北欧ノルウェー、まだまだ平等じゃない 女性は今何にモヤモヤしているのか
少し前の話になるが、3月8日は「国際女性デー」だった。男女平等の国として有名な北欧ノルウェーでは、この日は祭りのように盛り上がる。
開催前から、参加者は自分たちの思いを込めた言葉をプラカードに書いて準備している。当日は、壇上で女性たちがスピーチをし、みんなで行進する。
ノルウェーで「女性の日」の行進が今でも行われているのは、現地の人々がまだまだ不満を感じているからだ。
いつか、本当に誰もが平等だと感じることができる日常が訪れたら、このような行進は大きな注目を集めることがない。
参加者が減ることなく、増えているという事実は、不満を抱えた人が多くいる社会を意味する。
首都での参加者は昨年の2倍
NTB通信社とオスロ警察によると、首都での昨年の参加者は7700人、今年は予想していた1万人を大きく上回り、1万4千人。全国各地の80か所で行進は行われた。
ノルウェー統計局SSBの発表によると、
- 2017年の女性の収入平均は36万9600ノルウェークローネに対し、男性は53万3900ノルウェークローネと、その差は大きい(20~66歳のフルタイム・パートタイムを含む)
- フルタイムで働く男性(15~74歳)は85.4%、女性は63.1%(2018年)
- 公的機関(2017)で働く男性は29.9%に対し、女性は70.1%
- 2017年における20~66歳のうち、リーダー職に就いている男性は64.1%、女性は35.9%
- 女性の「市長」は28.3%、「自治体(地方)議員」は39%
- 育児休暇を取る男性(2017)は69.8%と、前年度に比べて0.1%上昇
常に議論される、社会の不平等
ノルウェーに引っ越して、オスロ大学でメディア学を学んでいた際、教材として新聞記事を読むことも多かった。
その時に驚いたのが、「ジェンダー平等」という意味の「Likestilling」(リーケスティーリング)という文字が、連日、なにかしらニュース用語となっていたことだ。
これは、「男性」と「女性」だけではなく、子どもや多様性のある性、移民など、すべての人間における平等を意味する。
新聞社でも、何ページもの特集を組んで、企業や家庭での女性の現状や課題を取り上げる。日常的に、不平等を認識・議論する風潮が、とても強い国だと思った。
女性の日が近づく直前、たまたま3人の高校生平和大使(女子高生)が、オスロ市長(女性)と面会する場を取材していた。
日本からわざわざやってきた若者を市長は喜んで歓迎し、「女性の日がもうすぐね、日本ではどのようなことをするの?」という話題で盛り上がる。
批判や不満だけではなく、「おめでとう!」の言葉と笑顔で溢れる日
「女性の日」は、その年の社会の課題が議論される日であると同時に、女性に元気のエネルギーを与える日でもある。
行進を取材する直前、地元のカフェに行くと、知り合いの店員さんたちが、「あさき、おめでとう!」と、声をかけてきた。
この日は、女性たちの誕生日のように、「おめでとう!」(Gratulerer!グラットュレーレル)という言葉が、街の通りやSNSで溢れるのだ。
今年、ノルウェーの女性たちが声にした、「おかしいよね」
今年の女性の日では、学校で、女子生徒たちが性的な言葉を日常的に投げつけられていることが大きく問題視された。
「#MeTooは、学校には届かなかった」という、女子生徒が現地新聞アフテンポステンに寄稿した記事は大きな話題を呼ぶ。
ほかに、ノルウェー政府による「健康な双子の片方を中絶する権利」の規制、軍隊でのセクハラ問題も注目を集めた。
「今、女性たちが胸に秘めている課題は何か?」を認識して、心の内に溜めていたものを発散する日。来年はどのようなモヤモヤの膿が出てくるのだろうか。
Photo&Text: Asaki Abumi