「音の商標」が登録されるようになっても芸人のパロディーには関係ありません
日本でも「音の商標」が登録可能になり、既に登録された商標も出てきた点については前回書きました。
これに関して「「音の商標登録」決定でパロディー芸人がギャグ封印の危機」なんて東スポの記事が出ています。東スポの記事にマジレスするのも何ですが、商標権についてよくある誤解だと思いますので、(今まで何回も書いている話ですが)敢えて書くことにします。
商標権とは言葉の使用全般を独占できる権利ではありません(これは文字の商標でも、マークの商標でも、音の商標でも同じです)。商標権は、商品やサービスを商売として販売・提供等する際に特定の文字、マーク、音等を標識として使用することを独占できる権利です。
これは、ちょっと常識を働かせればわかる話で、ビッグマックはマクドナルド社の登録商標ですが、日常会話で「ビッグマック」という言葉を使うたびにマクドナルド社の許可がいるわけではありません。一方、マクドナルド社と関係ないハンバーガー屋がビッグマックという商品名のハンバーガーを売り出せば、あっと言う間に商標権に基づく警告がマクドナルド社から届くでしょう。
したがって、「おーいお茶」や「ロート製薬」の音商標が今回登録されたからと言って、東スポ記事にあるように「市川海老蔵に扮して「おーいお茶」と叫んだレイザーラモンRG(41)や、ロート製薬のCMのフレーズで「ニート生活」などと歌ったCOWCOW多田健二(41)ら、CMパロディーギャグを多く生み出してきた芸人にとっては受難の時代になりそうだ」なんてことはまったくありません(レイザーラモンRGがお茶の販売ビジネスをしていれば別ですが)。
もちろん、商品のイメージを著しく損なうようなネタであれば、メーカーからクレームが付くことはあると思います(大昔、「ヌーブラヤッホー」のネタがクレームを付けられたことがあると記憶しています)が、それは営業妨害等の話であって、商標権の話とは直接は関係ありません。
なお、芸人さんが一発芸(たとえば、「ラッスンゴレライ」(古くてすみませんがあくまで例))を商標登録できるのかについては以前に書いています「(芸人の一発芸を商標登録することはできるのか?)」。ここでも、考え方は同じで、ラッスンゴレライを商標登録したところで、(音商標であろうが文字商標であろうが)ラッスンゴレライ印の商品(たとえば、アイスクリーム)を他人が販売することを禁止することはできますが、他の芸人さんがネタをパクることを禁止することはできません。