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トランプが勝ったらアメリカを去ると言ったハリウッドセレブは、本当に荷造りを始めるのか

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「トランプが勝ったら南アフリカに引っ越す」と言ったサミュエル・L・ジャクソン(写真:REX FEATURES/アフロ)

大統領選から一夜開けた9日(水)、ハリウッドは暗く、静かな雰囲気に包まれている。少なくともバーニー・サンダースが指名を逃した後は、ハリウッドは(一応)みんなで一緒にヒラリー・クリントンを応援していた。オールスター支援体制で選挙の日を迎えたわけだし、まさかトランプに負けるなど、想像もしていなかったのだ。

スターたちは、CMの中で「ワオ、有名人がいっぱい出てるねえ」と自画自賛した。J・J・エイブラムスやスピルバーグ、カッツェンバーグ、トーマス・ティル、ロン・メイヤーなど業界の大物はミリオン単位の政治献金をした。10月末の段階で、クリントンのキャンペーン資金は1億5,300万ドル、トランプは6,800万ドル。金も、名声も使った。

クリントン支持者のセレブの何人かは、選挙の前、「もしトランプが勝ったら、アメリカを出る」と公言している。本音かもしれないが、そんなことを堂々と言えた裏には、ある意味、ノリと、これだけの金と名声パワーに後押しされたクリントンが負けることはないという楽観もあったかもしれないと思う。

しかしクリントンの半分以下のお金を使い、「私にはビヨンセもJay-Zも不要だ」と言い放ったトランプが、結局、勝ってしまった。開票作業が始まり、トランプの優勢ぶりが明らかになった時、カナダへの移住についてのウェブサイトが一時クラッシュしたところを見ると、実際にアメリカ脱出を考えた人は少なくなかったと思われる。

だが、果たしてこれらのセレブは今、本気で荷造りを始めているのだろうか。それとも、言ってしまったことを後悔しているだろうか。脱出を公言したセレブには、以下のような人々がいる。

バーバラ・ストライザンド

オーストラリアのテレビ番組に出演したストライザンドは、「今、とても不安。私はヒラリーに大統領になってほしい。でも、まだ女性差別がかなりあるのよ。『女だって?』みたいなね。それで彼女のことを侮辱したりするの。(もしトランプが勝ったら)、あなたの国に引っ越してこなきゃいけないわ。もし入れてくれるのならだけど。でなければカナダかしら」と語った。インタビュアーは「歓迎しますよ」と言い、彼女は「ありがとう」と答えている。彼女は事実上引退しているので、どこに住んでも問題はないだろう。

ブライアン・クランストン

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」で今年のオスカー主演男優部門にノミネートされたクランストンは、先月、thebestsellerexperiment.comのインタビュアーに、「トランプが大統領になったらバンクーバーで長い休暇を取りたいと思いますか?」と聞かれ、「もちろんだ。でも休暇じゃないよ。引っ越すよ。そうなるとは思えないけど。そうならないことを願う」と答えた。バンクーバーやトロントでは映画やテレビの撮影が多数行われているので、もし本当に引っ越したとしても、不利益はそれほどないだろう。しかしL.A.生まれのクランストンが、本当にL.A.を捨てるだろうか。いずれにせよ、「そうなるとは思えない」と前置きしているので、ならない前提で語ったと思われる。

マイリー・サイラス

今年初め、サイラスは、「ドナルド・トランプは悪夢」というメッセージを、トランプの写真とともにインスタグラムに投稿。別の投稿では、「こいつが私の大統領になったら、本気で移住するわよ。私は本気のことしか言わないから」と語っている。元婚約者のリアム・ヘムズワースと復活したようだし、彼女の移住先はオーストラリアか?

スティーブン・キング

数々の恐ろしい物語を書いてきたキングにとって、想像もつかない恐怖は、トランプが大統領になる可能性だった。今年9月、「The Washington Post」へのインタビューで、キングは、「トランプが大統領になることほど恐ろしいことはない。そのことに強い恐怖を感じている」と告白し、もしそうなってしまったらカナダに移住すると語った。作家はどこにいようが仕事はできるので、ありえることだ。

レナ・ダナム

「Girls」のクリエーターで熱烈なクリントン支持者のダナムは、「トランプが勝ったらほかに移住するという人がたくさんいるのは知っている。でも私は本気よ」と語った。移住先はカナダ。「バンクーバーには素敵なところがたくさんあるし、仕事もできるし」と付け加えた。ここまで言った彼女は本当にやるだろうか?

サミュエル・L・ジャクソン

昨年末、ジミー・キンメルのトーク番組に出演したジャクソンは、「もしあのバカが当選したら、僕は南アフリカに移住するよ」と発言している。しかしこれは最初からジョークとして作られた部分であり、どこまでが本人の言葉かはわからない。

もっと曖昧で、本気かどうかわかりかねる答には、アーミー・ハマーの「カリブ海に移住してジェットスキーのレンタル業でも始める」、シェールの「火星に引っ越す」、エイミー・シューマーの「スペインのどこかに引っ越す。スペイン語はできないけれど」という発言などがある。一方で、ヒスパニックのコメディアンであるジョージ・ロペスは、「トランプが勝ったら、移民がやってくる心配はないよ。僕らはみんな母国に帰るから」とジョークを飛ばしている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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