元世界Sウェルター級王者が語る「女性ボクサー、クラレッサ・シールズがスターになるために必要なこと」
クラレッサ・シールズ(アメリカ) 22歳
WBC、IBF女子スーパーミドル級王者
2012年のロンドン、2016年のリオデジャネイロ五輪のミドル級金メダリスト。アマで77勝1敗と圧倒的な戦績を残すと、2020年の東京五輪で五輪3連覇を目指すのではなく、プロ入りの道を選択した。プロでも僅か14ヶ月で5戦5勝(2KO)の戦績を残し、WBC、IBF女子スーパーミドル級王座を統一。1月12日に行われた元王者トリ・ネルソン(アメリカ)戦でも大差の判定勝ちで両タイトルの防衛を果たした。プレミアケーブル局Showtimeのサポートを受け、アメリカ女子ボクシング界の期待を一身に背負う。
ラウル・マルケス(アメリカ) 46歳
1967年に5歳でメキシコからアメリカに移住し、1992年のバルセロナ五輪に出場。プロ転向後も元IBF世界Sウェルター級王者となり、エル・ディアマンテ(ダイアモンド)の愛称で親しまれた。プロでの通算成績は41勝(29KO)1敗1分1無効試合。現在はShowtimeのボクシング中継で解説者を務める。
鍵は強豪相手に勝ち続けること
ーーシールズの現状をどう見ますか?
RM : 初めてShowtimeで中継されたジルビア・スサバドス(ハンガリー)戦と比べて、シールズは確実に成長しています。デトロイトでのスサバドス戦では、地元の大声援の前だったためか、大振りが目立ち、不必要なパンチをもらったり、まだアマチュア選手のような印象を受けました。Showtimeでのデヴューとあって、緊張もあったのでしょう。
ーー最新のネルソン戦を見て、その試合よりは大きく向上していると感じますか?
RM : 実際には前の試合(昨年8月のニッキ・サドラー(ドイツ)戦)から良くなっていて、より落ち着いたボクシングを展開していました。そしてネルソン戦でフルラウンド戦ったことは、彼女にとって良い薬だったと思います。キャリア初期にこうした経験を積めるのは素晴らしいことです。
ーー具体的に良くなったと感じた部分は?
RM : よりプロらしく戦っていた印象です。攻守両面で焦りはなく、ジャブを重視していました。スピードを武器に、スキルを駆使して相手のパンチをかわし、ロープ際でうまくカウンターをとっていました。
ーーストップできなかったのは相手を褒めるべきでしょうか?
RM : 多くのパンチを受けてもひるまなかったネルソンを讃えなければいけません。特に彼女は41歳であることを考えれば、その頑張りは見事でした。そして、そんな相手と10ラウンドを戦い、集中力を保ち、試合を支配できたことで、クラレッサはさらに良いボクサーになるでしょう。
ーースーパーミドル級はシールズにとって適正ウェイトでしょうか?
RM : 彼女にとってのベストウェイトではないかもしれません。ミドル級に下げることで、パワーを生かせるようになるでしょう。ただ、スピード、スキルには文句はないし、ネルソン戦でも良いボクシングを展開していたと思います。彼女がKOを望んでいたのは明白で、それを手にできなかったのを残念に感じている。そういった経験からも、また多くを学べるに違いありません。
ーー女子ボクサーがアメリカでスターになるには簡単ではないですが、シールズがビッグネームになるには今後に何をすべきでしょうか?
RM : 勝ち続けることです。幸いにも強敵は存在するのだから、まずは彼女たちを相手に支配的な形で勝ち続けること。同時にいろいろな場所で人々の前に立って、話し、名前、顔を売ること。全国区のスターになるのは容易ではないが、クラレッサはそれが不可能ではないユニークな素材ではあると思います。
ーーUFCのロンダ・ラウジーのように、女子ボクシング界にはスターが必要です。シールズはそれになれる可能性があると思いますか?
RM : 彼女は本物ですよ。普段はとても謙虚だし、私も高く評価しています。私が解説を務めるShowtimeが試合を中継しているから言うわけではなく、彼女はすでに“女子ボクシング界の顔”だと言って良い。喋りも得意なので、セルフ・プロモートできるのも大きいですね。周囲の人間も、何を言うべきかを上手く指導しているように思います。
ーー今後、どこまでいけるかに注目ですね。
RM : フロイド・メイウェザー(アメリカ)、カネロ・アルバレス(メキシコ)のようなスーパースターになれるかと言ったら、それは難しいと言うしかありません。メインストリームでの知名度を手にできるかは微妙でしょう。ただ、ボクシング界におけるスターになることは十分に可能。そのためには良い形で勝ち続け、アメリカ以外の場所でも戦い、自分の魅力をアピールしていくことです。
スポーツナビ・コラム