ノート(18) 改めて正式な新入調査を行い、勾留質問のために裁判所へ
~逡巡編(3)
勾留初日(続)
点検
突然、壁のスピーカーから軽快なマーチ風の音楽が流れ、ほぼ同じタイミングで航空機の爆音が響いた。室内に時計はなかったが、起床時間だと分かり、「所内生活のしおり」に書かれている手順で布団をたたみ、所定の位置に置いた。
すぐに「点検」ということになっていたので、顔を洗って歯を磨き、枕をくるんでいたドブネズミ色の舎防着(しゃぼうぎ)を着て身支度を整え、板敷きの手前あたりで監視窓に向かって座った。
あぐらをかく安座でもよいということだったが、背筋をピンと伸ばし、正座して黙想し、刑務官を待った。点検とは、刑務官がペアを組み、手もとの名簿と照らし合わせながら、「1室、1名」「2室、1名」「3室、空室」などと言って、順に在室状況を確認していくというものだ。
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