休校で「家が辛い」子どもたちからメッセージ急増 相談先のNPO「ぎりぎりの状況」
新型ウイルスの影響で今も多くの学校で休校が続いています。やむを得ない措置ですが、家に居場所がなく辛いと感じている子どもたちも少なからずいるでしょう。
家が辛い子どもたちはいま、どんな状況にあるのか? LINEなどで子どもから相談を受ける団体は複数ありますが、そのうちのひとつがNPO法人ウィーズ(千葉県船橋市)です。親の離婚など、家庭環境に悩む子どもたちの支援をしています。
代表の光本歩さんによると、全国で休校が始まって以来、子どもたちからのLINE相談は大きく増えたといいます。
「2月下旬までは1日の相談者数は4、5人くらいで、やりとりの数は60件程度でした(1往復で1カウント)。それが休校が始まった3月にどんどん増えて、4月のはじめには1日20人くらいになり、やりとりが1日で300件を超えることもあります。研修を受けた11人のボランティアスタッフでなんとか対応していますが、もうぎりぎりの状況です」
ウィーズに相談をしてくるのは、親が離婚している子どもと、「離婚はしていないものの仲が悪くてしんどい」という子どもと、半々くらい。メッセージには「死にたい」「消えたい」「飛び降りる」「剃刀がほしい」など、追い詰められた言葉が多く見られるそう。
「たとえばある中学生は、両親が喧嘩ばかりしていて辛いといっています。ふだんはお父さんが海外に単身赴任をしているから平和だったのに、コロナの影響で帰国して、しかも仕事もできなくなってしまったので毎日家にいる。それでお母さんがイライラしてすぐ喧嘩になるので、すごくストレスを感じているということです。
あとは、お給料はたくさんもらっていて外面はいいけれど、じつはDV、というお父さんに悩んでいる子もいます。在宅勤務になってから家で暴れていて鬱陶しい、といっています」
子どもが休校になるだけでなく、最近は親も在宅勤務になっているため、子どもの面前でDVが起きる状況も増えてしまっているようです。
なかには、親が中国人で、学校で周囲から「おまえのところがばら撒いた」などと言われてしまった子もいるといいます。大人でも幼稚なことを言う人はいるものですが、もし自分が逆の立場だったらどんな気持ちになるか、考えられないものでしょうか。
「休校でずっと家にいて友達とおしゃべりもできないから、つい辛かったことばかり思い出して考えてしまう、という子もいます。たとえばこの子は、中学に入るときに親が離婚して、それからずっと傷を抱えている。死にたいと思ってリスカしているんだけれど、どうしたらやめられるか、と相談してきました」
やりとりの画面をちらりと見せてもらったところ、子どもたちから来るメッセージは、長文のものが多いようです。思いを言葉にしていくことによって、考えを整理できる部分もあるのかもしれません。
緊急の対応が必要な案件もあります。3月下旬、以前から何度かやりとりをしていた中学生が、「〇時〇分の電車に飛び込みます」と書き込んできました。スタッフ総出で説得し、その子がいると思われる駅を割り出して駅員さんに急いで連絡し、周辺や防犯カメラを見てもらったことも。結局は嘘だったとわかってほっとしたそうですが、相談対応には気を抜けません。
「事実かどうかわからないこともありますが、それでもきちんと対応しないと子どもの信頼を裏切ることになってしまいます。振り回される可能性も含め、相談を受けるからには正面から向き合っていかないといけないと思っています」
なかには児童相談所や警察と連携することが必要な案件もあるのですが、公的な機関とつながることを極端に嫌がる子どもも多いそう。「親が捕まるのはイヤ」「話がややこしくなるから児相や警察には連絡しないでほしい。私が耐えればいいだけ」などと言われ、無力感を抱くこともあるといいます。
「誰か近くの人が話を聞いてあげられるといいんですけれど、いま多くの子どもたちは『家庭しかない』という状況に置かれています。もしかしたら家の近くに子ども食堂などの居場所があるかもしれませんが、子どもたちにはその情報が届いていなかったり、知っていても『自分なんかが行っていいのか』と一歩踏み出せなかったりするようです。
だからその手前で、子どもから相談を一次受けして、信頼できる他団体につなぐ役割が必要なんでしょうね」
ウィーズのほかにも、相談窓口は複数あります。厚生労働省はホームページで、LINEやチャットで相談できる民間団体等の窓口をいくつか紹介していますので、参考にしてもらえたらと思います。
(参考)
- 厚生労働省ホームページ掲載 LINE・チャット相談団体一覧
- 東京都のLINE相談
- ほかにも「LINE」+「相談」+「子ども」などでインターネット検索すると、多くの窓口を見つけることができます