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第18エンド「ミックスダブルス日本選手権開幕直前、4人制とは異なる見どころと有力チーム紹介」

竹田聡一郎スポーツライター
15年の4人制日本選手権。4REALのこの3人が今回、異なる色のストーンを持つ。

さて、明日から「第10回 全農 日本ミックスダブルスカーリング選手権大会」が開幕する。大会展望と有力チームを紹介していきたい。

まずはやはり、前回王者のチーム札幌(蒔苗匠馬/まかなえたくま・荒木絵理ペア/前年は北海道大学として出場)だろうか。JCA主催の直前強化合宿内の練習試合で、チーム阿部(阿部晋也・小笠原歩)のラスボスペアから連続スティールを奪うなど仕上がりは上々。連覇を狙い、一気に五輪候補内定を決めたいところだ。

しかし、「前回王者より安定感という点では上回る」と選手間で囁かれているペアが過去4度の優勝を誇る苫米地(賢司・美智子)夫婦ペアだ。特に第1回(当時は妻美智子は旧姓・平として出場)決勝では、敦賀信人と小笠原歩という男女のパイオニアコンビを破って初代王者となっている。

小笠原と苫米地美智子はご存知、北海道銀行のメンバーとしてソチ五輪を共に戦った。元々はミックスで結果を出している苫米地に小笠原が「一緒にやろう」と声をかけたのがきっかけだ。ソチから3年が経つが現在でも交友は密で、筋トレなどで身体のサイズが大きくなってしまった服を「ほとんど、べちこ(苫米地)にあげています」(小笠原)といったエピソードもある。4人制という舞台では小笠原に引っ張ってもらった苫米地だが、ミックスダブルスのキャリアは苫米地のほうが圧倒的に長い。夫・賢司とアイス上に並び立つ姿は、小笠原が「カーママ」と呼ばれるのなら、苫米地は「カー妻」といったところか。今度はミックスダブルスというホームで小笠原を迎える。チーム阿部とチーム苫米地はブロックが違うので両者の邂逅は準決勝以降だ。アイス上で再会なるか、注目だ。

その苫米地夫妻の初戦の相手は破壊的ともいえるスイープ力をたたえるチーム谷田(谷田康真・小野寺佳歩)だ。例えば、同じウェイトのドローをどれだけ伸ばせるか、というシンプルなスイープ勝負があったら男女それぞれで国内最高記録を出すであろうペアで、谷田は22歳、小野寺は25歳と強化推薦3チームでもっとも若い。一次リーグ7戦を消化した後の準決勝、決勝への持久力という意味でも大きなアドバンテージとなるだろう。両選手ともその高い身体能力を活かした早いウェイトで局面を打開できる強みも持つ。得点を奪う4人制でいうところのスキップショットを小野寺がしっかり沈めれば、ファイナルの舞台に立っている公算が高い。

そのチーム谷田を警戒しつつ、「バランスと総合力で勝負したい」と語るのがチーム松村(松村雄太・吉村紗也香)だ。松村も吉村もジュニア時代からスキップを経験してきた選手で、それぞれスキップとして日本選手権で表彰台(吉村は準優勝、松村は3位)にも乗っている。松村が「ラストドローをしっかり決めてくれる。ミスが少ないので頼もしい」と吉村に信頼を寄せるように、デリバリーの技術、スイープ力、戦術選択など、すべての面で穴がない。淡々といつも通りのパフォーマンスし続けていたらいつの間にか頂点に立っていた、という展開も十分にあり得るコンビだ。

ここまで紹介した4チームはどれも優勝候補であり、どこが勝ってもおかしくない。それでも、その4チームが嫌でも意識せざるを得ないのが、チーム阿部だろう。国内最高のスキップが組んだペアだけに「投げ勝つ」という言葉がピッタリと当てはまるほか、国際経験、デリバリー技術、アイスリーディングetc……。日本トップどころか世界でもあるいは、と思わせる夢のタッグだ。

不安要素はないわけではない。長丁場でのスイープの持続力であったり、いわゆる“やらかし”と呼ばれるショットのムラも挙げられる。それでも「スイープなんか関係なくビタビタと決められたら勝てないですね」(松村)「勝ち方を知っているふたりが組むんだからそりゃ強いっすよ」(谷田)と両若手が最大限の畏怖の念を抱くペアだ。しっかりとピーキングしてくれば盤石な強さで圧勝するとも思えるし、予選リーグから取りこぼしを見せてあっさり敗退するという可能性もないとはいえない。本命であってダークホース。いずれにしてもその存在感も強さのうちだ。ミックスの勝ち方さえ掴めば間違いなくトーナメントに進出してくるだろう。

まずはAとB、8チームずつで総当たり予選リーグ7試合を戦う。上位2チームがA1位とB2位、B1位とA2位による準決勝位に進むが、Aブロックは「死の組」と呼べる激戦となってしまった。前年度優勝のチーム札幌に加え、3位の札幌国際大学(宿谷涼太郎・宿谷奈苗)、前述のチーム苫米地や推薦枠の谷田と松村もここに入った。

BブロックはAよりも比較的、勝ち抜くのは容易かもしれないが、それでも前回準優勝のチーム青木(青木豪 ・藤井春香)、優勝経験のあるタケダ(竹田直将・竹田智子)ら曲者ペアが揃う。チーム阿部としては初戦を含む序盤でしっかり勝って、勝利のパターンと決勝までの道筋を掴みたいところだ。

また、この強化推薦の3ペアは、1、5投目を女子が、2-4投を男子が担当するようだ。ファーストストーンを投げる小笠原やセットアップを担う阿部の姿、勝負を決める小野寺のラストロックなど4人制では観ることのできなかった場面も見どころのひとつだろう。

さらに現在のミックスダブルスは世界的にもドローの場合はハウスに人を立たせないのが主流らしい。国内では投げた選手が自分の石をスイープして、もう一方の選手の元へ運ぶ、というチームも多いが、推薦3ペアは「ドローくらいブラシなくても投げられる」と、世界に倣ってテイク以外はハウス内を留守にすることになりそうだ。無人のハウスに向かって投げる光景もミックスならでは。新しいカーリングの楽しみ方を発見する5日間になりそうだ。

スポーツライター

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。 カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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