フルーツ大福にぴったりの日本茶!茶葉の見た目は中国茶そっくり!?軽やかな香りの【釜炒り茶】
いちご大福。
みかん大福にキウイ大福。
フルーツ大福専門店のサイトにはメロンやぶどう、桃など、カラフルなフルーツ大福がたくさん並んでいます。
いつも、「このお菓子にはこのお茶が合うなぁ。こっちもいいなぁ」と、お茶とのペアリングを考えては日本茶のレッスンの中でご紹介しているのですが、フルーツ大福だけは今までどのお茶もしっくりこなくて・・・。
煎茶やほうじ茶などを試してみても「合うといえば合うんだけど…なんだか違う」と感じていました。
しかし、少し前にあるお茶を取り寄せ、適した淹れ方やお菓子との合わせ方を考えていた際に、これはフルーツ大福と相性が良いのでは?と感じ、早速いちご大福に合わせてみると・・・
「合う!これだ!!!」と自然に笑みが(毎度のことながら家族は引いて見ています)。
それが、今回ご紹介する「釜炒り茶(かまいりちゃ)」です。
中国茶のそっくりさん??ルーツは中国の「釜炒り茶」
「釜炒り茶」、聞きなれない方や目にしたことのない方も多いかもしれません。
実は、釜炒り茶は日本で生産されるお茶のわずか0.3%未満と希少なお茶なのです(令和元年度の生産量:全国茶生産団体連合会)。
見た目はこのとおり、中国の緑茶に近い形状。
それもそのはず。
緑茶の「釜炒り製法」は中国で生まれ、朝鮮半島を経て15世紀ごろ日本(九州地方)に伝わったと言われています。
それを現在まで綿々と受け継いでいるのが、今でも九州地方の一部に残る「釜炒り茶」です。
見た目は中国茶のように見えますが、日本で生産されているので「日本茶」のカテゴリーになります。
別名「釜炒り製玉緑茶(かまいりせいたまりょくちゃ)」。
茶葉の形が勾玉(まがたま)のようにクルンとしているからこのように呼ばれています。
蒸し製玉緑茶もありますがこちらは近代に生まれた製法で、形状は少し似ていますが、味や香りの特徴は違います。
ちなみに、中国の緑茶はもちろん韓国でも同じ釜炒り製法で緑茶が作られています(韓国では緑茶の生産量は少ないそうです)。
釜炒り茶はどんな味?
釜炒り茶は独特の軽く香ばしい「釜香(かまか・かまこう)」と呼ばれる香りが特徴です。
煎茶、玉露、抹茶などは、摘んだ生の葉をまず蒸して酸化発酵を止めた不発酵茶=緑茶です。蒸すという工程は日本茶特有のものです。
釜炒り茶も同じ緑茶ですが、摘んだ生の葉を、大きな中華鍋のような釜で炒ることで酸化発酵を止めます。
そこが大きな違いです。
炒る工程により香ばしい香りの「釜香」が生まれるのです。
釜炒り茶の産地で有名なのは、佐賀県の嬉野と宮崎県の五ヶ瀬や高千穂です。
釜炒り茶も煎茶などと同様、お値段もピンキリです。
100g500円程度のものから、100g2,000円を超えるものまであります。
私もこれまで様々な釜炒り茶を飲んできましたが、釜炒り茶は急須でいれると釜香がふわっと漂い、その香りに癒されます。
低価格のものはすっきりとした味で少し苦渋味もあり、口の中がさっぱりするので食事中や食後にもいいなぁという印象です。
高価格のものは、釜香のすっきりとした中に、うま味や甘味をしっかり感じ、苦渋味はあまりありません。すっきりなのにコクがある、不思議と飲み飽きない味です。
フルーツ大福に合うのはどんな味の釜炒り茶?
では、フルーツ大福に合うのは、すっきりタイプのやや渋い釜炒り茶?うま味のある釜炒り茶?どちらでしょうか。
実は、これまでフルーツとお茶を一緒にいただく際に気になっていたのが「フルーツの酸味」と「お茶の渋味」。
この2つ、あまり相性が良くないようで、酸味が渋味を助長し、後味がさらに渋くなってしまうのです。
フルーツ大福も餡子がうまく味をまとめてくれているのですが、それでも少し酸味があるものは渋味の少ないまろやかな釜炒り茶がぴったりです。
お店によっては生クリームなど乳製品が使われることのあるフルーツ大福。クリーム入りなどであまり酸味が目立たないものなら、どちらのタイプの釜炒り茶でも合います。
釜炒り茶は酸化発酵はしていないのですが、香ばしい香りと紅茶に似たさわやかな後味で、フルーツ大福の甘味の残る口の中をリフレッシュしてくれます(そしてフルーツ大福が何個も食べられる♪)。
釜炒り茶のいれ方
では簡単に、釜炒り茶のいれ方をご紹介します。
手順は煎茶とほぼ同じですが、釜香を引き出すため少し高めの温度で淹れるのが一般的です。
茶葉のパッケージに書いてあることもありますので、そちらも参考にしてみてください。
【釜炒り茶3人分の分量(めやす)】
茶葉の量:約6g(ティースプーン3杯)
お湯の量:約200ml
お湯の温度:80~90度
待つ時間: 30秒
【釜炒り茶のいれ方】
1.お湯を煎茶茶碗にいれて少し冷ます(同時に計量も兼ねています)
2.急須に茶葉を入れ、1のお湯を入れてから30秒待ち、お茶碗に注ぐ
ここでワンポイントアドバイス。
お茶碗に注ぐ際は、1→2→3、3→2→1とお茶碗3つに少しずついれて、量と濃さを均一にしましょう(これを「回し注ぎ」と言います)。
また、最後の一滴まで注ぎきることで、急須に余分なお湯が残らないため、二煎目以降もおいしく淹れられます。
二煎目からは温度を上げてさっと淹れてください。
日本茶のレッスンでもよくお伝えするのですが、量や温度はあくまで目安ですので、淹れ方をいろいろ変えて、自分好みの味を見つけるのも楽しいですよ。
例えば、100g1500円以上の高価な釜炒り茶の場合は、80度程度で1分ほど待つ時間を長めにとると、よりうま味や甘味のあるお茶に。このランクの釜炒り茶は、高い温度ならすっきりと、少し低めだとコクのある味の2通りの楽しみ方ができるので、その日の気分で淹れ方を変えたりもできます。
さらに、宮崎県高千穂の釜炒り茶を扱う谷岩茶舗さんによると「水出し茶にしてもおいしい」とのこと。私も試してみましたが水出しでもしっかり釜香が感じられました。
水出しの場合は、1ℓ当たりお茶の葉の量は20g前後がめやすです。水出し茶専用ボトルなども便利です。
夜、茶葉とお水を入れたボトルを冷蔵庫に入れると、朝には水出し茶が完成。
(水出し茶について詳しくは後日記事にする予定です)
釜炒り茶はどこで買えるの?
釜炒り茶は希少なため、百貨店の九州物産展(佐賀県・宮崎県など)で少し見かけることはありますが、産地以外ではあまり店頭では見かけません。
ネットで「釜炒り茶」と検索すると、オンラインショップのサイトが出てきますので、その中から選ぶのが良いと思います。数本なら送料が安いお店もありとても便利なので、私もネットで購入しています。
いちご大福はそろそろシーズンが終わりますが、これから夏に向けてフルーツ大福のおいしい季節になります。
ぜひ、釜炒り茶と合わせてみてくださいね。