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令和の忍者・服部慎一郎四段(22)叡王戦で快進撃! 藤井聡太叡王(19)への挑戦権獲得まであと1勝!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月25日。東京・シャトーアメーバにおいて第7期叡王戦本戦準決勝▲船江恒平六段(34歳)-△服部慎一郎四段(22歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は16時17分に終局。結果は126手で服部四段の勝ちとなりました。

 服部四段はこれで挑戦者決定戦に進出。あと1勝で藤井聡太叡王(19歳、五冠)への挑戦権を獲得します。

 挑決では、明日26日におこなわれる佐藤天彦九段-出口若武五段戦の勝者と対戦します。

服部四段、辛抱実らせ逆転勝ち

 今期段位別予選。六段からは2人本戦に進出できます。船江六段は六段戦Bを勝ち抜きました。

 服部四段は四段戦(本戦進出1人)を突破しています。

 本戦では、船江六段は佐々木大地六段と近藤誠也七段に勝利。服部四段は八代弥七段、豊島将之九段に勝ってベスト4に進んでいます。

 準決勝に進んだ4人のうち、佐藤天彦九段をのぞく3人はタイトル挑戦未経験。また誰が挑戦しても、タイトル戦番勝負の場で藤井叡王と戦うのは初めてです。

 本局は振り駒の結果、先手は船江六段。戦型は矢倉となりました。

 船江六段は序盤から銀2枚を中段に繰り出して積極的に動いていきます。2回の銀交換がおこなわれ、それぞれの駒台に銀が2枚ずつ乗りました。

 49手目、船江六段が服部陣に銀を打ち込んだところで昼食休憩に入りました。

 再開後、服部四段は辛抱の順を選びます。船江六段が2枚目の銀を相手陣に打ち込み、懸案だった自陣の垂れ歩を味よく払ったところでは、形勢は船江六段よしでした。しかし具体的に差を広げていくのは大変だったようです。

船江「さすがに優勢やろうけど、わからへんからな」

 服部四段の辛抱が功を奏して、形勢はいつしか不明に。服部四段は船江陣をにらむ好位置に角を転換し、一気に反撃に出ました。

船江「こんなサクッと寄せられるとは思わんかったからな」

 局後に船江六段がそう嘆いたように、服部四段は華麗に駒を捨て、あっという間に寄せ形を築いていきます。

 最終盤、船江玉は上部に逃げ出して形勢はあやしくなったかとも思われました。しかし104手目、盤上中央に飛車を浮いたのが船江玉の死命を制する決め手となりました。

船江「なるほどなあ、△5五飛車か。そんなええ手があったんか」

 船江六段は駒を取られながら、服部陣に入玉。最後は最奥一段目にまで達します。しかし服部四段はノータイムの連続で指し進め、服部玉を即詰みに打ち取りました。

 服部四段は2020年4月に四段デビューした、将棋界の新鋭です。

 2021年度は加古川青流戦でも優勝。そして全棋士参加のタイトル戦で、挑戦者決定戦進出を果たしました。

 過去に四段の立場で挑戦権を獲得した棋士は屋敷伸之現九段、郷田真隆現九段(2回)、本田奎現五段の3人しかいません。

 もし服部四段が挑戦権を獲得すれば、規定により五段に昇段します。

 服部四段は先日、順位戦で昇級昇段を逃したばかりでした。

 叡王戦準決勝のもう一局、佐藤天彦九段-出口若武五段戦は3月26日におこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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