プライスラインの逆オークション特許も日本で成立しています
ちょっと前の記事で、かつて米国で議論になったアマゾンのワンクリック特許が長い審査期間を経て、多少の補正が加わった後に日本でも成立していた件を書きました。
これと同様のパターンで、かつて「ビジネスモデル特許」として議論の的になったプライスライン社の逆オークション特許も2011年に日本において成立しています。弊所ブログでも書いたのですが、改めて紹介します。
逆オークションとは、買い手が航空機やホテルの値段を指定すると、複数の売り手が売り物を提示し、買い手が一番良い条件のもの(たとえば、一番立地が良いホテル)を選択できるというオークション方式です。このようなビジネスモデルそのもの(正確にいうとビジネスモデルそのものを実装した情報システム)が特許化できるかという点で、米国ではかなり議論になりました。
ちなみに、アマゾンのワンクリック特許も「ビジネスモデル特許」の文脈で議論されていたことがあるのですが、よくよく考えてみればワンクリック特許は電子商取引のUI設計に関する発明であって「ビジネスモデル発明」ではないですね。議論としては、ビジネスモデルは特許化できるのかではなく、新規性・進歩性はあるのかで論じるべきだったと思います。
さて、プライスラインの逆オークション特許は1998年8月11日に登録されたUS5,794,207号”Method and apparatus for a cryptographically assisted commercial network system designed to facilitate buyer-driven conditional purchase offers”です。上記の逆オークションのアイデアをコンピューターで実行することがクレームになっており、範囲は広いです。
これに相当する日本の特許は特許4803852号で、米国登録から10年以上たった2011年8月19日に登録されています(図面に「モデム」という記載があるのが時代を感じさせます)。拒絶理由通知回避のために限定が加えられていますが、「所定期間内に前記顧客が提出した前記条件付購入申込の数が前記所定期間内に提出可能な条件付購入申込の数を満足しているかどうかを判断(する)」等、比較的ありがちな限定が多いので、ワンクリック特許の場合と同様に意識して回避しないと侵害してしまう可能性があるかと思います。
シェアリングエコノミー、C2C系のウェブビジネスの新アイデアが今後いろいろ出てきそうな中、逆オークション的な発想に再度注目が集まることもあるのではないかと思います。この特許は要チェックかもしれません。