですごく元気で検査にもあまり行ってなくて。さすがにだんだん大人になってきたので検査に行ってみよう。そこで分かったのが子宮頸がんでした。

 ちょうどMBSラジオで念願のレギュラー番組に入らせてもらった時期で、入ったばかりの番組に3回ほど出ただけで休むことになりました。そこから3カ月ほど休んで手術や抗がん剤などいわゆる“フルコース”で治療をし、経過観察に入りました。

 そこから5年が経ったら完治ではないけれども寛解。「このがんはひとまず落ち着きました」という見立てになるんですけど、4年11カ月の段階で病院から連絡が来たんです。「また、がんの数値が上がっている」と。

 そこで子宮頸がんではなく、新たに卵巣にがんが見つかりました。そこから現在に至るまでその治療をしている。それが私の現状です。

二つの自分

 ラジオと出合ったのは小学5年。当時流行っていたダブルラジカセを買ってもらったのがきっかけでした。機能の一つとしてついていたラジオを一回聞いてみよう。それで一気にハマっていったんです。

 聞けば聞くほど、本当に面白い。小学校を卒業する時には将来の目標として「ラジオでしゃべる人」と書くようになっていました。

 思いは中学、高校になっても変わることなく、むしろ強くなっていきました。そこから縁あって20代で今の事務所に所属することになりました。最初は若かったこともあって(笑)、テレビに出してもらっていたんですけど、30代になって目指していたラジオの仕事をいただくようになりました。本格的なスタートラインとなったのが2013年に出してもらった「テンダラー」さんの番組でした。

 そこからMBSラジオでレギュラーをいただくようになった。やっと夢が叶った。そこで病気が分かったんです。

 ラジオは本当の言葉しか通じないと思いますし、本当の自分を出さないと面白くない。だからこそ、自分の“カタチ”と向き合うお仕事でもあると思うんです。それゆえに、病気によって自分が変わっていくことも感じました。

 本来、私は押し出しの強い人間というか、自分の中で「頑張れば何でもできるはず」という人間でもあったんです。できない時は何かしら努力が足りない。その足りない部分をつぶしていけば必ず目標に近づけると。

 そんなガチガチの考え方をする人間でしたし、人から何か相談を受けた時にもそんな考えを相手に押しつけるところもありました。でも、病気になって思ったんです。「世の中には努力でどうにもならないこともある」と。

 だからこそ、そこから人にも優しくなったと思います。こんなこと自分で言うのは本当にナニなんですけど(笑)。

 同じように相談されても何かを押しつけるのではなく寄り添う。そう変化していったと思います。自分にも多少は優しくなったかなと…。

 何十年もこれまでの自分で生きてきて、ちょうどラジオの世界に入らせてもらったタイミングで病気になって自分が変わっていった。

 なので“これまでの自分”と“病気になってからの自分”。二つの自分が混在している中でラジオをすることになりました。

 ラジオは本当の自分を出すところ。となると、最初は二つの自分に戸惑って「え、私、どんな人間やったっけ…」となることもありました。でも、徐々にそこが調整されていくというか、重なっていきました。

 ただ、重なってズレはなくなりましたけど、それでも二つの自分はある。それゆえ、人のお話を聞いたり、それをもとに言葉を紡いでいくアンテナというか、センサーみたいなものは増えた気がします。病気をなんとか良いように考えると。

 心の強い人もいれば弱い人もいる。強い人でも弱い時もある。その感情の揺れや思いがこれまでよりは細かく分かるようになったというか。

 とかなんとか言ってますけど、何にも分かってなくてガサツなところもしっかりありますし(笑)、あくまでも当社比というか自分比として、心の機微をキャッチするグローブが少しは大きくなったのかなと感じています。

 今後の話をさせてもらうとすると、自分も子どもの頃にラジオを聞いて「面白い世界やなぁ」と思って今の仕事に就きました。なので、今の若い人にもそう思ってもらえるような存在に近づいていく。それが目標でもあります。

 ラジオほど何十年もしゃべり続けられる場はないと思いますしね。そんな思いで入ってきた若い人が「このオバチャン、まだしゃべってんのかい!」と思うくらい末長くしゃべる(笑)。そうやって、ラジオ臭たっぷりの存在になっていけたらなと思っているんです。

(撮影・中西正男)

■山本量子(やまもと・りょうこ)

1976年1月15日生まれ。大阪府出身。オフィスキイワード所属。20代から関西を中心にタレント活動を始め、2013年にMBSラジオ「なにやっテンダラー」のアシスタントとなり本格的にラジオの世界に進出する。MBSラジオ「こんちわコンちゃんお昼ですょ!」「茶屋町ヤマヒロ会議」など出演多数。MBS「メッセンジャー黒田のチラシダス」は第59回ギャラクシー賞」ラジオ部門を受賞した。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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