手漉き和紙が世界無形文化遺産に登録! その原料は?
11月27日、手漉き和紙が、ユネスコの世界無形文化遺産に登録認定された。
無形文化遺産は文化・芸能などの分野で認定されるが、日本では能や歌舞伎など、現在22件ある。昨年は「和食」が登録されて話題を読んだことは記憶に新しい。いずれも保護を目的としている。
登録が決まったのは、島根県の石州半紙、岐阜県の本美濃紙、埼玉県の細川紙の3種類。石州半紙は09年に遺産に登録済みだが、本美濃紙と細川紙を加える形で「和紙 日本の手漉和紙技術」として新たに文化庁が提案したものだ。この3種の和紙の保存団体は、いずれも国の重要無形文化財に指定されている。
和紙は、中国から伝わった紙から独自に進化したもので、その強靱さや独特の風合いを持つ。材料にコウゾやミツマタ、ガンピなど低木の樹皮繊維を使うのが特徴だ。また繊維の攪拌にトロロアオイの粘液を水に溶くのも日本独自の技術。
すでに版画や日本画の素材として重宝されるほか、文化財修復用に長期的柔軟性と耐久性,安定性を持つ高品質な和紙が欠かせない。また紙幣にも使われるのはよく知られているだろう。
もちろん、認定は喜ばしい。ただちょっと引っかかったのは、認定理由に「地域でコウゾの栽培を進めた」とあることだ。
ということは、3地域の和紙は、地元でコウゾ栽培をしているのだろうか。気になって調べてみると、石州半紙は地元島根の楮、本美濃紙は茨城県で栽培される那須楮、細川紙は地元産または四国産の楮を原料として使用しているそうだ。必ずしも地元とは言えないが、少なくても国産のコウゾを調達していることになる。
実は、これが驚きなのである。
国産のコウゾは生産量が激減しており、現在は全国で30トンくらいしか生産されていない。(そのほとんどが高知県産。)
私が訪れた某有名和紙産地では、コウゾもミツマタも、ほぼ全量が輸入ものだった。(経営者は国産を選んでいると言っていたが……。)中国産のほか、タイ産や最近では南米パラグアイ産も入ってきているという。しかし輸入品は品質的にはいま一つで、油分が多くて漉きにくいとか、靱皮を取り出す処理に化学薬品が使われることで繊維が劣化しているとか指摘されている。
それでは、和紙と言っても純粋の日本製とは言えないように感じてしまう。
いや、輸入でも本物のコウゾやミツマタを使っているのならまだよい。某手漉き職人に聞いた話だが、紙漉き産地によっては洋紙の原料である木質パルプや洋紙そのものの古紙を水に溶かして混ぜているところがあるというのだ。それも原料の半分以上だという。
こうなると、何が(日本の文化としての)和紙なのかわからなくなる。
できるものなら、材料の栽培技術や繊維に加工する工程、そして何より和紙の原料には本物の樹皮繊維、それも可能なかぎり国産を使うという心がけも「遺産」に認定してほしいものだ。