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薬物の「汚点」を持つボンズとクレメンスも、来年は殿堂入りのチャンスあり!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
バリー・ボンズ/400-400達成のセレモニー Sep 18,1998(写真:ロイター/アフロ)

 バリー・ボンズロジャー・クレメンスは、成績からすれば、2人とも間違いなく殿堂入りに値する。ボンズの762本塁打は歴代1位。500本塁打&500盗塁どころか、400-400を達成した選手も、ボンズの他にはいない。クレメンスの354勝と4672奪三振は、歴代9位と3位。ボンズのMVP7度とクレメンスのサイ・ヤング賞7度は、どちらも歴代最多だ。

 にもかかわらず、彼らの得票率は、殿堂入りに必要な75%に届いていない。いずれも、ステロイドという「汚点」があるためだ。それ以外には考えられない。

 ただ、来年はチャンスかもしれない。

 ここ2年は、引退から5年を経て、初めて選考投票にかかった選手が、2人ずつ殿堂入りしている。2018年はチッパー・ジョーンズジム・トーメイ、2019年はマリアーノ・リベラロイ・ハラデイがそうだ。それに対し、来年、そうなることが確実なのは、デレク・ジーターしかいない。

 ジーターと同じく、2014年がラストシーズンの選手には、ボビー・アブレイユジェイソン・ジアンビクリフ・リーアルフォンソ・ソリアーノアダム・ダンジョシュ・ベケットポール・コネルコラウル・イバニエスエリック・チャベスラファエル・ファーカルらがいるが、最初の投票で殿堂入りするとは思えず、殿堂入りできるかどうかにも疑問が残る。

 選考投票には、相対的な面もある。殿堂入りにふさわしいとして票を投じられるのは、記者1人につき10選手までだ。有力な候補が多ければ、その分、票を「奪われる」候補も出てくる。必ずしも10選手に票を入れなくてもいいが、有力な候補が少なければ、それ以外の候補に票を回す余地は広がる。

 ボンズもクレメンスも、得票率は年々上昇している。2人とも、3年目以降は右肩上がりで、2019年は59%台に達した。そこに、ライバルの少なさという要素も加わり、来年の得票率は一気に上がる可能性もある。

 彼らだけでなく、カート・シリングにも同じことが起こり得る。シリングの得票率は上下しているものの、2019年はクレメンス(59.5%)とボンズ(59.1%)を上回り、60.9%を記録した。この得票率は、殿堂入りした4人、リベラ(100%)、ハラデイ(85.4%)、エドガー・マルティネス(85.4%)、マイク・ムシーナ(76.7%)に次いで高かった。

 他には、ラリー・ウォーカーの票も増えそうだ。来年はラストチャンス――記者投票に限れば――の10度目。今回のエドガーがそうだったように、最後の選考投票では票が増える。エドガーの場合、得票率は前年の70.4%から85.4%に跳ね上がった。

 もっとも、ウォーカーの得票率は54.6%だったので、来年、75%までいくかどうかはわからない。昨年1月、ウォーカーはTSN690モントリオールのインタビューで、票が伸びない――この年は34.1%――理由について「クアーズ・フィールドは、僕にとってのPED(パフォーマンス向上薬)みたいなもの」と語った。ウォーカーはモントリオール・エクスポズでキャリアをスタートさせたが、通算17シーズンの半分以上はコロラド・ロッキーズでプレーし、打者天国のクアーズ・フィールドをホームとした。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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