韓国の大統領はなぜこうなるのか?
朴槿恵大統領が断崖絶壁に立たされている。
「友人」とされる崔順実容疑者や部下である大統領秘書官らの不祥事によって混乱を招いたことについて2度に亘って国民に謝罪したにもかかわらず、事態を収拾できないどころか、むしろ火に油を注ぐ結果となり、大統領への国民の怒りは土曜の10万単位の大規模デモに発展した。このままでは任期途中で辞任した初の大統領として汚名を残すかもしれない。
(参考資料:「崔順実逮捕」で収拾か?エスカレートか?「朴大統領スキャンダル」の行方)
韓国の大統領は任期が終わり、大統領府を去った時に権力を振るって好き勝手にやったことのツケを払う。その結果が、毎回のように繰り返される大統領とその親族、そして側近らの収賄、不正蓄財、権力乱用といったスキャンダルとして表に出てくる。
韓国の大統領制は、国を率いる人間を成人した国民が直接一票を投じて選ぶというシンプルなものである。リーダーに権限を与える代わりに、その権力を国民に返した時にはその5年間を清算しなければならない。自分とその家族、親族や側近らがやったことまでひっくるめて責任を追及される。良くも悪くも、このシステムが韓国人のメンタリティに合っているようだ。
今回もそうだが、韓国の大統領中心制のデミリットは本人の周辺でスキャンダルが起きることだ。大統領及びその側近、親族らを監視するシステムがないからだ。極端に言えば、ブレーキがない。本来ならば、国務総理がそれにあたるのかもしれないが、韓国の総理にはその権限がないのが現状だ。
米国の大統領の任期4年に比べて、韓国は1年長い5年。任期5年というのは韓国という国にとって長すぎるかもしれない。所属する党が4年に一度、総選挙という洗礼にさらされるものの、自身の選挙は5年間一度もないからだ。緊張感が徐々に薄れていくのは当然だろう。しかも、5年の任期が終われば、再選はない。憲法で禁じられているからだ。つまり2期目のことを考える必要はない。
考えようによっては、5年の間にやりたい放題のことをやっておけという心境になるのかもしれない。デモで倒され、クーデターで追放され、あるいは投獄され、さらには自殺に追い込まれた歴代大統領の歩んだ道を遡っていけば、退任後の自分の姿が見えてきそうなものだが、大統領就任時は、誰もが自分は決してそうはならないと思っている。
(参考資料:朴大統領の運命はどうなる!悲惨な末路を辿った韓国の歴代大統領)
手にした権力の大きさを考えれば、韓国の大統領は北朝鮮の金正恩委員長同様に独裁者と言っても過言ではない。法案の拒否権、軍の統帥権、大法院長(最高裁判所長官)や検察総長などの任命権のほかに政府、軍、官公庁などの人事(約7千人)まで握っている。また、憲法改正の提案権から宣戦布告、戒厳令の布告もできるし、在任中に罪を犯しても、免責される。大統領が任期中にやったことを司法が問うことはできない。退任を待つほかない。裏を返せば、独裁的な権力故に任期5年、再選なしという制度で最高権力者を縛っているともいえる。
このように韓国の大統領は、在任中は絶対的な権力を持つが、一旦その座を明け渡せば、厳しく裁かれるのが常だ。現に、韓国の歴代大統領は亡命、暗殺、死刑宣告、自殺、無期懲役、身内のスキャンダルなど決まって憐れな末路を辿っている。これほど光と影のコントラストがくっきりとわかれる権力者ばかりが続く国はそう多くないだろう。残念ながら、朴大統領もこの韓国の悪しき伝統を継承することになりそうだ。