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ともにFAのシーガー兄弟は明暗が分かれる!? 今シーズンのホームランは兄が35本、弟は16本だが…

宇根夏樹ベースボール・ライター
コリー・シーガー(左)とカイル・シーガー August 17, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフ、シーガー兄弟は、揃ってFAになった。2人とも、FA市場に出るのは初めてだ。兄のカイルは、シアトル・マリナーズと交わしていた7年1億ドルの契約7年目が終わり、そこについていた球団オプション、来シーズンの年俸2000万ドルを破棄された。ロサンゼルス・ドジャースでプレーしていた弟のコリーは、サービス・タイムが6年に達した。

 兄は34歳の三塁手、弟は27歳の遊撃手だ。ちなみに、2人の間にいる、29歳のジャスティンは、メジャーデビューできないまま、選手としてのキャリアを終えた。ジャスティンは一塁と三塁を守る右打者だったが、彼の兄と弟は左打席に立つ。

 年齢とポジションからわかるように、FA市場で人気を博すのは弟のほうだ。今シーズン、兄はキャリアハイの35本塁打を記録し、弟は16本塁打にとどまったが、その評価の差は縮まらない。弟のホームランが少なかったのは、死球を受けて右手を骨折し、2ヵ月以上も離脱したのが理由だ。パワーを欠くわけではなく、昨シーズンと今シーズンの計147試合で、31本のホームランを打っている。一方、今シーズンの兄の出塁率は.285に過ぎなかった。ここ3シーズンのトータルも.309と低い。弟の出塁率は、今シーズンが.394、ここ3シーズンは.360だ。

 弟は、同じ遊撃手のカルロス・コレイアと並び、今オフのFAトップ2と言っていい。少なくとも、総額2億ドル前後の契約を手にするはずだ。3億ドルに達しても、驚きではない(コレイアについては、「「5年1億6000万ドル」の提示は高いのか安いのか。球団史上最高額に近いが、選手の希望はその2倍!?」で書いた)。だが、兄が得られる契約は、年平均1500万ドルに届かず、期間も1~2年だろう。

 契約の大きさもさることながら、どういった球団と契約を交わすのかも、差がつくかもしれない。弟に大枚を投じるのは、来シーズンもしくは近い将来のポストシーズン進出をめざす球団だと思われる。そういった球団が兄と契約する可能性もあるが――今オフのFA市場には、クリス・ブライアントを除くと、明らかに兄を上回るような三塁手が見当たらない――再建完了までにまだ時間を要する球団が、次代を担う三塁手が台頭するまでのつなぎとして、兄との契約に動くこともあり得る。

 後者の球団と契約した場合、ポストシーズン出場の機会は、シーズン途中にトレードされない限り、まず巡ってこない。マリナーズ一筋だった兄は、ポストシーズンの試合に出場したことがない。レギュラーシーズンの出場1480試合は、ポストシーズン未経験の現役選手のなかで、最も多い。それに対し、弟がポストシーズンに出場しなかったのは、シーズン序盤にトミー・ジョン手術を受けた2018年だけだ。6度のうち2度はワールドシリーズにも出場し、2度目の昨年は、優勝しただけでなく、シリーズMVPに選ばれている。

 なお、兄と弟の代理人は異なる。兄はジェット・スポーツ・マネージメント、弟はスコット・ボラスが率いるボラス・コーポレーションだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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