ラニーニャ終わる 今後の予測に不確実性も
昨年秋から続いていたラニーニャ現象はまもなく終息する。この夏は平常状態となる可能性が高いが、春に行う予測は不確実性が大きく、この秋以降は未知数だ。
ラニーニャ現象は3季節
4月のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値と比べ0.5度低く、2017年9月から8か月連続で0.5度以下となりました。ただ、基準値との差は徐々に縮小していて、今月はさらに基準値に近づく見通しです。
今回のラニーニャ現象(以下、ラニーニャと表記)の発生期間は2017年秋から2018年春までの3季節で、平均の5季節と比べると短く、短期間のラニーニャでした。
短かったといっても、この冬は全国的に寒さが厳しく、西日本では32年ぶりの寒冬となりました。また、アメリカでも影響があり、北米からカナダにかけての広い範囲で、2月から4月の気温が平年を大幅に下回りました。
この夏は平常状態か
ラニーニャは1949年以降、今回を含めて15回発生しています。そのうちの半数以上(9回)が春に終息しています。過去の例から今後を考えてみましょう。
こちらは春にラニーニャが終わった9例をグラフにしたものです。赤太線は今回のラニーニャを表しています。
ほとんどの例で、ラニーニャ終息後の夏は平常状態となっています。しかし、1968年と1976年は時間を空けずにエルニーニョが発生しました。また、2006年は秋からエルニーニョに近い状態となり、インドネシアやオーストラリアでは極端に雨が少なくなるなど、エルニーニョの影響がありました。
春の予測バリアー
日米豪の気象機関はそろって、この夏は平常状態となる可能性が高いとしています。ただ、その後は不確実性が大きい。秋にかけてもわずかながら海面水温が上昇する傾向があり、平常状態からエルニーニョに移行する可能性もあります。
エルニーニョ予測の適中率は67%、ラニーニャ予測の適中率は70%あるものの、平常状態から発生を的確に予測するのは今なお難しく、また、春に行う予測は不確実性が大きいことが知られています。春の予測バリアー(spring predictability barrier)を過ぎ、信頼性が高まる6月の予測に注目したいと思います。
【参考資料】
気象庁:エルニーニョ監視速報(No.308),2018年5月11日
気象庁ホームページ:エルニーニョ/ラニーニャ現象
米海洋大気庁:May 2018 ENSO update: Thar she goes,May 9, 2018
オーストラリア気象庁:ENSO Wrap-Up:Tropical Pacific remains El Nino-Southern Oscillation neutral,8 May 2018