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昨年から激増!代引きによる偽物被害が止まらない。その注文は大丈夫?鎌倉シャツをかたる偽サイトも現れた

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
国民生活センターからの相談件数をもとにグラフ化(2021年9月末現在)

大手のSNSなどに出てきた広告から誘導された、偽の通販サイトで商品の注文をしてしまい、被害に遭うケースが昨年から増えてきています。これまでよく見られていたクレジットカード情報を盗み取り、商品を送らない手口に加えて、代金引換を使って偽物を送り付けて、お金をだまし取ろうとするものが出てきています。

国民生活センターに寄せられた、インターネット通販から注文して、代引きにて偽物が配達されたという相談件数は、2019年871件だったものが、20年には2485件と約2.85倍にも跳ね上がっています。これは、激増といってよい衝撃的な数字です。

21年に入っても9月末日現在、994件と、前年同期の841件よりも多くなっていて、さらに被害は増える恐れがあります。コロナ禍でネット注文する人たちを狙って、詐欺業者らが偽サイトを立ち上げて、代金引換の手口でだまそうとしているとみて間違いないでしょう。

今年10月に、同センターに寄せられた相談には次のようなものがあります。

40代の女性は、SNSの広告を見て、デパートのバーゲンだと思い、海外ブランドの15000円の財布を代引きで注文した。しかしそれが嘘だと分かったので、キャンセルをしようと思い、業者のメールに連絡をしたけれども返信がない。

50代の男性は、ネット通販でブランドのダウンジャケットを注文して、代引きで支払い受け取ったが、商品が明らかに偽物だった。サイトには到着後1週間は返品可能というふうに書かれていたのを思い出して、メールを送信したが、いまだに返信が来ていない。

代金引換を使い、ネット注文させる手口については、「高島屋をかたる偽サイトに要注意!SNS広告をクリックすると、カード情報詐取ではない意外な手口が!?」の記事にて、実際にクリックすることでその実態を明らかにしてきましたが、また新たな偽サイトの存在が明らかになりました。

鎌倉シャツをかたる偽サイトが登場、著名人を使って信じさせる

新たに有名ブランドである鎌倉シャツをかたる偽サイトが現れていることがわかりました。寄せられた情報をもとにサイトにアセスしてみます。

SNS上に出てきた鎌倉シャツをかたる偽通販サイト
SNS上に出てきた鎌倉シャツをかたる偽通販サイト

鎌倉のデニムシャツと書かれた広告が出てきます。しかも「2点目無料」の大きな文字が躍っています。

「去年大ヒットのメンズデニムシャツ、(中略)コーデしやすくてカジュアルシーンにも、フォーマルシーンにも大活躍の1枚!在庫処分セールで2点なんと5,680円!数量限定で早い者勝ち!」

この広告をクリックすると、見覚えのある、大手アパレルメーカーの有名会長の動画が出てきます。会長は「着心地がものすごくよい。非常に良い商品を売っている」と、鎌倉シャツのすばらしさを話しています。

偽サイトに出てきた最初の画面
偽サイトに出てきた最初の画面

さらに下にスクロールしていくと、通常販売価格11,360円に線が引かれて、半額の5,680円になっています。さらに、購入者の声も寄せられています。

「主人にプレゼントで購入しました。デザインもストレッチが効いてて着やすい所も気に入ってくれました」「大変いい商品です。(中略)着心地もよく、見た目も安っぽさを感じなかったです。色違いも購入したいです。ありがとうございました。」と星4~5つの高評価が並びます。

もしかすると、有名会長がお薦めしている商品で、高評価が並び、しかも手頃な価格で安いのならと、購入を決断する人もいるかもしれません。

しかし、ちょっと待ってください。

ここには、偽サイトによくありがちな、定価に:線を引いて値引きされた激安価格が表示されているからです。

次に偽サイトかどうかを見抜く大事なポイントである、会社の住所を見てみます。サイトには「特定商取引法の表示」があるのでクリックしてみましたが、住所や電話番号の表記はなく、そこにあるのはメールアドレスのみです。法律にのっとった表示はされていません。

画面上をみると、チャットで問い合わせもできるようなので、アクセスしてみましたが、メールアドレスを記入して、その後、返信がある形になっています。これはどうみても、チャット機能ではありません。これでは、もし購入者がトラブルに遭った時に、注文キャンセル、返品などのメールを送っても無視されて、連絡がとれなくなる可能性があり、かなり危険だといえます。

デニムシャツの購入手続き画面に進んでみると

色やM・L・XLなどのサイズを選べるようになっています。金額は1点目(5,680円)とあり、2着目の購入は必須なようで、合計で11,360円になっています。と、ここでも定価から5,680円が値引かれています。480円の手数料込で合計金額は6,160円です。

