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「5年1億6000万ドル」の提示は高いのか安いのか。球団史上最高額に近いが、選手の希望はその2倍!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
カルロス・コレイア(左)とアレックス・ロドリゲス 29 Oct 2021(写真:REX/アフロ)

 ヒューストン・アストロズは、球団からFAになったカルロス・コレイアに、5年1億6000万ドルの契約を提示したらしい。FOX26ヒューストンのマーク・バーマンらが、そう報じている。

 コレイアは、27歳の遊撃手だ。2015年にメジャーデビューし、ここまでの7シーズンに、打率.277と出塁率.356、133本塁打と33盗塁、OPS.837を記録した。守備も優れ、今シーズンはゴールドグラブを初受賞。内野陣の要として、マウンドで投手と捕手が話し合う際には、コレイアも加わることが多い。今オフのFA市場では、他のポジションの選手を含め、コレイアとコリー・シーガーがトップ2だろう。シーガーも、27歳の遊撃手だ。

 これまで、コレイアと二遊間デュオを組んできたホゼ・アルトゥーベは、アストロズと7年1億6350万ドル(2018~24年)の契約を交わしている。これは、球団史上最高の総額だ。報道のとおりだとすれば、今回、アストロズがコレイアに提示した契約の総額は、アルトゥーベの契約とほとんど変わらない。

 また、アルトゥーベの契約の年平均額は、単純に割ると約2336万ドルだ。最初の2シーズンの年俸、2018年の600万ドルと2019年の650万ドルは、その前の4年1250万ドル(2014~17年)についていた球団オプションと同額なので、アストロズがそれを行使し、さらに5年1億5100万ドル(2020~24年)をプラスしたと看做すと、2020年以降の5シーズンの平均額は3020万ドルとなる。どちらにしても、コレイアが提示されている契約が上回る。こちらは、年平均3200万ドルだ。

 だが、コレイアは、この申し出を断るだろう。

 昨オフ、クリーブランド・インディアンズからニューヨーク・メッツへトレードされたフランシスコ・リンドーアは、開幕直後にメッツと10年3億4100万ドル(2022~31年)の延長契約を交わした。リンドーアとコレイアは、どちらもプエルトリコ出身の遊撃手だ。それぞれ、1993年11月と1994年9月に生まれ、ドラフト指名は、2011年の全体8位と2012年の全体1位。2人とも、2015年6月にメジャーデビューした。リンドーアの通算成績は、打率.278と出塁率.343、158本塁打と109盗塁、OPS.821だ。ゴールドグラブは2度受賞している。

 コレイアの出場752試合はリンドーアより150試合少なく――年平均は107.4試合と128.9試合――コレイアにはリンドーアほどのスピードもないが、パワーは遜色ない。ISO(長打率-打率)とホームランのペースは、コレイアが.204と21.2打数/本、リンドーアは.200と22.7打数/本だ。四球率は10.8%と8.5%。ほぼ同じ打率ながら、この違いが出塁率の差を生んでいる。

 コレイアが望んでいるのは、リンドーアに近い、10年3億ドル前後の契約だと思われる。そこまでいかなくても、総額2億ドル以上が最低条件ではないだろうか。

 メッツにはリンドーアがいて、シーガーがFAになったロサンゼルス・ドジャースは、夏にワシントン・ナショナルズからトレイ・ターナーを獲得している。移籍後、ターナーは二塁を守ったが、本来のポジションは遊撃だ。それでも、遊撃手を欲している球団はいくつかある、一例を挙げると、ニューヨーク・ヤンキースがそうだ。遊撃を守っていたグレイバー・トーレスは、攻守とも振るわず、シーズン終盤に二塁へ回された。今後、アストロズが上乗せした契約を提示する可能性も、皆無ではない。

 なお、コレイアをはじめ、それまで在籍していた球団にクオリファイング・オファーを申し出られたFAは14人。そのリストは、こちらに掲載した。

「イグレシアスはエンジェルスからのクオリファイング・オファーを受け入れるのか。今オフのQOは14人」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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