「ノリが悪い人」より「ノリがいい人」のほうがビジネスで結果を出しやすい理由
「ノリがいい人」という表現があります。反対に「ノリが悪い人」という言い方もあります。このときの「ノリ」というのは、その場の空気、雰囲気に「乗る」ことを意味します。この「乗る」は、「調子に乗る」や「流行に乗る」という表現でも使います。どちらかというと、堅実というより軽薄な印象があり、「軽い」「浅い」「浮く」という言葉が連想されます。
「ノリがいい人」は、あまり深く考えず、周囲に影響されて意思決定する人のこと。「ノリが悪い人」は、周囲に感化されたほうがいいときでも、考えすぎるのか周りに合わせることができない人のことを指します。
ただ、単に「軽い」「調子がいい」という言葉で片付けられないときもあります。
コンサート会場をイメージするとわかりやすいでしょう。たとえばAKB48がそれほど好きでなくても、知人に誘われてコンサートへ行き、周囲がノリノリで手を振ったり、踊ったりしているときに、ぼーっと突っ立っているとどうでしょうか。ハロウィーンの仮装パーティに呼ばれたのに、何も仮装せずに参加したら周囲はどんな反応を示すでしょうか。この「ノリの悪さ」は周囲に良い影響を与えるかというと、たぶんそうではないでしょう。
「郷に入れば郷に従え」ということわざがあるように、たとえしっくりこないときでも、「ここは合わせておこう」と柔軟に考えるべきです。周りがノリノリであれば、自分もその調子に合わせるのが「大人の対応」というもの。どうしても合わせられないというのであれば、最初からAKB48のコンサートへ行かなければいいのです。仮装パーティなど、断ればいいのです。
「ノリがいい」場合も「ノリが悪い」ケースも、どちらも論理的な意思決定をしていません。自分の判断に論理的な根拠を示すことができるのであれば「ノリ」がいいだの悪いだのと言われることはないですから。どうせ論理的でないのであれば、「ノリがいい」ほうがいいに決まっています。
私は現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。私どもコンサルタントがクライアント企業に入って最初にやることは「場の空気」を一変させることです。業務を効率化させれば、労働時間を増やすことなく、各自が目標から逆算した行動指標をやりきることはできるはず。まずは行動指標をやり切るところからスタートしましょう。と言っても、現状維持バイアスをはずすことができない人がほとんどです。
どんなに論理的に説明しても、
「目標はあくまでも目標であって、達成できないときもある」
「できる範囲でやって目標が達成できなければ、それはそれでしょうがない」
このようなことを言って、これまでの行動を変えられない人がほとんどです。ですから、組織の空気を変えることが必要なのです。
「目標は絶対達成しよう。高い目標を掲げ、全員が今できる以上のことをやり遂げよう。どうせやるなら、そのほうが楽しいに決まってる」
私たちコンサルタントや、クライアント企業の経営者によって空気を作り上げていきます。その雰囲気の「乗せられて」ほとんどの人が、「どうせやるなら頑張ろう!」「絶対達成しよう」となってくれます。過去にしがみつくのは良くない、組織のためにも、自分のためにも、そのほうがいいと感覚的にわかるからです。
それでも「ノリの悪い人」は、1~2割いるものです。盛り上がっているコンサート会場でずっと座って「はやく終わらないかな」と思っているような人です。大人の対応ができない人は、「共感力」が欠如しているとも言えます。
人と信頼関係を構築するためには、まず相手にペースを合わせることです(ペーシング)。ペーシングの習慣があって、はじめて相手とラポール(信頼)を築き上げることができます。周囲の雰囲気に流されることなく「我」を通したいという姿勢は、痛々しくあり、自分を客観的に見ることができない証。
すべて周りに合わせる必要はありません。しかし「ここは合わせたほうがいいな」と自分でギアチェンジできるかどうかは柔軟性のあるなしにも関わります。「ノリが悪い人」より、総じて「ノリがいい人」のほうがビジネスで結果を出しやすいと言えるでしょう。