レノファ山口:復活の攻撃的サッカーで今季初勝利。小塚和季は40メートル超のロング弾
レノファ山口FCは3月26日、維新百年記念公園陸上競技場(山口市)でカマタマーレ讃岐と対戦。前半33分に相手の意表を突くMF小塚和季のロングシュートが決まって先制すると、後半も守備陣が身体を張り、1-0で勝利した。今季初白星で順位は17位に上がった。
明治安田生命J2リーグ第5節◇山口1-0讃岐【得点者】前半33分=小塚和季(山口)、【入場者数】4254人【会場】維新百年記念公園陸上競技場
レノファがようやく夜明けの時を迎えた。試合後のラインダンス。DF渡辺広大は疲れを厭わず、人一倍足を振り上げて体を揺らしていた。「これからどんどん(勝利のラインダンスを)やっていけるよう、勝ち星増やせるように頑張りたい」。放り込まれたクロスをヘディングで押し返し、相手のセットプレーでも厳しいマークがピンチをはねのけた。「まずは階段をひとつ上れた」と力を込めた。
和田を先発起用。攻守に修正進む
内容面で少しずつ上向いてきていたレノファ。ただ、前線に運んだときのアイデア不足と集中の欠けた守備が足を引っ張っていた。
今節はMF三幸秀稔が不在の中で、高柳一誠と佐藤健太郎をボランチに置き、左サイドでは和田昌士を初先発。メンバー変更にはリスクも付きまとうが、今週は練習時間を通常よりも増やして課題克服と新布陣のコンビネーション強化を図った。その成果が出て攻守で修正が進み、前節でわずか3本に終わったシュートは12本に増加、セットプレーでの守備は上述したマークの部分に加えて、CKやFKを連続して与えないなど改善が図られた。
立ち上がりからボールを握ったレノファは、上野展裕監督が「チームとしてやることの再現性を発揮できる選手」と評価する和田や、連係の中からシュートを狙えるFW岸田和人が躍動。いくつかのシュートシーンを作っていったほか、シュートまで至らずとも長くボールを保持し、相手陣内でプレーしていく。
先制点は優勢な展開の中で生まれた。前半33分、ハーフウェーラインのすぐ先で小塚和季がボールを奪うと、「相手の足が止まった瞬間にGKが前に出てくるのが見えた」と隙を逃さずにロングフィード。これがそのままGKの頭上を越し、ボールは吸い込まれるようにゴールの中へと落ちていった。
小塚は2年前のJ3第4節・藤枝MYFC戦でも似た位置からロングシュートを決めており、今節の風に乗った40メートル超のロング「シュート」はそれを再現するかのよう。「狙っていました」と小塚。レノファに待望の先制点を呼び込んだ。
3試合ぶりのゴールで勢いづくレノファに対し、讃岐は同38分、DF李栄直がシュートの直撃を受けて負傷退場。FW原一樹を入れてポジションを組み替え、3-5-2でスタートした布陣を4-4-2に変更する。
守備も集中力維持。無失点に抑える
讃岐の北野誠監督は「奪ったところで持ちすぎた。間違ったタッチ数をしてしまい、山口さんにボールを奪われた」という前半の反省点から、ハーフタイムに「球離れが遅い。もっと判断を早くしよう」と指示し、後半は讃岐にもチャンスが増え始める。特に原やFW木島徹也に対して縦に早く入れていくようになる。
この讃岐の攻撃パターンに対して、レノファの守備陣もマークを外さず、球際には強くアプローチしてシュートゾーンでの動きを制限する。しかし、攻撃は途中で引っかかるようになり、前半に見えた勢いがしぼんしまう。もちろんこのまま守備ブロックを敷き、逃げ切りを図るのも手段ではあるが、上野展裕監督が選択した一手は攻撃的なMF小野瀬康介の投入だった。
ピッチ上には小野瀬のほか、和田、小塚、米澤令衣らが同時に立ち、連係のみならず個の力でも局面突破をできるメンバーが集結。その次の交代カードもアンカータイプの高柳からボールを前向きに動かせる池上丈二へのスイッチだった。守りに入るくらいならばそれ以上のゴールを目指す―。リードした後半でも攻撃のカードを次々と切り、それはレノファらしい超攻撃的なサッカーの復活を感じさせた。
交代策は奏功。レノファは後半30分前後から、前掛かりになってきた相手の背後を突く形で縦パスが増えるようになる。セットプレーのチャンスも同じように増え、再びゴールを脅かした。最終盤、讃岐の原が抜け出てGK山田元気と対面するピンチを迎えるが、ここでは山田の判断が冴えてボールを退けた。
レノファは追加点こそ奪えなかったものの、攻めの守備を内包した攻撃的サッカーが開花し、1-0で勝利。今季初勝利を飾り、順位も17位に上がった。試合後恒例のラインダンスでは、渡辺広大や小塚和季らを中心に足を振り上げ、山田も「勝って踊ることができた。これがモチベーションになるなと思った」と笑みを浮かべた。
帰ってきた「もっと」の意気
今年、15人の新加入選手を迎えたレノファ。パスサッカーに憧れて加入を決断した選手も多く、3連敗を喫していたからといって根幹はぶれなかった。練習に費やす時間はJリーグの中でも突出して長いが、それでも選手たちは食らいつこうとしている。コンサドーレ札幌から加入した前貴之は「DF陣だけでなく全員の意識が高く、二次攻撃も跳ね返せていた」と手ごたえ。今後も試練は訪れるかもしれないが、「まだ1勝。しっかりいい準備をして次に向けて頑張っていく」と覚悟を示した。
上野監督の熱も冷めることはなく、「練習すればするだけ良くなっているが、もっと良くなるし、もっと良くしていきたい」と意気込む。次戦は4月1日に敵地で水戸ホーリーホックと対戦し、2連勝を目指す。
ポゼッションとアイデア、それに球際の強さが噛み合った初勝利。このチームに流れる攻撃的なサッカーと、「もっと良くなりたい」という精神が、いまようやく朝の日差しを浴び、輝き始めようとしている。
※高柳一誠の「高」は異体字が登録名