実力者・千田翔太七段、A級昇級&八段昇段決定! 羽生善治九段は残留を決める B級1組12回戦
2月8日。東京・将棋会館において第82期順位戦B級1組12回戦一斉対局がおこなわれました。結果は以下の通りです。
千田翔太七段(8勝3敗)○-●屋敷伸之九段(5勝6敗)
大橋貴洸七段(7勝4敗)○-●横山泰明七段(2勝9敗)
糸谷哲郎八段(6勝5敗)●-○羽生善治九段(6勝5敗)
近藤誠也七段(6勝5敗)○-●木村一基九段(2勝9敗)
増田康宏七段(8勝3敗)空き番
澤田真吾七段(6勝5敗)-佐藤康光九段(5勝5敗)
※澤田七段が新型コロナウイルス感染のため延期
以上の結果、千田七段(8勝3敗)のA級昇級が決定。同時に八段昇段も決まりました。残る1つの昇級枠は、増田七段(8勝3敗)と大橋七段(7勝4敗)が争います。
羽生九段、残留決定
▲糸谷八段-△羽生九段戦は糸谷先手。互いに現代調の雁木に組みました。
糸谷八段が得意の右玉に構えたのを見て、46手目、羽生九段は玉そばの香を上がります。これは穴熊に組み替える構想かと思いきや、実は地下鉄飛車も含みにしていたようです。しかし結局そうはならず、やはり穴熊に組むという、虚々実々の駒組でした。
糸谷八段が自玉の上部から動いて、戦い開始。羽生九段は的確に応戦しながら、飛車を3筋に回って糸谷玉に照準をつけます。88手目、穴熊のそばの桂を跳ね出して飛筋が通る形をつくり、羽生九段がリードを奪いました。
97手目まで進んで18時、夕食休憩に。ここではすでに羽生九段優勢がはっきりしていました。
18時40分、対局が再開されると、ぱたぱたと手が進んでいきます。羽生九段は自玉の遠さを活かしながら、縦横に活躍する飛車の威力で相手玉を寄せきりました。
120手目、羽生九段が成桂を入った手を見て糸谷八段は投了。19時16分と順位戦にしては早めの終局となりました。
羽生九段は勝って6勝5敗で残留が決定。来期でのA級復帰に期待がかかります。
糸谷八段は敗れて6勝5敗と昇級争いから後退しました。
千田七段、ついにA級昇級決定
▲千田七段-△屋敷九段戦は千田七段先手で、定跡形をはずれた相居飛車の戦いに。27手目、千田七段が歩を突っかけて、戦いが始まりました。中盤は形勢互角のまま推移し、そのまま終盤へと突入しました。
79手目。千田七段は自玉上部を受けず、飛銀両取りをかけて勝負に出ます。屋敷九段はスパートをかけ、一気に千田玉へと迫っていきますが、千田七段もひるまずに攻め合いを続けました。
84手目、屋敷九段は千田玉の横から飛車を打って王手をかけます。対して千田七段は合駒に飛車を打ち返して防ぎました。屋敷九段は同飛成と応じて攻め続けましたが、ここはいったん、飛車を成る手もあったようです。
進んで、最終盤の一手争いを制したのは千田七段でした。101手目、千田七段は屋敷陣に銀を打ち込みます。これが屋敷玉への詰めろ。屋敷九段は攻防ともに手段がなく、22時57分、投了しました。
千田七段はこれで8勝3敗。競争相手だった糸谷八段が敗れたため、最終戦を待たずしてA級昇級を決めました。また規定により八段にも昇段します。
千田新八段は4年前の朝日杯、準決勝で藤井聡太七段(現八冠)、永瀬拓矢二冠(現九段)を連破して優勝した実績もあります。
千田新八段は順位戦に参加して今期で11期目です。
B級1組は5期目。常に昇級候補に名を挙げられながら、A級の座はのがしてきました。前期2022年度は後手番なのに1手目を指してしまうという、痛恨の反則負けを喫したこともありました。
中村真梨花女流四段と結婚し、公私ともに充実している千田新八段。実力者が満を持して、ついにA級昇級を決めたというところでしょう。
残留争いも熾烈
千田新八段に敗れた屋敷九段は、5勝6敗となりました。例年であれば十分残留しそうな星取りですが、今期は残留争いが熾烈。最終戦に敗れれば下位3枠目に入り、降級が決まります。
かつて順位戦では「指し分けでは降級しない」という内規が存在し、降級枠に入りながらも、指し分けのため助かったという事例もありました。しかし2018年にはそのルールが見直されて、ないことに。屋敷九段は勝って6勝6敗の指し分けでも、競争相手がすべて勝てば降級の可能性があります。ともかくも、勝つよりほかに生き残る道はありません。
屋敷九段の最終戦の相手は、昇級を目指す増田七段です。「鬼のすみか」と呼ばれるB級1組。その今期白眉ともいえる、文字通りの「鬼勝負」となりそうです。