後味の良いつぶあんがたっぷり!金沢市の伝統工芸「加賀八幡起き上がり」を最中で表現した郷土菓子
全国に存在するそれぞれの土地の伝統工芸。玩具から日用品、装飾品まで実に多彩で、旅行へ赴いた際にはついつい(値段も含め)見入ってしまいます。
また、お祝い事や節句といった節目に用いられることが多い物も、皆さんの周りにありませんか?
石川県金沢市の伝統工芸品のひとつ、「加賀八幡起き上がり」。達磨とはまた一味異なり、基本的には愛らしい女の子のお顔で、松竹梅が描かれたお召し物(赤ちゃんのおくるみのような印象も)を纏った人形です。その歴史は古く、起源は第15代天皇・応神天皇がお生まれになったときともいわれ、江戸時代にはすでに存在していたのだとか。女の子が誕生した際に贈ると、衣服に困らないという言い伝えを持ち、一般的に流通し始めたのは明治あたりともいわれています。
コロンと横に倒しても必ず起き上がるという逞しい縁起物の郷土玩具。金沢市に本店を構える和菓子屋「浦田甘陽堂」さんは、その加賀八幡起き上がりを見事な和菓子に仕立て上げています。今回は浦田甘陽堂さんの「加賀八幡起上もなか」をご紹介。
お人形そのもののような包装紙、開くのが勿体ないと思ってしまうほど。そっと包みを開くと、中の最中種も細やかな芸が光る細工が。つぶらな瞳もそのままです。
食べてしまうのが勿体ないのですが、思い切ってあんこが沢山詰まっているであろう最も厚みのある胴体部分をがぶり。ぱりぱりと心地よく響く最中種の香ばしさがすぐさま鼻腔に広がり、軽やかな甘味が口の中に登場。
かと思いきや、不思議なことに徐々に甘味からまろやかな小豆の風味が徐々に強まり、あれよあれよという間に上品かつ後味のすっきりとした余韻に。次第に甘くなるのではなく、素材の味わいへと変化していく一連の流れは癖になりそうな…。北海道産大納言小豆を炊き上げた粒餡をたっぷりと挟んでいるにも関わらず、ついついもうひとつ開封してしまいそうな食べ口。
豆の食感も程よく残されているのも、飽きの来ない秘訣かと。飲み物で余韻を中和させずとも、このあんこのままとどめておきたいと思える味わいです。
何度転んでも必ず立ち上がるという強かな姿勢、そして食べた人の心をそっと包み込んでくれるような味わい。末永く紡がれていってほしい銘菓のひとつに出会えました。
<金沢うら田・泉野店>
公式サイト(外部リンク)
金沢市泉野町4丁目8-21
076-245-1188
9時~18時(日曜~17時)
定休日 元旦・1月2日・水曜