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東海地方まで早々と梅雨入り 関東甲信地方の梅雨入りはいつ?

饒村曜気象予報士
日本海まで北上したほぼ東西にのびる梅雨前線の雲(5月16日15時)

記録的に早い梅雨入り

 令和3年(2021年)、沖縄地方と奄美地方は、5月5日に梅雨入りをしました。

 梅雨についての統計が行われている、昭和26年(1951年)以降の71年間では、沖縄では13位タイ、奄美では12位タイの早さでの梅雨入りでした。

 そして、梅雨前線が北上し、九州南部が梅雨入りしたのは、平年より19日も早い5月11日でした。

 令和3年(2021年)の5月11日という九州南部の梅雨入りは、昭和31年(1956年)には及ばなかったものの、71年間で2番目に早い梅雨入りです。

 その後、東海地方まで次々に梅雨入りしましたが、沖縄・奄美地方以外は平年より19日以上も早く、1位か2位という、記録的な早さの梅雨入りです(表)。

表 令和3年(2021年)の梅雨入り
表 令和3年(2021年)の梅雨入り

南西諸島以外は雨継続

 沖縄付近から北上した梅雨前線は、5月17日も、ほぼ同じ位置に停滞する見込みです(図1)。

図1 予想天気図(5月17日21時の予想)
図1 予想天気図(5月17日21時の予想)

 このため、南西諸島以外は、雨が継続する予報です。

 つまり、梅雨入りした西日本と東海地方だけでなく、梅雨入りしていない関東甲信地方や北陸、東北地方、梅雨がないとされる北海道でも雨が降る予報です(図2)。

図2 各地の天気予報(5月17日)
図2 各地の天気予報(5月17日)

 しかも、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込むため、前線の活動が活発となり、西日本から北日本では、雷を伴った非常に激しい雨が降り、大雨となる所がある見込みです。

 一方、沖縄地方と奄美地方は、引き続き晴天の予報です。

 つまり、長い「梅雨の中休み」に入っています。

 各地の10日間予報をみても、この傾向は続きます(図3)。

図3 各地の10日間予報
図3 各地の10日間予報

 梅雨がないとされる北海道は、5月17日は雨ですが、その後は、お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が多くなっています。

 傘マーク(雨)や、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)はそれほど多くありません。

 また、梅雨に入っている沖縄地方や奄美地方(名瀬)でも、お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が多くなっています。

 これに対し、梅雨に入ったばかりの西日本と東海地方では、傘マーク(雨)や、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)の日が続く予報です。

 梅雨入り早々、梅雨らしい天気が続く予報です。

 問題は、梅雨入りしていない関東甲信地方、北陸地方、東北地方でも雨が続くことです。

「走り梅雨」か「梅雨入り」か

 関東甲信、北陸、東北地方は、雨の多い天気が続きますが、この雨をもって梅雨入りとするか、この雨を「走り梅雨」の雨として梅雨入りを見送るかは、難しい問題です。

 来週半ばの晴れ間がはっきりすれば、今回の雨を「走り梅雨」とし、再び雨の期間が始まったときに「梅雨入り」となります。

 一方、来週半ばの晴れ間が短いとなれば、今回の雨をもって「梅雨入り」とし、来週半ばの短い晴れ間を「梅雨の中休み」とします。

 関東甲信地方の梅雨入りの平年は6月7日ですが、昭和26年(1951年)から令和2年(2020年)までの70年間で43回(61パーセント)も6月上旬に梅雨入りしています(図4)。

図4 旬別の関東甲信地方の梅雨入り
図4 旬別の関東甲信地方の梅雨入り

 関東甲信地方が5月中旬に梅雨入りしたとなると、1位ではないものの、記録的に早い梅雨入りということができるでしょう。

昭和38年(1963年)の梅雨

 関東甲信地方で極端に梅雨入りが早かったのは、昭和38年(1963年)の5月6日です。

 北陸地方を中心に「三八豪雪」と呼ばれた記録的な大雪が降った年のできごとです。

 2番目に早いのは、平成23年(2011年)の5月27日、3番目に早いのは平成20年(2008年)の5月28日ですから、昭和38年(1963年)の記録が飛び離れています。

 昭和26年(1951年)以降、梅雨入りが特定できなかったのは、四国地方、近畿地方に一回ずつありますが、その年は、いずれも昭和38年(1963年)です。

 それだけ、昭和38年(1963年)の梅雨は異常でした。

 気象庁では、当初、5月中旬の雨を「走り梅雨」とし、梅雨入りを平年より10日も早い5月28日としていました。

 しかし、再検討の結果、「走り梅雨」としていたものを梅雨期間にいれ、昭和38年(1963年)の梅雨入りが5月6日となったのです。

 昭和38年(1963年)7月8日の読売新聞の夕刊には、当時の気象庁の苦労が載っています。

ツユ明け さあ真夏

数日は雷雨の心配 気象庁発表

 なにかと話題をまいたことしのツユも、8日梅雨前線は日本海に去って、ようやく明けた。例年に比べ1週間早いツユ明けである。

 気象庁8日午前11時の発表によると、北太平洋高気圧の張り出しが強まり、梅雨前線が衰弱してきたので、関東甲信地方ではツユが明けたものとみられる。ただ日本海の気圧の谷と南方洋上の弱い熱帯低気圧の影響により、ここ数日は雷雨やにわか雨のおこる恐れがあるという。(略)

 今年のツユは走りが5月中旬からあり、「ツユの入り」についての判断でまず気象庁を悩ました。

 結局「入り」は例年より10日早く5月28日におとずれた。さる3日には東京地方一帯に雷雨があばれ、気象庁ではツユ明けは中旬と予報していたが、その予報もはずれて、1週間も早くなった。

引用元:読売新聞 昭和38年(1963年)7月8日夕刊

 「梅雨入り」するか、「走り梅雨」として梅雨入りしないかは、難しい問題ですが、梅雨入りをしていても、していなくても、東北地方から九州まで、所によっては150ミリ以上の大雨が降る予報です(図5)。

図5 48時間予想降水量(5月17日から18日)
図5 48時間予想降水量(5月17日から18日)

 警戒すべき状態になっていることには変わりがありませんので、最新の気象情報に注意し、警戒してください

タイトル画像、図2、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図4、表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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