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休館中の人気施設が外遊び支援に「青空おもちゃ美術館」・うち遊び動画も

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
新型コロナの影響で休校になり、学童保育の子どもたちもストレスを感じている(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、突然の休校になって2週間以上たつ。学童保育や保育園は継続で、自由に動けない子どもたちのストレスがたまり、朝早くから夜まで働く先生たちも疲弊している。「東京おもちゃ美術館」は、自粛要請を受け休館中だが、「おうち遊び」の動画を撮影し、毎日、配信してきた。さらに、近所の子どもたちを少人数ずつ招き、おもちゃ作りと外遊びの機会を提供する試みを始めた。18日に開かれた「青空学童保育」を取材した。

〇年14万人超の人気施設も休館

NPO「芸術と遊び創造協会」が運営する東京おもちゃ美術館は、学校の旧校舎を利用した施設「四谷ひろば」内にある。11の教室に国内外の伝統的なおもちゃ、木の玩具があり、赤ちゃん連れが楽しめる木の広場もある。

おもちゃ美術館は、年間14万人が訪れる人気のスポット。自粛要請に基づき、3月3日から休館している。このような長い休館は初めてで、いつもにぎわう館内は人がいなくて寂しい。休校を受け、「おうちにこもっていたら、親も子もストレスがたまる。自宅に届ける遊びを」とスタッフの意見が一致し、関連サイトで「3分でわかるおうち遊びシリーズ」の動画公開を始めた。

「おもちゃコンサルタント」の資格を持つスタッフらが、タオル・折り紙・洗濯ばさみ・紙コップ・割りばしなど、自宅にあるものを使ったおもちゃの作り方や、言葉遊び・手遊び・お絵描き・歌を紹介している。

動画は今回のために撮影したもの。東日本大震災後にも、動画やPDFの形で、遊び方を配信したが、さらにブラッシュアップした。撮影法も試行錯誤して、スマートホンでは手ぶれしたため、三脚にデジタルカメラを使っている。毎日、更新され、18日で24本になった。まだまだ、アイデアはあり、続ける予定という。フェイスブックでシェアされ、広がっている。

牛乳パックとストローで作る紙とんぼ。おもちゃ美術館のスタッフが教えてくれる なかのかおり撮影
牛乳パックとストローで作る紙とんぼ。おもちゃ美術館のスタッフが教えてくれる なかのかおり撮影

〇おもちゃ作り・校庭遊びを少人数で

休校後、子どもたちの遊ぶ場がなく、運動不足やストレスが問題になっている。場所によっては学校のグラウンドが使える学童保育や、校庭開放をしている学校もあるが、狭い学童保育や保育園も多い。

おもちゃ美術館の花房佳奈さんによると、休館中の遊び支援として、自宅に届ける動画の次に、招く支援を考えた。おもちゃ美術館のある四谷ひろばは、もともと学校だったので、広い校庭や教室がある。そこの空き時間を調整して使えるようにしてもらった。校庭遊びとおもちゃ作りを組み合わせて提供したいと、電車に乗らずに徒歩で来られる近所の学童保育や保育園に連絡して、利用を呼びかけた。遊ぶ場は魅力的だけれど、外部との接触や外出に慎重にならざるを得ないという反応もあった。

最大20人の少人数で、他の団体と接触しないようにした。天気も良い17・18日の2日間、ある公設学童保育から小学生がやってきた。18日は1年生6人が参加。事前に検温してきて、マスク・手の消毒をした。広い教室で2つの机に分かれ、牛乳パックとストローで、紙トンボを作った。美術館スタッフのサポートを受け、マジックで思い思いに色をつけた。もう一種類、割りばしを使ったおもちゃを作った。

1時間ほどすると、作ったおもちゃを持って校庭へ。紙とんぼを飛ばし、のびのびと遊んでいた。プライバシーを守るため、写真撮影やインタビューは遠慮したが、子どもも、学童保育の先生も、心が少し解放される時間だったのではないかと思う。美術館は3月中、同様に少人数での利用を呼びかけるという。

おもちゃ美術館が入る四谷ひろばには、広いグラウンドがある なかのかおり撮影
おもちゃ美術館が入る四谷ひろばには、広いグラウンドがある なかのかおり撮影

〇地域の資源を生かした支援

おもちゃは、家族間だけでなく、地域の人・多世代・多様な人たちとの交流のきっかけになる。筆者は、医療のケアが必要な子たちが美術館をゆっくり利用できる「スマイルデー」を取材したことがある。ふだんは外出がままならない親子が、美術館スタッフのサポートを受けて、笑顔になっていた。日ごろから、そうした居場所と、つながりがあれば、非常時にも、安心できるのではないかと思う。

今、イベントや施設オープンの自粛で行き場や仕事がなくなり、休校で食事や居場所に困る人があふれている。そして人と支え合いたくても、接触は好ましくないという、経験したことがない状況にある。そんな中でも、地域の人たちが立ち上がり、お弁当の提供・給食用食材の配布、ゴルフ場・サッカーフィールド・校庭開放などが、各地で広がっている。持っている資源や、地域とのつながりを生かし、うち遊び・外遊び双方の支援をするおもちゃ美術館の試みは、参考になる。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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