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進化の真央、五輪で『打倒!金妍児』へ

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

やはり経験は宝である。向上心は力である。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦、NHK杯の女子シングル。今季限りで引退を表明している浅田真央が充実の演技で約1万人のファンを魅了し、自己最高点で連覇を果たした。

自信ゆえか、表情がやわらかくなった。表彰式終了後、23歳は言う。「一段でも二段でも、階段を登っているなという実感があるので、着実に自分の目指すレベルに近づいているなと感じています」と。

ジャンプやスピン、ステップのスケーティング技術はもちろん、指先の動きや表情などの表現力もアップしている。トリプルアクセル(3回転半)は精度を欠いて両足着氷となったが、全体を通して、スピード、勢いがあった。まあ、元気よく、美しく映るのだ。「守りに入らなかった」とのコトバ通り、攻めのスケーティングに徹した。

「今日は、どちらかというと、滑りもリラックスして最後までスピードが落ちなかったと思います。とくにステップは、自分のスケーティング技術と今の力を全部出し切ろうと思って滑っています」

ラストシーズンということで、気持ちも入っているのだろう。得意のトリプルアクセルをフリーのプログラムで2本、入れることも考えている。「トリプルアクセルの調子がよくなって、すごく簡単に跳べるようになってきました。(2本は)80%ぐらいは大丈夫かなと思います。でも、まだ一度も練習したことないので」と笑った。

「やっぱり、自分のもっともっと上のレベルを目指して練習するのは楽しいですから。また、それを試合で決められたら、もっとサイコーなので。(2本)できるな、という自信はあります」

いろんな経験をして、精神的にもタフになった。悔し涙にくれた2010年バンクーバー五輪の銀メダルから3年。

「バンクーバーが終わってから、もう一度、イチから直してきて…。悩む方が多かったと思いますけど、ようやく、この3年間の積み重ねがいま、生きているんじゃないかと思っています」

こうなると、女子フィギュア界はふたりが抜けている。浅田真央と、故障でGPシリーズを欠場しているバンクーバー五輪金メダルの金妍児(韓国)だ。そのライバルは12月の国際大会が今季初戦となる見通し。

記者会見。思い切って、「金妍児と早く勝負したいか?」と聞いた。

「金妍児選手は、オリンピックまでには復帰してくると思います。また、バンクーバーのように同じ最高の舞台で、たくさんの注目が集まる中で、一緒に試合に出られるということは、自分にとっても、いい刺激になります。最高の舞台で、お互いに力を出し切ればいいのかな、と思います」

ゴールは来年2月のソチ冬季五輪。まずはひとつひとつと言いながらも、浅田真央の澄んだ瞳は『五輪金メダル』を見据えている。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2024年パリ大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。酒と平和をこよなく愛する人道主義者。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『まっちゃん部長ワクワク日記』(論創社)ほか『荒ぶるタックルマンの青春ノート』『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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