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「アイロンヘッド」が見据える未来とそのための研鑽

中西正男芸能記者
「アイロンヘッド」の辻井亮平さん(左)とナポリさん

2007年にコンビを結成し、16年に大阪から東京に拠点を移した「アイロンヘッド」。東京・ヨシモト∞ホールの看板芸人「ムゲンダイレギュラー」にも選ばれ、ネタの完成度には定評がありますが、今年になって新機軸として二つのライブをスタートさせました。ナポリさん(39)と辻井亮平さん(39)が語る新ライブの狙いと見据える今後とは。

二つの新ライブ

辻井:4月から新たなイベントを始めたんです。尊敬する先輩方と僕たちの二組でがっちりとライブをやる「パートナーシップライブ」というものでして。

4月の初回は「見取り図」さんに来ていただき、今月開催する第二回は「銀シャリ」さんに来ていただきます。

これは僕個人のことでもあるんですけど、後輩と一緒にやるのは得意なんです。ただ、先輩とやらせていただく時に気になっていることがありまして。先輩が苦手ということではないんですけど、なかなか打ち解けてもらえないというか(笑)。

後輩に対しては僕もガンガンいったりするので、向こうも思い切ってこちらに来てくれるんです。僕がギターを弾いたり、いろいろやっていることに対しても、しっかり切り込んでイジってくれるんです。そのほうが僕もやりやすいというか「なんでそこまで言われなアカンねん!」と返しやすいんですけど、多くの先輩方は「器用やな」「すごいな」と純粋にほめてくださって。

もちろん、それはうれしいんです。ありがたいことなんです。でも、そう言われる「ありがとうございます」としか言えない(笑)。僕も自分で言うのもアレですけど、礼儀はきちんとやっているとは思うので、先輩もそこを踏まえてやさしく接してくださる。

ただ、それがお笑い的にはいろいろと不具合も生むというか、そこに笑いが生まれにくい。もっとガンガン来ていただけるようにするのはこちらの打ち出し方もあるだろうと思って、今回自分の説明というわけでもないんですけど、そういう場を作るという意味で、先輩とのイベントを始めることにしたんです。

大阪時代からお世話になってきた「笑い飯」の哲夫さんも、当初「哲夫は頭いいなぁ」とか「まじめでしっかりしてるなぁ」と先輩方から誉められて、そのたびに「そんなことないですよ。いつも道にツバを吐き散らしながら歩いてますから」とか返してらっしゃったなと。

そうやって、自分の属性みたいなことを自分から言っていくことも大切なんだなと思って、このライブを始めたという部分もありますね。

ナポリ:相方から見ても、器用な人やと思いますし、音楽も、お笑いもいろいろと幅広くできるタイプだと思います。だからこそ、それが「すごいな」という評価になるのも分かるんですけど、そうなると“できるところ”ばかりをフィーチャーされて“できない”ところをあまり見られない。

本当はそこをイジってもらうほうが良いのかもしれませんけど、器用だからこそ評価が「すごい」に集約されてしまう。それはあるのだろうなと思います。

辻井:僕自身もきちんと礼儀正しくするのが染み付いているので、なかなか難しいのかもしれませんけど、多少怒られるくらいの意識で飛び込んでみようとも思うようになりました。

ナポリ:あと、もう一つ、新ネタのコントライブも2月からスタートさせてまして。新型コロナ禍の中で僕が作りためたネタが40本くらいあって、そこを出していって使える強いネタの数を増やしていく。こちらのライブでは自分たちの自力というか、そこを高める狙いを持っています。

先輩方とのライブが横のつながりを強化する狙いだとしたら、こちらは自分たちの高さを上げるためのライブ。そうやって、パワーアップがはかれればとは思っています。

辻井:やっぱりこの世界は本当に楽しいし、できれば長く続けていきたい。そう思った時に、サボれないなとも強く思います。

この前も「西川のりお・上方よしお」師匠と劇場でご一緒したんです。若いお客さんが多い中で、のりお師匠が「僕らのこと知ってる人はいますか?」とお客さんに手を挙げてもらうことをされていて、そこから「じゃ、ぼんちおさむを知ってる人はいますか?」と尋ねられたんです。多くの人が手を挙げたのを見て「おーい、おさむ!お前のこと知ってる人、東京でもたくさんおったぞ!」と大阪の方向に向かって叫んでらっしゃった。

なんというか、大ベテラン同士のはしゃぎというか、エエ歳したおっちゃんのそういう関係性は本当に素敵なものだと思いますし、そういったところを舞台で出してお客さんが喜んでくださる。そんな領域になるまでこの仕事を続けられれば最高ですし、なんとかそこを目指して積み重ねをしていきたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■アイロンヘッド

1985年2月1日生まれで兵庫県出身の辻井亮平と85年1月10日生まれで大阪府出身のナポリ(本名・毛利雅俊)が2007年コンビ結成。吉本興業所属。NSC大阪校30期生。16年に拠点を大阪から東京に移す。21年から東京・ヨシモト∞ホールの看板芸人「ムゲンダイレギュラー」として活動中。NHK新人お笑い大賞を受賞。6月17日にはゲストに「銀シャリ」を迎えて東京・ヨシモト∞ホールで「アイロンヘッドのパートナーシップライブ」を開催。また、7月28日にも同所で「アイロンヘッドナポリ作・演出公演 アイロンヘッド新作コントライブ『電脳ナポリ』」を行う。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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