ウクライナ戦争「冷戦2.0とサプライチェーンへの影響」
・ロシア戦争、サプライチェーンへの影響
ロシアの侵攻から始まったウクライナ戦争は世界のグローバルサプライチェーンへ多大な影響を及ぼしている。日本企業のうちウクライナやロシアで直接的なビジネスを行っている場合は影響が明らかになっている。ただ、多くの日本企業はウクライナと間接的なビジネスを行っており、ウクライナ戦争から受けるダメージを情報入手し分析しているところだ。
とはいえ、多くの日本企業はウクライナ戦争から多大な、かつ広範囲の影響を受けると予想している。私はサプライチェーンのコンサルティングに従業しており、日々、関係者と情報交換を実施している。
そこでサプライチェーン関係者からヒアリングした現状認識や、侵攻後からの変化点を下記の通り述べる。
・ロシアやウクライナの代替先として、現在グローバル企業はトルコを設定しており、実際に現在はトルコでの生産移管に尽力している
・ロシア・ルートの海上運送ルートは回避されており、現在、海上運送時間は遅延している。また航空運送も同じだ。さらに原油高により輸送価格は上昇している
・ロシアはアルミニウムの生産国として知られており、国際価格は急騰している。同時にアルミニウム加工品の価格も同様に高騰している
・ウクライナのネオンは半導体レーザー用として消費されており、供給不足に陥っている。これまでタイトだった半導体不足をさらに加速させるだろう
・半導体不足に伴って自動車産業は多大な影響を受ける。実際にロシアにおけるトヨタ工場が稼働停止を発表しているが、フォルクスワーゲングループなども同様の影響を発表している
・ロシアとウクライナは小麦の世界市場における23%のシェアを有している。また、ひまわり油の60%を生産しているが、これらも同様に世界の供給を揺るがす。なお、ひまわり油は意外と知られていないが、マヨネーズやサラダドレッシング、マーガリンの原料にくわえて、化粧品などへの影響が懸念される
・またウクライナ戦争はウクライナだけにとどまらず、ポーランドのサプライチェーンにも影響を及ぼすと考えられる
・石油は1バレルあたり120ドルを突破、天然ガス市場、その他エネルギー市況に影響を及ぼす
・グローバリゼーションと冷戦2.0
19世紀に生じたグローバリゼーションは、鉄道や蒸気船などを活用することで長距離の移動を可能としたところからはじまった。資本、財、人的な移動により富は拡張していった。
そして20世紀から21世紀ではデータの瞬間移動も可能となり、取引の循環を支えた。世界各国との関係を密接化させ、さらに網の目のようなサプライチェーンを実現させた。
たとえば、あなたが使用しているスマホは、多くの場合6大陸のさらに50弱もの国の部品を使用している。その一部が欠けても、そのスマホは成り立たない。
そこでこのウクライナ戦争が生じた。原油、石炭、天然ガスはコロナ禍以前の水準から2倍近くに引き上がっている。戦争が開始し、第二次世界大戦以降の最大の混乱を迎えようとしている。これは冷戦2.0と呼ぶにふさわしい。
・エネルギー
・食料
・通貨
・輸送ルート
・半導体
これらが現在、一斉に二分化した。各国の企業はどのルートを頼りにするか、あるいは代替を確保するか迫られている。
ウクライナに侵攻したロシア軍の戦車は、ウクライナの泥に絡み取られていると報道があった。しかし同時に、冷戦2.0は各社にサプライチェーンの泥沼に招待しようとしている。