夢の超光速移動を実現する本物の「ワープバブル」生成に成功?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ワープ・バブル生成に成功!?」というテーマで動画をお送りしていきます。
NASAの「イーグルワークス研究所」を創設したハロルド・ホワイト氏は2021年7月、ワープ・バブルの生成に成功したと発表しています。
●ワープ・バブルとは
「ワープ」というと、宇宙を舞台にしたSFやアニメを思い浮かべる人も多いでしょう。
ワープの語源は「ゆがむ」「ねじれる」という意味の英語「warp」で、もともと平らな板などがそり返るときなどに使われます。
それを転用して、SFでは時空のゆがみを利用した超光速航法をワープといいます。
ワープ航法は、今のところSFの世界の中にしかない架空の技術ですが、理論的には一般相対性理論に基づいた裏付けが考案されています。
1994年、メキシコの物理学者ミゲル・アルクビエレ氏はSF作品「スタートレック」のワープ航法をヒントにして「アルクビエレ・ドライブ」を考案しました。
それは、「ワープ・バブル」と呼ばれる特殊な空間領域で宇宙船を包み、その前方で空間を収縮させながら後方で空間を膨張させるという方法です。
これによって、光より速く宇宙船を押し流すような時空の流れができます。
相対性理論では真空中での光の速度が自然界の最高速度とされています。
光速を超える速度での移動は相対性理論と矛盾しないのでしょうか?
実は、空間自体の膨張や収縮は光速を超えることができます。
現在の宇宙は光速を超える速度で膨張しており、さらに誕生直後の宇宙は極めて急激な空間の膨張「インフレーション」を起こしたと考えられています。
ですがこのような宇宙空間の膨張は、相対性理論に反していません。
アルクビエレ・ドライブでは、ワープ・バブルの内部にある宇宙船は周りの空間に対しては静止しています。
宇宙船を取り巻くワープ・バブル自体が波のように宇宙空間を伝播していくのです。
超光速で伝わる時空の波に乗ってサーフィンをするようなイメージです。
ワープ・バブルのような時空構造を発生させるためには、通常の物質ではあり得ない負の質量が必要です。
しかもとてつもない量のエネルギーが必要となり、そのエネルギー量を質量に換算すると、諸説ありますが、木星質量分とも、宇宙全体の質量でも足りないとも言われます。
どのみち現代の技術では到底実現不可能です。
●カシミール効果
NASAのエンジニアであり物理学者でもあるハロルド・ホワイト氏は実際に実物の「ワープ・バブル」を出現させることに成功したと報告しています。
もともと、ホワイト氏の率いる研究チームはワープ・バブルとは別の、「カシミール効果」という現象について研究していました。
その研究の作業中に、偶然にもアルクビエレ・ドライブの要件に一致する非常に小さな構造を発見したとのことです。
カシミール効果とは「真空のエネルギー」によって物体を移動・変形させる現象のことです。
ニュートン力学から始まる古典物理学では、真空とは物質が何もない、エネルギーがゼロの状態です。
しかし、現代物理学(量子力学)では、古典的な意味での真空は存在できません。
ある空間から全ての原子などの物質を取り去り、絶対零度まで冷却しても、その空間のエネルギーはゼロにはなりません。
空間内部では仮想粒子や光子の生成と消滅が繰り返されています。
この状態のエネルギーのことを「真空のエネルギー」といいます。
1943年、オランダのカシミール氏は、真空のエネルギーを確認する実験を行いました。
その実験とは2枚の板を、原子の大きさレベルのわずかなすき間を空けて並べ、その板の間に働く力を調べるというものでした。
板の間が狭いとその間に真空のエネルギーの小さな波長部分だけしか入り込めません。
それに対して、外側の空間ではあらゆる波長が存在可能です。
そのため、板に挟まれた空間のエネルギーが外側の空間のエネルギーよりも小さくなります。
そのエネルギーの差によって外側から圧力を受けるため、2枚の板は引き付け合います。
これがカシミール効果です。
2枚の板の外側の真空のエネルギーを基準値の0として計算すると、板に挟まれた空間のエネルギーは負の値になります。
●本物のワープバブルを発見!?
ホワイト氏はカシミール効果を検証するために、2枚の板ではなく直径4マイクロメートルの円柱の間に直径1マイクロメートルの球体を配置したモデルを用いて分析したところ、なんとこのモデルにおけるカシミール効果による負のエネルギー密度(画像左)が、アルクビエレ・ドライブの要件(画像右)に定性的に一致したと発表しています。
ホワイト氏は今回の発見について、「非常に小さいものの、今後ワープが可能な宇宙船を設計する際に従うべき道筋となるような、本物のワープバブルを発見した」と述べています。
これが本当にワープバブルの種のようなものであり、ワープがSFの世界のものではないことを示すことができれば、本当に世紀の大発見なのかもしれません!
ただしこのようなホワイト氏の主張に対して、天体物理学者のイーサン・シーゲル氏はかなり否定的です。
シーゲル氏によると、このバブルはあくまで定性的に似ているというだけであり、さらに非常にスケールの小さい範囲に限定されていることから、これをワープバブルであると断定することについては「自分の発見が正しいと盲目になっている」と強く批判しています。
このように新発見のワープバブルが本物であるかどうかについてはまだはっきりということはできなそうですが、ワープ航法がいつの日か実現することを願って、今後の研究に期待したいですね。