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ガソリン車廃止で、大通りに面したマンションが“大化け”する

櫻井幸雄住宅評論家
大きな道路沿いに立ち並ぶマンション。その評価が今後一変する可能性が。筆者撮影

 明治通りに環八、目黒通り……首都圏では車の交通量の多い通りの代表だ。これら大通りに面したマンションが、今、狙い目と言ったら、どうだろう。

 また、変なことを言い出したと思われそうだ。しかし、これ、まじめな話である。

今は、敬遠されがちな「大通りに面したマンション」

 大通りに面したマンションは今はまだ敬遠する人が多い。その理由は、騒音と排気ガス。うるさいだろう、臭いだろう、健康に害があるだろうと敬遠する人が多い。

 実際、昭和時代、高速道路や幹線道路など交通量の多い道路脇に建設されるマンションは劣悪環境の住まいとされた。音がうるさいので窓を開けることができず、外壁は排気ガスで黒く汚れていた。騒音と排気ガスに虐げられているようで、「あんなところには住みたくない」と思う人が多かった。

長所は「難あり」の分、安いこと

 ただし、環境に難がある分、高速道路沿いや大通りに面したマンションは割安になる。昭和の時代、道路から離れたマンションと比べると、大通りに面したマンションは3割から5割安かった。

 その後、騒音や排気ガスの規制が強まり、今は、大通りに面していても外壁が黒く汚れているマンションは見かけなくなった。騒音も、以前に比べればだいぶ抑えられている。

 しかし、大通りに面したマンションはまだ割安だ。

 5割まで安くなる例はさすがに減ったが、2,3割は安い。さて、問題はこれからの予測である。

ガソリン車廃止の後に起こること

 今、車の世界は、ガソリン車廃止の方向に傾いている。20年余り先の2040年代には電気自動車が主流になるのではないか。多くの人が漠然とそう考えている。

 その漠然とした思いから、想像を少し進めてみよう。

 電気自動車を中心に、騒音や排気ガスを出さない車が主流になったら、どうなるだろう。大通りに面したマンションを敬遠する大きな理由がなくなる。

 それどころか、大通りに面しているおかげで「交通便利なマンション」になる可能性もある。それは、「バス専用道を走行する路線バス」=BRTが広まった場合だ。

BRTで変わる都心の交通事情

 2020年東京五輪の後、都心と臨海副都心を結ぶBRTの計画がある。2台のバスをつないだような連節バスであれば、その輸送力は大きい。騒音と排気ガスがなくなった道路に専用レーンが設けられ、騒音や排気ガスを出さないバスが新しい足として活用される時代がくるかもしれないのだ。

 といっても、バス専用レーンを設置できる道、そして全長が通常のバス2台分にも及ぶ連節バスが走行できる道は限られる。片側2車線以上の大通りに限られるだろう。

 明治通りや環八、環七、目黒通りなどの大通りだ。そのように考えてゆくと、大通りに面したマンションは新交通システムを利用しやすく、通勤や通学に便利なマンションに変貌する可能性があるわけだ。

大通りに面していれば、開放的で日当たり良好

 音と排気ガスがなくなった大通りが生み出す長所は他にもある。

 たとえば、大通りに面していることで、前面が開け、日当たり良好といった長所もクローズアップされるだろう。

 ガソリン車廃止、電気自動車中心の世の中になると、大通りに面したマンションの価値が大きく変わる可能性がある。

 その大通りに面したマンションは、今、周辺相場より2割、3割安く売られている。これはお買い得ではないか。

 なぜ、そんなことを言い出したのかというと、昨年から、東京23区内で大通りに面したマンションの売れ行きが良くなっているからだ。今、分譲されている事例でいうと、目黒通りに面したエクセレントシティ自由が丘、明治通りに面したウエリス新宿早稲田の森などがある。

 今、注目度が上がっている背景には、マンション価格の上昇がある。東京23区内では新築マンションの価格上昇が著しく、少しでも割安なマンションはないかと探した結果、大通りに面したマンションに行き当たる人が増えたという図式である。

 しかし、「自動車の未来」を予測すれば、今、大通りに面したマンションに注目するのは正しい判断といえる。

「割安だと思って買ったマンションが、30年後に思いもかけなかった理由で大きく値上がりした」

 不動産の世界では、往々にしてそのようなことが起きるのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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