ノート(17) 常識が通用しない拘置所における知られざる独自のルールとは
~逡巡編(2)
勾留初日(続)
所内生活のしおり
いつの間にか夜が明け、室内に外光が差し込んできた。築50年超と老朽化しているからか、真っ白だと思っていた部屋を取り囲むコンクリートの壁が、実際にはかなりくすんでおり、やや灰色がかっていることが分かった。
ところどころに黒いシミや血でこすったような跡もあったし、何を意味しているのか、目立たない隅のところに鉛筆で象形文字のような記号がいくつか書かれていた。畳と壁の隙間や畳同士の隙間には、ほこりや砂、チリ紙の破片、髪の毛などがビッシリと詰まっていた。
――これまで一体、何人の人間がここに収容されてきたのだろう。彼らはどのような思いで日々を過ごし、どうやって正気を保ってきたのだろう。
そうしたことを考えるうち、ふと壁際の脱衣カゴを見ると、中にA4サイズの冊子が入っているのに気づいた。
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