非電化駅なのになぜ架線が!? 吉都線 谷頭駅(宮崎県都城市山田町)
電車が走行に必要な電気を採るための「架線」。電気ではなくディーゼルエンジンで走行するディーゼルカーしか走らない「非電化路線」には本来不要なものなのだ。だが、吉都線の谷頭駅には非電化路線の駅にも関わらず架線が張られている。
谷頭(たにがしら)駅は宮崎県都城市にある駅だ。非電化のローカル線・吉都線の駅で、ホームは島式1面2線。列車の本数は下り9本、上り8本と少ないが、時間帯によっては上下列車の行き違いが見られる。
架線が張られているのは上り都城方面の列車が発着する2番線の外側だ。列車が給電するには線路から離れすぎているし、駅構内の数十メートルの間に張られているだけで、前後との繋がりもない。「なぜ、こんなところに?」と思うような光景だが、実はこの架線、電気が流れない訓練用なのだ。架線の整備や点検を行う技術社員が訓練をする際に、本物の架線が張られている電化区間で行うと、感電事故が起きる恐れがある。そのような事故を防ぐために、敢えて非電化区間の駅に設置されているのだ。
さて、せっかくなので架線以外も見ていこう。谷頭駅のホームは幅が広く立派なもので、一日に65人ほどしか利用しないローカル駅には分不相応に見える。実はこの立派な設備、吉都線の歴史によるものだ。大正2年10月8日、谷頭~都城間を最後に全通した吉都線は当初「宮崎線」という路線で、吉松で鹿児島本線(現:肥薩線)から分岐して宮崎に至る幹線だった。線名はその後、「宮崎本線」となり、小倉方面と繋がって「日豊本線」の一部となった。昭和7(1932)年12月6日に日豊本線の現ルート(都城~国分~隼人)が開通するまでは宮崎と他県を結ぶ重要な幹線だったのだ。幹線として開業した経緯から吉都線の駅設備はローカル線にしては立派なものが多い。
駅舎は宮崎・鹿児島を中心とした九州南部ではよく見られるタイプのものだ。吉都線では他に日向庄内、万ケ塚、日向前田、西小林も同型の兄弟駅舎が建てられている。谷頭駅は平成18(2006)年1月1日の合併で都城市となった旧:北諸県郡山田町の玄関口で、駅周辺は明治の町村制で山田村が成立するまで北諸県郡中霧島村だったところだ。駅前には店も何軒かあり、小さいながらも街が形成されている。
駅前には人気の老舗ラーメン店「ラーメンタンポポ」がある。吉都線は昼間の本数が少ないので、列車で食べに来る人はあまりいないだろうが、谷頭駅に降りる機会があるならおススメのラーメンだ。