【日本側報道を否定】韓国がいまサッカー日韓戦をやらない6つの理由
日本メディアの報道から一時話題となった「6月の国際Aマッチデー(15日、20日)で日韓戦開催説」。去る3月の国際Aマッチデーでも日本にとって韓国は対戦候補のひとつで「鋭利なライバル関係は対戦のメリットのひとつ」とされた。
しかし、13日の韓国側の報道により、この線は消えたようだ。大韓サッカー協会側は「ちょっとした会話が大きく報じられた」とコメント。6月は双方が国内での2連戦の準備を進めており、この点とも一致しない。
そもそも韓国にとって今の時期の日本戦は「まったくといっていいほどメリットがない」。“韓日戦”がかなり有用な興行カードである一方、今は協会の問題や、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)における敗退もあり、国内の雰囲気がよくないのだ。
①もともと日本戦は最大の「興行カード」 いい時期にやりたい
元来、韓国にとっての日本戦ははっきり言って「めちゃくちゃ有用な興行カード」。かつては「ブラジル戦より盛り上がる」と言われた時代もあった。
だからこそいい時期に開催したいと考えるもの。言い換えるなら悪い時期の対戦は避けようとするものでもある。
現に2000年と2003年には短期間にホームアンドアウェー形式で開催される「日韓定期戦」が行われた。当時、これらの交渉の際には韓国側が「ソウルで試合をやるタイミング」にこだわったこともあったとされる。興行的により収益を得たいという考えもあったからだ。
2013年の東アジアカップ(現E-1選手権)開催時にはチョン・モンギュ大韓サッカー協会会長が記者をソウル郊外の代表チームトレーニングセンターに呼び、ブリーフィング形式で「韓日定期戦の復活」を宣言する一幕もあった。
仮に定期戦の復活なら「かなり先にスケジュールを決められる」メリットもあるが、逆に先に決めすぎる点で双方が苦い経験をしたことも。
2016年12月、さいたまシティカップとして浦和レッズとFCソウルの対戦が決まった。ところが、その後に行われたアジア・チャンピオンズリーグの1次リーグ抽選会で両チームが同組に居合わせることになったのだ…
翌2017年2月に行われた駒場での対戦時、筆者は当時のソウルの監督と面識があったのだが、このときばかりは監督はこちらと目も合わせず、選手のミックスゾーン対応もなしでそそくさと帰国便に乗り込んだのだった。徹底していた。
②2021年3月の敗戦時の反応が酷かった
2018年に始まったUEFAネーションズリーグの影響により、UEFA加盟国との親善試合セッティングが難しい昨今。
新たな傾向として「対戦相手に困って日本と対戦」というニーズは生じうる。日本にとっての韓国も同じことだ。
2020年以降は新型コロナのパンデミックの事情も重なったこともあり、2021年3月25日の横浜での日韓戦は驚きとともに開催が決まった。
そして、この試合は韓国にとって思わぬ「災難」となった。0―3と大敗を喫したため、試合後に猛批判が国内で起きたのだ。
「ただ日本のためだけに行われた試合」
結果的にパウロ・ベント前監督の任期4年間のうち、風当たりが一番厳しい時期となった。
敗戦に対し、大韓サッカー協会チョン会長が謝罪する事態に。さらにはこの日の韓国代表ユニフォームに日本国旗が、韓国国旗を並べてプリントしてあった点まで叩かれる始末だった。
③クリンスマン監督をそこにさらせない
ワールドカップ(W杯)カタール大会後に就任したユルゲン・クリンスマン監督はここまで2試合を終えたばかり。国内の監督で代表監督たりうる人材が少ないなか、ゼロベースから探してようやく見つけ出したドイツ人指揮官だった。現時点で日本戦のプレッシャーにさらすメリットはないように見える。
④大韓協会の雰囲気が最悪
今、大韓協会を取り巻く雰囲気ははっきり言って「最悪」だ。3月28日にカタールW杯ベスト16、10回連続W杯本大会出場、大韓サッカー協会創立90周年を記念して「過去の八百長事件などの関与者の恩赦」を発表した。この案は猛批判を浴びた末に撤回されたが、その後副会長クラスの相次ぐ辞任など不穏な雰囲気がくすぶっている。
大韓協会側は「ベスト16をもっと祝いたい」という念押しの考えを持っていたようだが……これが完全に裏目に出ている状態だ。
⑤WBCの結果で「日本戦」に敏感
先に行われたWBCの結果は韓国社会全体にとっても衝撃だった。優勝した日本にコールド負け寸前の4―13の大敗。しかも、速球や打者の体格に圧倒的な差を感じる「パワー野球」のお株を奪われての敗戦だった。
野球に関しては韓国社会では一般的に「日本が一枚上手」と認める雰囲気があるものの、サッカーは別。
しかしここでも……ここ3年のあらゆる日本戦(フル代表から年代別代表、大学選抜を含めた対戦)の結果が6戦全敗、トータルスコアはなんと「0―18」なのだ。
韓国全体で「スポーツで日本に差をつけられる」という危機感のあるなか、この時期の対戦はちょっと避けたいと考えるものだろう。なにせ日韓戦となるとコアなサッカーファン以外の関心が集まるのだ。
⑥ほとんどの国はAマッチデーに「日本・韓国」の双方を訪れる
今回の日本発の「日韓戦開催説」を否定する韓国側の報道のなかで「中央日報」は根拠をこう伝えた。
「大韓サッカー協会は、Aマッチのスケジューリングに関して日本と緊密な協力関係を維持している。通常、Aマッチ期間中には2試合を行い、日本と共同で航空料金を負担するなどの方法で2チームを一緒に招待することが一般的。1チームは韓国で、もう1チームは日本で先にAマッチを行い、その後相手チームと交互に1回の試合を行う方式だ」
「韓国と日本に時差がなく、移動距離が短いため、可能なスケジュールだ」
確かにこの3月のコロンビア・ウルグアイのようにクロスして対戦するパターンが主流。コロナのパンデミックの時期こそこの「法則」が少々崩れたが、2022年6月にはブラジル・パラグアイがこのパターンで東アジアを訪れている。
W杯本大会が近づくと、日本や韓国と同グループとなった世界の国々が「仮想東アジア」として双方と対戦する場合はこれが例外となる。
その時期までは各国に「東アジアツアー」を組んでいくほうが双方の利益と一致するか。
(了)