【Yahoo!ニュース 個人】8月の月間MVAとMVCが決定
■Yahoo!ニュース 個人、8月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました
社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」「文化の発展に寄与する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、すぐれたオーサーコメント「月間MVC」も選出しました。厳選5本の記事と1本のオーサーコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。
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8月のMVA
■レーダー衛星画像でモーリシャス重油流出 被害の範囲を知る(秋山文野)
筆者による受賞コメント:貨物船WAKASHIOがモーリシャス島沖で座礁し、重油流出の範囲が拡大、懸念が高まった8月中旬「SAR(合成開口レーダー)画像ならば見えるのでは」との思いたちました。画像を無償配布している欧州宇宙機関のサイトを検索して、画像に船体から伸びる黒い筋を見つけたときは衝撃を受けました。簡単に現地取材ができない海外の事故の現場で、重油の流出範囲という重要な情報を得ることができ、衛星リモートセンシングの可能性と情報共有の必要性を改めて感じます。衛星搭載合成開口レーダーによる海上の漂流油検出は、1997年にロシア船籍のタンカー「ナホトカ号」からの重油流出事故の際にも使われた技術です。それから23年、SAR衛星画像はJAXAのような専門機関にとどまらず、一ライターにも公開されたオープンな情報となり、ニュース読者の方々にお伝えできたことに意義を感じます。(秋山文野)
選出理由:インド洋のモーリシャス沖で発生した重油流出事故について、衛星データ解析企業の協力を得て衛生画像の解析を行い、重油の流出範囲を推定した記事です。現地情報による検証を行ったものではありませんが、被害状況や回収作業の進行状況を把握するために、天候の制約を受けない衛星画像が活用できる可能性を示しています。ニュースで話題になった事象をもとに、宇宙開発という一見遠い存在のものが私たちの実生活にどう役立てられるかを考えさせてくれる、示唆に富んだ内容です。
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■53歳で現役を続けるということーー最年長出場63分にかけたカズの思い(一志治夫)
筆者による受賞コメント:コロナ禍の仕事で一番大きく変わったのは、直でインタビューする機会の激減でした。とりわけ4月上旬~6月上旬の3ヶ月は、インタビューの仕事がゼロに。そんな中、カズに3回のインタビューができたのは、奇跡的でした。新型コロナの脅威が喧伝され始めた2月末、緊急事態宣言が発令される直前の4月初旬と、この2回は直接会ってのインタビュー。そして、6月は、初めてのリモート・インタビューでした。もちろん、コロナ禍に振り回されたという点では、アスリートの皆さんは私などの比ではなかったわけです。とりわけ、53歳のカズにとって、長期にわたるリーグの中断は、いろいろな意味でキツかったと思います。今回の記事は、そんな状況下でも、自分なりにベストの練習環境を用意し、真摯にトレーニングと向き合うカズの姿勢を伝えるものでした。1992年に初めてカズにインタビューをしてから実に28年。こういう賞をいただいて、改めてカズの言葉を拾い続けてきてよかったなと感じています。(一志治夫)
選出理由:現役最年長53歳の三浦知良選手の今シーズンにかける思いに迫った記事です。8月5日に行われたルヴァンカップで今季初出場した三浦選手が、どのような努力をしてきたのかを丁寧に描きました。筆者はコロナ禍でもトレーニングを欠かさなかったエピソードなども交えて、カズの美学を読者に伝えました。
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■戦場のような光景、レバノン・ベイルート爆発事故後の街を歩く(伊藤めぐみ)
筆者による受賞コメント:事故から1ヶ月半経ちました。街中は、見た目には落ち着きを取り戻しましたが、人々の疲れや不安はなくなることはありません。被害にあった建物内部はガラスが散らばったまま放置されていることも多いのは、レバノンは経済危機下にあり、修理する費用もない、また直しても再び仕事がはじめられるかわからないからです。直後のことだけでなくその後の人々の生活がどうなっていくのか、今後も取材していきたいと思います。(伊藤めぐみ)
選出理由:レバノンの首都、ベイルートで起こった大規模爆発。この記事はその直後の様子を伝える現地ルポです。現地で暮らす人々の声を丁寧に拾い集めながら、ベイルートで何が起きているかを生々しく描きました。また、以前から続く経済危機や政治不信などの問題を詳しく解説し、この爆発事故がいかに市民にとって打撃となるかを日本の読者にも分かりやすく伝えました。
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■子供を助けようとして親が溺れる原因 そして親子とも生還するためには?(斎藤秀俊)
筆者による受賞コメント:夏休み前から、子供を助けようとして親が犠牲になる水難事故が相次ぎました。実際の事故で何が起こったのか、そして親子で生還するためにはどうすれば良いのか、根拠に基づいて、丁寧に説明するように気をつけました。誰かの参考になり、事故が未然に防げたのなら、嬉しく思います。(斎藤秀俊)
選出理由:子供を助けようとした親が犠牲になる水難事故に着目した記事です。実際の事故を例にあげながら、親子で生還するためにはどうすれば良いのかをわかりやすく解説しています。海や川での水難事故が増加する夏休みにタイムリーに発信し、注意喚起をすることができました。
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■客は途絶えないけど「夜は地獄」 キャバクラ全国一多い沖縄、ホステスが明かす苦境(與那覇里子)
筆者による受賞コメント:沖縄はキャバクラやスナックが多い一方で、働く人の雇用は不安定です。コロナ禍で仕事が失われそうな中、どのように過ごしているのか。働く人たちには、使える支援策があることを記事を通して伝えられないか。と思って書き始めました。今回、実名を出すことを悩んだ私に「自信を持って夜の街で働いてきたし、これからもそうだから」と、インタビューだけでなく、実名も写真も掲載させてくれた美鈴さんの心が、後押ししてくれたし、書かせてくれました。美鈴さん、ありがとう。(與那覇里子)
選出理由:沖縄で新型コロナが再び流行し、繁華街に休業要請を出したことを踏まえ、現地の働く人の声を届けてくれました。コロナの流行初期から緊急事態宣言の発令、GoToキャンペーンの開始、再流行までにどのような状況だったのか、「夜の仕事」に就く女性の苦境や心境がリアルに感じ取れます。取材対象にしっかりと食い込み、読み込ませる内容に仕上げられた現地の記者の技が光る記事です。
8月のMVC
■『医療機関の受診控え深刻 患者2割減、小児科はほぼ半減(朝日新聞デジタル)』の記事へのオーサーコメント(坂本昌彦)
筆者による受賞コメント:外来では夏かぜなどの「感染症の波」を今年は経験せず、それが受診者数減少の原因だろうという実感を強く持っており、記事内容は小児科医の立場から補足が必要と感じて筆を執りました。おそるおそる書いた初コメントでしたが、受賞に繋がり嬉しいです。(坂本昌彦)
選出理由:新型コロナウイルスの影響で「受診控え」によって小児科の受診者数が減ったという記事に対し、小児科医として別の要因を指摘しています。現場の実情とデータに基づいて分かりやすく解説し、記事のみでは見えないコロナ禍における予防対策の功の面を提示した意義深いオーサーコメントです。