その下には、名前、住所、携帯番号を記入するところがあり、やはりここでも、代金引換しか選択できないようになっています。

注文は代引きのみの選択になっている画面
注文は代引きのみの選択になっている画面

問い合わせをして聞いてみました

ここは、ほぼ偽サイトだと考えられますが、その真偽を確かめるために「メーカーズシャツ鎌倉株式会社」(神奈川県鎌倉市)に問い合わせをして、話を聞いてみました。

広報担当者によると「弊社でも偽サイトの存在は把握しており、問題のサイトでは、以前に当社の特集をしたテレビ番組に出演してくださった会長のコメントを勝手に出して、宣伝・販売しています」とのことでした。

まさに、筆者が見た動画はそれです。

著名人の言葉は購入者に大きな信頼を与えます。おそらくこれを見て、メーカーズシャツ鎌倉のお墨付きを得ている通販サイトと思わせられた方も多いことでしょう。

「このサイトから購入したお客様からは『購入の注文をしたけれど連絡がない』などのお問い合わせメールや電話が当社の店舗などに様々にきています」

いつ位から、こうした被害の報告があるのかを尋ねると、9月頭くらいから問い合わせが寄せられているとのことです。

「全く違う商品や偽ブランド品が送られてきて、金銭的被害を受けた方の報告はあるのでしょうか?」と尋ねると「実際にそういったものも頂戴しています。『粗悪品だった』との声が寄せられています」

SNSには、偽物をつかまされた怨嗟の声が続々

実際にSNS上でも、鎌倉シャツをかたる偽サイトから購入してまい被害にあった人たちからの投稿も多くみられます。

被害の声を抜粋すると「全部のボタンがほつれてます」「糸の切り忘れみたいなのが10箇所」「生地はペラペラほんとに最悪な品物」「詐欺のような商品ですね」「糸ほつれもすごい」など、送られてきた商品の写真をあげてのコメントがなされています。本当にみればみるほど、粗悪な商品でこれで6000円近くもするとはひどい話です。

同社の公式HPでも「偽サイトにご注意下さい」と題して「弊社の画像・商品説明文を使い、あたかも当社の製品に販売しているかのように営業している、偽サイトが開設されていることが判明いたしました。(※当社および当社関係会社とは一切関係がありません)」との注意を促しています。

こうして話を伺ううちにも「先ほども、本件について問い合わせの電話が弊社に入りました」といいます。

このケースでは「クレジットカードで購入の手続きをした瞬間に画面が消えて、音信不通になってしまった。そこで弊社に電話をした」とのことです。代金引換の手口だけでなく、以前からのクレジットカード情報を抜き取る手口も混在して起きていることがわかります。

この手の偽サイトでは、公式販売サイトの画像などを勝手に転用しており、公式サイト側が、詐欺的広告をいくら削除させても、次々に現れてくるので、なかなか被害を食い止めることができません。

それゆえ、利用者の方にブランドをかたった偽サイトがあることを広く知ってもらい、それにより身を守ってもらうより他に術がないのが現状です。

ぜひとも、今、鎌倉シャツや大手百貨店の偽サイトがはびこっていることを知って注意をお願いします。

もう筆者のSNSに出てくるのは偽サイトばかりに…

それにしても、本当に困るのは、筆者が調査のため何度もこの偽サイトを訪れたためでしょう。

偽サイトを利用するヘビーユーザーと判断されたのか、SNSの広告には、この偽サイトの広告ばかりが出てくるようになりました。つまり、一度、だまされた人がまた似たような別な広告が出てきてだまされることもあるということです。

今、筆者が見ているのは鎌倉シャツの偽サイトではなく、「【外付けSSD】大容量、高速伝送、耐衝撃、汎用性が高い。50%OFF」のメモリー装置の広告です。

鎌倉シャツをかたる偽サイトと同じ業者の広告
鎌倉シャツをかたる偽サイトと同じ業者の広告

値段は、偽の鎌倉シャツのサイトの時と、ほぼ同じ金額で、定価12,980円に線が引かれて、半額の6,490円になっています。画面には「999人がお気に入りに追加しました」とありますが、”そんな訳はないだろう!”と突っ込みを入れたくなります。すべて自作自演でしょう。ちなみに、こちらも代金引換しか選択できません。

次から次へと、表の商品の内容を変えただけの代金引換を使った偽サイト詐欺が出てきています。

昨年より、代金引換を使って偽物を送り付ける詐欺業者が、多くの人が知らないところで暗躍しており、表に出てきていない被害は相当数に上るのではないかと考えています。

今後も新たなブランドをかたる偽サイトが出てくる恐れがありますので、ぜひとも、偽物をつかまされないように、気をつけて頂ければと思います。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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