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なぜレアルとパリSGの“バトル”は終わらないのか?エムバペの獲得競争と欧州の覇権争い。

森田泰史スポーツライター
決勝点のエムバペ(写真:ロイター/アフロ)

一瞬で、勝敗が決してしまった。

現地時間15日にチャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦ファーストレグが行われ、パリ・サンジェルマンとレアル・マドリーが対戦した。試合は終盤にキリアン・エムバペが決勝点を挙げ、パリSGが1−0と勝利している。

得点を喜ぶエムバペ
得点を喜ぶエムバペ写真:ロイター/アフロ

そう、勝負を決めたのはエムバペだった。まさにマドリーとパリSGの“バトル”の火種になっている選手である。

この数年、マドリーはエムバペ獲得に向けて動いてきた。この夏には、契約期間が残り1年となったところで、移籍金2億ユーロ(約260億円)のオファーを出したと言われている。だがパリSG側がオファーに応じず、取引成立には至らなかった。

だがマドリーとパリSGの争いは、エムバペだけが原因ではない。欧州スーパーリーグ構想をめぐって、両者は真っ向から対立した。フロレンティーノ・ペレス会長は欧州のトップの15クラブを抱き込み、UEFAの管轄外で新たなリーグ戦を構築しようとしていた。これに対し、ナセル・アル・ケライフィ会長は真っ先に反対のスタンスを表明して、UEFA側についた。最終的にはファンから猛反発が起こり、イングランドの6クラブが撤退して、計画は頓挫した。

その流れで、アル・ケライフィ会長は混乱に乗じて欧州クラブ協会の会長に就任している。ユヴェントスのアンドレア・アグネッリ会長がペレス側についたためだ。パリSG(+UEFA)対マドリー(+ユヴェントスとバルセロナ)という構図が、明確になった。

ペレスの狙いは「フットボールの破壊」にあったわけではない。スマホの普及で若い世代がフットボールから離れていく状況を危惧している彼は、より魅力的なコンテンツを提供する必要性に駆られていた。ゆえに、ビッグマッチやスター選手が集う好カードが必要だと考えた。ただ、「閉じたリーグ戦である」という構造自体に無理があり、周囲から拒絶反応が起こった。

ドリブルするモドリッチ
ドリブルするモドリッチ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

2011年にカタール・スポーツ・インベストメンツ(QSI)に買収され、パリSGは新たなスタートを切った。その中で、最初に就任したのが、奇しくもカルロ・アンチェロッティ監督だった。

「国際的なスーパーなクラブになるという野心はなかったと思う」はアンチェロッティ監督がのちに自伝で明かしている。「我々は週末にアウェー戦を控えていた。責任者の人に質問されたよ。『土曜日には肉と魚のどちらを食べるんだ?』とね。どういう質問なのかと思ったよ!木曜日にその質問があるというのは、準備がされていないということだ。食事拠さえ用意されていなかった。選手たちは30分前に練習に来て、終わればさっさと帰っていった」

ネイマールとメッシ
ネイマールとメッシ写真:ロイター/アフロ

この10年で、パリは14億4500万ユーロ(約1878億円)を補強に投じてきた。現在、リーグアンの全体のサラリーのうち、35%がパリSGの選手で占められている。

「隠すつもりはない。我々とレアル・マドリーの間に、関係性はほとんどない。何があったかを改めて思い出す必要はない。私はスモールチームを含めたバランスの取れたサッカー界を信じている。だが彼らはそのようには考えていないようだ」とはアル・ケライフィ会長の言葉だ。

パリSGの目標がクラブ史上初のチャンピオンズリーグ優勝にあるのは、明らかだ。一方で、マドリーは13回のビッグイヤー獲得を誇る。ファーストレグはパリに軍配が上がった。マドリーのホームで行われるセカンドレグで、我々は世界のフットボールシーンの趨勢を見極めることになるかもしれない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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