「アトムの童」にソニーが「協力」 クレジットに「プレイステーション」のロゴ
16日から放送がスタートした日曜劇場「アトムの童(こ)」(TBS系)に、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が協力していることが明らかになりました。ドラマのクレジットに「協力 プレイステーション」とあり、SIEのキーマンの吉田修平さんに加え、他にも3人の社員名が記されていました。ブランドロゴだけであっさり終わらせるのではなく、4人の名をわざわざ記しており、相当な協力体制があったことをうかがわせます。
「アトムの童」の第1話は、廃業の危機を迎えていた老舗玩具会社「アトム玩具」が、挽回を狙ってゲーム業界に参入し、謎の多い天才ゲーム開発者の安積那由他(山崎賢人さん)と接触した……という内容でした。
見て気になったのは、主人公の那由他と因縁がある大企業・IT企業「SAGAS(サガス)のモデルです。サガスは世界展開をする大手スマホゲーム会社で、同時に検索エンジンのビジネスをしているという設定です。SIEや任天堂とビジネスモデルが全く違うわけで、要するにモデルに近い企業が浮かびません。
あえて言えば、検索エンジンのビジネスという意味ではグーグル、「SAGAS」の文字が「SEGA(セガ)」を連想させました。しかし、やはりちがう部分が大きく、モデルと合致しません。そう考えると、ドラマ制作側も特定の企業を連想させないよう、かなり配慮したといえそうです。
何せドラマの影響力は絶大ですから、一部の人たちから誤解されてしまう可能性があります。もちろん「このドラマはフィクションです」という一文を入れていますが、SNS全盛の時代を考えると、文言の効果は限定的でしょう。
改めて考えると、SIEがドラマに協力したこと自体に驚かされます。ドラマは架空の話ですが、印象的なシーンについて現実と照らし合わせて比較されたり、モデルを推察されがちです。特にゲームファンは、SNSの発信力もあります。従ってドラマにゲーム会社が協力したことが裏目になる可能性もあります。それ自体「リスク」という考えもあり、全く協力しない方が無難とすら言えるかもしれません。
一方で、ゲーム業界を題材にしたドラマが、日曜劇場というビッグネームの枠で放送されること自体、ゲーム業界全体にとって、プラス効果が大きいのも確かです。
ゲームはかつて、社会的な事件が起きるたびに“悪者”にされてきた歴史がありますから、ゲームについて老若男女問わず広い層に理解してもらい、イメージアップを図る努力は必要で、ドラマは好機と言えます。ゲーム業界の影響力を考えると「面白いゲームを作ればそれでいい」というだけでは、すまないのも事実です。
リスクを承知でドラマに協力したゲーム業界の関係者。そしてインディーゲームという難しい題材に挑んだドラマ制作者。双方に敬意を表しながら、楽しみたいと思っています。