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ラニーニャ終わる 今後の予測に不確実性も

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
【太平洋】旬平均海面水温の平年差図(2018年5月上旬:気象庁ホームページより)

 昨年秋から続いていたラニーニャ現象はまもなく終息する。この夏は平常状態となる可能性が高いが、春に行う予測は不確実性が大きく、この秋以降は未知数だ。

ラニーニャ現象は3季節

 4月のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値と比べ0.5度低く、2017年9月から8か月連続で0.5度以下となりました。ただ、基準値との差は徐々に縮小していて、今月はさらに基準値に近づく見通しです。

 今回のラニーニャ現象(以下、ラニーニャと表記)の発生期間は2017年秋から2018年春までの3季節で、平均の5季節と比べると短く、短期間のラニーニャでした。

 短かったといっても、この冬は全国的に寒さが厳しく、西日本では32年ぶりの寒冬となりました。また、アメリカでも影響があり、北米からカナダにかけての広い範囲で、2月から4月の気温が平年を大幅に下回りました。

この夏は平常状態か

 ラニーニャは1949年以降、今回を含めて15回発生しています。そのうちの半数以上(9回)が春に終息しています。過去の例から今後を考えてみましょう。

 こちらは春にラニーニャが終わった9例をグラフにしたものです。赤太線は今回のラニーニャを表しています。

エルニーニョ/ラニーニャ現象 監視指数(気象庁ホームページより、著者作成)
エルニーニョ/ラニーニャ現象 監視指数(気象庁ホームページより、著者作成)

 ほとんどの例で、ラニーニャ終息後の夏は平常状態となっています。しかし、1968年と1976年は時間を空けずにエルニーニョが発生しました。また、2006年は秋からエルニーニョに近い状態となり、インドネシアやオーストラリアでは極端に雨が少なくなるなど、エルニーニョの影響がありました。

春の予測バリアー

 日米豪の気象機関はそろって、この夏は平常状態となる可能性が高いとしています。ただ、その後は不確実性が大きい。秋にかけてもわずかながら海面水温が上昇する傾向があり、平常状態からエルニーニョに移行する可能性もあります。

予測モデルによる海面水温の予測(予測期間:2018年5月〜2018年11月),気象庁ホームページより
予測モデルによる海面水温の予測(予測期間:2018年5月〜2018年11月),気象庁ホームページより

 エルニーニョ予測の適中率は67%、ラニーニャ予測の適中率は70%あるものの、平常状態から発生を的確に予測するのは今なお難しく、また、春に行う予測は不確実性が大きいことが知られています。春の予測バリアー(spring predictability barrier)を過ぎ、信頼性が高まる6月の予測に注目したいと思います。

【参考資料】

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.308),2018年5月11日

気象庁ホームページ:エルニーニョ/ラニーニャ現象

米海洋大気庁:May 2018 ENSO update: Thar she goes,May 9, 2018

オーストラリア気象庁:ENSO Wrap-Up:Tropical Pacific remains El Nino-Southern Oscillation neutral,8 May 2018

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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